
植物を用いた染色、草木染め。天然の植物そのものを煮出した液を染料とするため、発色が複雑で奥行きを感じられ、また繊維に色素を定着させるために用いるミョウバン、鉄などの媒染剤の種類によって異なる色に染め上がる面白さもあります。
そんな草木染めは、意外と身近な植物でも楽しむことが出来ます。 野山を手入れする際に伐採や除草などの対象となる植物の中にも、草木染めに活用できるものが多いので、いくつかご紹介します。
➀パイオニア植物~アカメガシワ~
荒地やオープンスペースなどにいち早く芽生え生長する植物を「パイオニア植物」といい、アカメガシワはその代表格です。公園などでも芽生えが数多くみられ、しかも、少し放っておくとあっという間に大きな木になってしまいます。植栽地や通路際などを適切に管理するには、このようなパイオニア植物をこまめに切る必要があるため、草木染めにも利用しやすいものです。

植込みの中に育つパイオニア植物(アカメガシワ)
②外来種~セイタカアワダチソウ他~
セイタカアワダチソウは、明治中期に北米から観賞用として持ち込まれて定着したとされる外来種です。外来種は、その土地で長い時間をかけ育まれてきた生態系のバランスを崩してしまうことがあります。天敵がいないことなどから外来種が急激に増えると、競合する在来種の生育を損なうなどの影響を与えてしまうため、このような外来種のみを取り除く選択的除草が必要となる場合があります。
セイタカアワダチソウのほか、ヒメジョオン、ハルジオン、ハルシャギクなど多くの外来種で草木染めが出来ます。草木染めの発色にも、種子繁殖を防ぐ植生管理の上でも、開花・結実前に刈るのがよいようです。

左からアカメガシワ鉄・銅媒染、セイタカアワダチソウミョウバン媒染
③落ち葉~桜類~
赤く色づいた桜の落ち葉を拾い集めて、草木染に利用することができます。カエデ類など紅葉が美しい葉はほかにもありますが茶系に染まることが多いようです。赤みの色を染めるには、桜の葉に椿の灰を媒染に用いることで、紅葉らしい赤茶色から桜らしいピンク色まで染められます。
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桜の紅葉染め(いずれも椿の灰媒染)

草木染めに使える桜の落ち葉
野山の手入れにおいて伐採・除草する植物は、排除すべき悪者と思ってしまいがちですが、草木染めに利用することで、有用植物としての一面を体感し、植物や自然を多様な側面からとらえるきっかけにもなりそうです。アカメガシワは薬用植物で樹皮から繊維も取れます。セイタカアワダチソウも原産地の風土・文化の中では薬用植物や蜜源植物として人々に利用されてきた歴史があり、特にアラバマやケンタッキーでは州花としても親しまれています。
緑花文化士:福留晴子
(2025年1月掲載)

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