
みなさんは野生のニホンザルを見たことがありますか?
私が勤務していた長野県安曇野市にある公園では、毎日のようにサルの群れと出会いました。時期によっては、来園者よりサルの数が多いこともよくありました。
また、私が安曇野市に住んでいた時に、最も撮影した生き物は間違いなくニホンザルだと思います。
今回は私が安曇野市の公園で見てきたサルたちの1年間の暮らしぶりと、ちょっと面白かった出来事をご紹介します。
まず、サルたちの食べ物についてですが、草食性が強い雑食です。主にどんぐりやクルミなどの木の実や葉っぱなどを食べますが、時期によっては小動物も捕食します。

顔中花粉まみれになりながらネコヤナギの新芽を食べる若いサル
春は植物の新芽が一斉に芽吹く時期です。
花芽や柔らかい新芽は、厳しい冬を乗り越えたサルたちにとってご馳走です。
園内のあちこちで木に登り、食事をしているサルたちを良く目にします。
夏になると植物の葉は固くなり、果実なども少なくなるため、食べられる植物性の餌がかなり減ってしまいます。
この時期のサルたちは、落ち葉をかき分けながら去年の木の実の残りを探しつつ、アリやトンボなどの昆虫をはじめとした小動物も捕食します。

トカゲを捕まえて食べるサル
秋になると、どんぐりをはじめとした木の実が豊富に実ります。
サルたちにとって1年で最も餌が豊富な時期であり、これから訪れる厳しい冬を乗り切るための大切な”食い溜め”の時期でもあります。
森のあちこちでサルが落ち葉をかき分ける音や、強靭な顎でどんぐりやクルミの殻を割る音が聞こえます。

オニグルミの果実を齧るサル
そして冬。
みなさんもご存知かと思いますが、長野県の冬は非常に厳しいです。
気温は日中でも氷点下となる日が続き、一度雪が積もると春まで溶けないこともしばしばあります。
こうなってしまうと落ち葉の下にある木の実を食べることは出来ないため、木の皮を齧ったり、笹の葉を食べて飢えを凌ぎます。
(園内ではアブラチャンの樹皮を好んで齧っていました)

笹の葉を食べるサル
吹雪いている日は無駄な体力を使わないよう、木の上でじっとしている姿も目にします。

寒さを凌ぐため、仲間同士身を寄せ合いサル団子を形成
いかがでしたか?厳しさもあり、山の恵みも豊富にある安曇野市では、このようにして1年を過ごしています。
さて、前半はサルたちの1年間の暮らしぶりをご紹介しました。後半は私がサルたちを見てきた中で、ちょっと面白かった出来事をご紹介します。
この画像!サルが何をしているか分かりますか?

壁に口をつけて何かをしているサル
正解は、ガラス越しに展示してあるオニグルミの標本を食べようとしている様子です。

様々な形のオニグルミの核を集めた標本展示
少し話は逸れますが、オニグルミは木によって核の形に違いが見られます。
この公園は渓流沿いに位置しており、園内に多くのオニグルミが自生しています。そのため様々な形の核を見ることができます。
オニグルミはサルたちの大好物であるため、餌の少ない時期はこのように、なんとしてでも手に入れようとする様子を見ることができます。
また、スタッフが常駐している事務所の中に侵入して、展示しているどんぐりの標本を盗んでいくサルもいます。
一度でも窃盗を成功させてしまうと、その後1週間くらいは毎日のように狙ってくるので戸締りをしっかりしないといけません。
このように、サルは自分の”餌”をしっかり覚えていて、それがどのような状態にあっても餌と認識して食べようとするのです。
最後に私が最も衝撃を受けた出来事をご紹介させていただきます。
雨の日に、いつものように群れで食事をしているサルたちを見かけました。どうやらこの日はキクイモを掘り起こして食べているようです。
しばらく観察していると、1頭だけなにやら様子がおかしいサルを見つけました。

(遠くから無理矢理ズームしているため、画像が荒くてすいません・・・)
掘り起こしたキクイモをその場で食べずにどこかへ運んでいきます。

水たまりで!キクイモをゴシゴシ

綺麗にしてから実食
なんと、掘り起こして泥まみれのキクイモを水たまりで綺麗に洗ってから食べていました。
持っているキクイモを食べ終わったら、また掘りに行って水たまりで洗ってから食べる。
この行動を繰り返していました。
(さらに洗ったキクイモを食べる時、先端の部分は齧って捨て、真ん中の美味しいところだけ食べていました…グルメです)
宮崎県の幸島に生息するサルがサツマイモを洗って食べるというのは有名な話ですが、まさか安曇野でも見る事ができるとは・・・
この一連の様子を動画に収めましたので、是非ご覧ください。

何を食べてる?ニホンザル(YouTubeリンク)
しかしながら、この行動は写真のサルだけが行っており、群れ全体に文化として根付いている様子はありませんでした。
このサルは一体どこでこの知識を得たのでしょうか?非常に興味深い出来事でした。
このように、5年間ほぼ毎日サルたちを観察していると、様々な面白い出来事や、野生でたくましく生きる様子を見ることができました。
普段からよく見ている身近な生き物も、じっくり観察してみると新たな発見があるかもしれませんね。
(2025年5月掲載)
Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています:https://www.projectwild.jp/


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