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生きもの小話
今、青い海の中で・・・。

日が傾き始めるころ、ほぼ無風の穏やかな海にサップを繰り出し、オールで波をかくとボードは滑るように走り出します。サップ初心者の私の腕ではせいぜいあの小さな岩場までかな。その一点を目指し、波を掻く音しかしない海を走っていると、ほんの一時間前までいた陸上での日常が嘘のようで、世界に私と海しかないような不思議な感覚に満たされます。夢中で海を、走る、走る!

 

岩場までもう少し、眩しい光の散乱に一瞬平衡感覚が狂って、ぐらっと揺れるボードに思わず膝をついたら、透き通る水面下にも光が差してキラッと魚の影が見えたような?

 

ボードに腹ばいになり、頭を水の中に突っ込むと、いました!

 

コバルトブルーのかわいらしいルリスズメダイや名前も知らない様々な熱帯魚たち。それから、今まで見たこともない紫色や黄色の美しいサンゴも。

 

さんご礁は「海のオアシス」と言われるけれど、なるほど納得。小さなサンゴの周りにもたくさんの生き物がいて、色とりどりに美しく、かわいらしく、なんて目の保養なんでしょう。いろんな課題はあるけれど沖縄の海はやっぱり世界一!と勝手に世界ランキング一位を認定し、その夜は幸せな気分で波に揺られる夢を見続けたのでありました。

 

 

 

 今年の8月はとにかく暑かった。例年ならば、チリチリと刺すような紫外線も熱も、木陰に入れば海からの風に吹き払われて涼を感じることができたのに。なんでも8月の平均気温30.2度は、観測史上第2位なのだそう。おまけに例年8月までに3~4回は訪れる台風も今年は皆無。沖縄の海をかき回し、水温を下げてくれる恵みの台風が来ないので、ダイビングが趣味の娘の話では、サンゴの白化がみるみる進んでいるのだとか。あの美しいサンゴたちは大丈夫なのでしょうか。

 

ちょうどそんなことがとても気になっている時に、サンゴの保全活動(サンゴの健康診断、繁殖、海のお掃除、講演など)に取り組んでおられる佐藤佳代さんのお話を聞く機会がありました。毎年沖縄のいろんな地点の海に潜り、サンゴの状態を観察、記録してこられた佐藤さんのお話は海とサンゴとそこに棲む生き物たちへの愛に溢れていました。

 

地球の中の海の割合は70%、その海の中にサンゴが生息する場所はほんの0.2%、そこに海洋生物の四分の一が生息しているのだそうです。ということは、サンゴの減少は海の中の四分の一の命に係わる大問題? 9月になるまで台風が来なかった今年の沖縄では、サンゴの白化は恐ろしい勢いで進んでいるのだと動画や画像を見せてくださいました。9月2日の画像を見ると海上からも白化が確認できるほど。8月の初めに私が初めて見て美しいと思ったあの紫や黄色のサンゴも異常な色だというのです。でも、あの時はこんなに白くはなかった。なんてこった!

 

紫色や黄色も実は正常なサンゴの色ではない

紫色や黄色も実は正常なサンゴの色ではない

 

2024/9/2白化著しいさんご礁

2024/9/2白化著しいさんご礁

 

この褐色が本来の色! 白化前のサンゴ礁

この褐色が本来の色! 白化前のサンゴ礁

 

ウスエダミドリイシの産卵の様子も動画で見せていただきました。今年の産卵は6月30日の19時40分から約一時間。テーブルサンゴは午前0時頃からだったそうです。サンゴは、同じ種類だけが同じ時間に一斉に産卵するのだけれど、同じマンションの卵同士で受精することはなく、ご近所のマンションの仲間の卵と受精するのだそうです。だから、違う種類の卵がごっちゃになることはないし、同じ遺伝子同士がくっつくこともないんですね。なんて、不思議!

 

たくさんのことを教えていただいたのですが、私が一番面白いと思ったのは、サンゴを魚のいない水槽で育てると早死にしてしまうということでした。魚がいると、サンゴはついばまれたり、食べられたり、傷つけられたりすることもあるのだけれど、そんなストレスやリスクがあったとしても、何も刺激がないよりずっといいのだとか。

「人間もそうでしょう?」と佐藤さん。誰からも存在を認められず、関わりを持つこともなく、話しかけられもしなければ生きていけない。おっしゃる通りです。

 

まだまだ時間が足りない!

佐藤さんのお話はどうしてこんなに刺激的で面白いんでしょう?

それは、佐藤さんご自身が海に潜り、見て、触れて、感じて、考えてこられたこと、実感に裏打ちされた「本当」のことだけを話しておられるからなのだと思いました。

そして、愛。観察し続ける、学び続けるにはエネルギーが要ります。『聖書』によると、真に「知る」ということは「愛する」ということ。本当に「知った」なら、そこに向かって動き出すエネルギーが生まれてくるってことなのですね。

もう一つ。先に知ったからには次に継がなきゃいけない、という「使命感」のようなものも。全然押し付けがましくはなかったけれど、そのバトン私もつないでみたくなっちゃいました。さて、このバトンどうしましょう。

 

ところで、あまりの暑さに家出してしまった褐虫藻たちはいったいどこに行ってしまったのでしょう?

佐藤さんによると、現時点では誰にもわからないのだそう。

すぐ近くにある海、触れることのできるサンゴ、でもまだまだ謎だらけです。

 

写真(今回の写真はすべて佐藤さんからいただいたものです。)

 

 

◆Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。 https://www.projectwild.jp/

 

(2024年10月掲載)

 

キーワード: サンゴ、サンゴの白化、沖縄
増田 郁子(ますだ いくこ)
増田 郁子(ますだ いくこ)
学校法人三育学院 沖縄三育中学校 社会科教諭・女子寮寮監長・自然体験活動担当
沖縄三育小学校 主幹教諭
Growing Up WILD シニアファシリテーター
1962年沖縄県生まれ。
大学卒業後は、中学校→(子育て)→「こころの教室」相談員→中学校→塾→夜間中学校→専門学校→定時制・通信制高等学校→小学校→大学→中学校(ふりだしに戻る)、と様々な教育畑を転々とする中で、人の成長にはやっぱり自然の中で遊び、自然から学ぶ経験が不可欠なのだなぁ、と実感。
子どもが小さいころには教育現場を離れて子育てを楽しみ、たくさんの驚きと感動を共有し、味わうことができました。
現在は、沖縄県北部の小さな全寮制中学校で、自然豊かな環境を活かした教育活動を教職員みんなで実践。毎週土曜日の午後は、生徒たちと一緒に森や海、川などに出かけ、やんばるの自然を満喫しています。
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