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どこもかしこも野生生物「ロードキル編」

横断歩道を横断中にもかかわらず、車両にひかれ命を落とす交通事故が後を絶ちません。

2023年6月にも小学1年生が交通ルールを守り、横断歩道を横断中にもかかわらず、乗用車にはねられ死亡するという痛ましい事故が発生してしまいました。

人間と野生動物が衝突する交通事故も増加しており、埼玉県内の国道で深夜、大学生の運転するオートバイが道路を横断中のシカと衝突したとみられる交通事故が発生しました。

警察によると、現場は片側一車線で街灯がなく、見通しが悪い直線道路で、友人3人で3台のオートバイで走行中、転倒に気づいた友人が、倒れている大学生とシカ一頭を見つけ、衝突した大学生はその後病院で死亡が確認されたという痛ましい事故でした(2023年6月)。

 

今回は、車を運転中に野生動物と衝突してしまう「ロードキル」について雑感をまとめてみます。

私が初めて「ロードキル」という言葉を耳にしたのは、2000年6月に沖縄県の西表島にある西表野生生物保護センターでした。

ご存知の通り、世界でこの島だけに生息している国の特別天然記念物イリオモテヤマネコの交通事故問題を見聞した時でした。もともと生息数が少ないイリオモテヤマネコの交通事故死はとてもショックを受けたことを思い出します。

 

さて、日本道路公団の調査によると、全国の高速道路で発生する野生動物との衝突事故件数は、なんと! 年間5万件近い事例が報告されているそうです。

種類で見ると、タヌキが圧倒的に多いそうで、トビやカラスなどの鳥類も多く報告されているそうです。これは、死亡した動物を食べに来て事故に遭う「二次的ロードキル」と呼ばれています。カラスは死肉を食べる習性がある“掃除屋”で知られる鳥類、生ゴミに集まるのもこの習性からです。

 

道路横断を諦め道路脇に戻ったノウサギ

道路横断を諦め道路脇に戻ったノウサギ

道路上で寝てしまったタヌキ<br/>まさか! タヌキ寝入りか!

道路上で寝てしまったタヌキ
まさか! タヌキ寝入りか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロードキルはそのほとんどが、道路横断中に発生するようです。

まさに“命がけの道路横断”です。命がけの道路横断と言えば、その昔、1980年代「カルガモ親子の引っ越し」ニュースを思い出します。小さな池から、子育てに充分な池に引っ越しする際、車が行き交う大通りを10羽程のヨチヨチ歩きのヒナを連れてお母さんカモは歩いて引っ越さなければならず、命を賭しての大横断です!

この一大事をメディアが取り上げ、警察官が交通整理にあたるなど“手厚い引っ越し”のシーンは有名になりました。今もなお、ニュースとして取り上げられます。

 

ところで、野生動物というと、シカやイノシシ、クマなどの大型動物、サルやキツネ、タヌキなどの中型動物などを思い浮かべることでしょう。

これより小さなリスやネズミ、ヘビ、さらに小さな野生生物も道路を横断しています。

むしろ、小さな野生生物の道路横断の方が、圧倒的に多いことでしょう。

 

横断しようか?悩んでいる?ニホンカモシカ 

横断しようか?悩んでいる?ニホンカモシカ

横断途中で日向ぼっこのアオダイショウ

横断途中で日向ぼっこのアオダイショウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は群馬県高崎市、榛名山の南麓に住んでいます。市街地と中山間地域の間にあって林道や農道が多く、たくさんの人々が通勤通学コースとして利用しています。

毎年、ゴールデンウィーク頃になると、道路を必死で横断する“クマケムシ”に遭遇します。体長3㎝程のロン毛の毛虫(ヒトリガの仲間)です。一生懸命道路を横断する姿は、つい応援したくなる程です(時に車を停車して応援しています!!)。中には車にひかれてしまう個体もあります・・・・。

この他にも小さな体の野生生物が、人知れず「決死の道路横断」をしています。

地域性、季節、時間帯、その時の天候条件などで出現する野生生物種の違いもあります。

 

必死に横断中のクマケムシ<br/>センターラインだけでも広く見えます

必死に横断中のクマケムシ
センターラインだけでも広く見えます

カブトムシ 早朝の横断か?<br/>頭上にはコナラの木がありました

カブトムシ 早朝の横断か?
頭上にはコナラの木がありました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の日に多いサワガニ 

雨の日に多いサワガニ

雨上がりのカタツムリ

雨上がりのカタツムリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は、私自身も道路横断中のサルを轢いてしまった経験があります。ある日の早朝に畑から20頭ほどのサルの群れが小走りで道路に出てきてしまい、とっさに速度20キロ程まで減速しましたが群れのうちの1頭を避けきれずに車体の下に巻き込むように抜けました。2、3度車体下からゴロゴロと音がし、バックミラーを見ると頭をなでる仕草のサルが見えました。すると群れの仲間のサルが駆け寄って一緒に反対側の荒地に姿を消して行きました。体そのものに車体が乗らず不幸中の幸いか、群れは遠ざかったようでした。その後当事者のサルはどうなったのかわかりませんが、大事に至っていないこと願うばかりです。この体験がいまでも脳裏にあります。掲載した道路横断中の野生生物の写真は全て私自身が車を運転中に確認して撮影した野生生物です。

いつでも野生生物の存在を忘れずに、安全運転を心がけ走行しています。

 

このツバメの絵が描かれた道路標識は、赤城山山麓の集落内に設置されているものです。標識の反対側には民家があり、ツバメが子育てする軒下があります。

道路を横切るツバメを見守るための道路標識なのです。

ロードキルの思いをかたちにした一例ですね。

 

2023年は平年以上に、全国規模でクマやイノシシ、シカなどの野生生物とのトラブルが幾度となくニュースとして報道されていました。

ロードキルもこれに比例して今まで以上に多発することが予見されます。

いつまでも野生生物と共生出来る社会であってほしいと切に願います。

 

(2024年3月掲載)

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。 https://www.projectwild.jp/

キーワード: ロードキル、野生生物、道路標識、野生生物との共生
剱持雅信(ケンモチ マサノブ)
剱持雅信(ケンモチ マサノブ)
非営利団体ぐんま山森自然楽校 代表
群馬県自然保護指導員兼県内希少野生動植物種保護監視員
尾瀬ガイド協会認定 尾瀬自然ガイド
プロジェクトWILDシニアファシリテーター
プロジェクトWILD鳥編、GUWファシリテーター
令和元年度群馬県環境賞環境功績賞 受賞

1963年群馬県生まれの群馬育ち
物心ついた時から野山で遊んでいた自称野生児。
現在は、自然楽校の運営や尾瀬のガイド、県内の小中学校での自然体験や森林教育に携わっています。直接体験をモットーに、群馬型の体験プログラムを考える毎日です。
共感出来る仲間とプロジェクトWILDも楽しんでいますが、子どもたちの中から後継者が出て来てくれることを切に願っています。
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