ミソハギ ~盆の花~
立秋(八月七日ころ)を過ぎて、野山に目立つ花が少なくなった頃、貯水池の土手に群れ咲いている紅紫色の花に、目を奪われたことがありました。図鑑で調べてみると、ミソハギであることが分かりました。
ミソハギはミソハギ科の宿根草で、湿り気の多い原野や水辺に生え、高さ1メートルにもなり、紅紫色の花が葉の脇に密集して穂状につきます。
みそ萩や水につければ風の吹く(小林一茶)
千屈菜(みそはぎ)の供へてありぬ一束ね(小岩浩子)
歳時記によると、ミソハギは初秋の季語で千屈菜、鼠尾花の漢字が当てられています。別名として、聖霊花、水掛草、溝萩などが挙げられています。日本語源大辞典(小学館)では、禊萩の漢字が当てられ、ミソギ(祓)に用いるハギの意、溝萩は誤用とされています。別の書物には、千屈菜はミソハギの漢名、鼠尾花は長い花穂を鼠の尻尾に見立てたことから来たと書かれています。
これらのことから、掲句は盆の花(盆花)としてミソハギを詠ったものであることが分かると思います。水掛草という別名は、この花に水を含ませ、精霊(聖霊)棚に水をかける風習があったことから来ています。つまり、お盆に帰ってくる祖霊を清めるという意味があったのです。
盆花は、その頃山野に咲いている花を仏壇やお墓に供えるためのもので、代表的なものにミソハギ、オミナエシ、キキョウ、ハスなどが挙げられます。地域によってさまざまで、他にオトコエシ、ヒヨドリバナ、タケニグサ、シキミなどがあるようです。
皆さんの地域では、どんな花が用いられているのでしょうか?
緑花文化士 三輪礼二郎
(2024年8月更新)
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