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生きもの小話
真夏のシャワー…香り付き
Midsummer Shower with some Fragrance

高校の2年の夏!

硬式テニスに日々明け暮れていました。

真夏の近畿大会奈良県予選!

ベスト8に入れば奈良県代表として近畿大会に出場できる…あともう少しだった。

大事なポイントで動きが硬くなりダメだった。あんなに練習したのに…

先輩からは、「2年生でそこまで勝ち進んだのは凄いよ!ほんとによくやったよ!」と…

後輩たちからは、「先輩、また来年がありますから!」とたくさん声をかけてもらったのだけど、あまりにも悔しく、1人になりたくて…

テニスコートから少し離れた桜の木の下に座り込んで、悔し泣きをしていました。汗なのか涙なのか、もうわからなかった。

 

すると、頭の上にバシャ~っと水が降ってきたのです。ジャバジャバとけっこうな量でした。最初は何が起こったのかわからず、雨?夕立?…いやいや降ってない。では、なんだ?この水は?そして、なんか臭いが。すぐさま上を見上げると、カラスが私を見下していました。嬉しそうに、「かぁ~かぁ~」と、こちらを見ながら鳴きます。そのカラスの表情から

「あははははは、男が何を泣いてんだよ!かぁ~かぁ~♪」

と間違いなく言ってた。どう見ても顔が笑っている…鳥に表情があるのか?と言う人もいるだろうけど、絶対、小バカにして私のことを笑っているのが十二分に心に伝わってきました。

最高に落ち込んでいる俺の頭を狙ってオシッコを大量にかけやがって!このカラス野郎~。

怒っても逃げないんですね。逆に悠々とかまえて、こちらを見つめています。

あまりに頭にきたので、木に登ろうと足をかけたとたん、「かぁ~」と一声鳴いて、飛び去って行きました。

 

カラスって、本当に賢いですね。悪戯好きです。

当時は、カラスが悪戯をするほど知恵があるなんて知らなかったので、私の中に大きなインパクトを残してくれました。

夏の暑い日にカラスを見るたび、あのときのオシッコの香りと敗戦の悔しさが思い出されます。

 

輪廻転生!

ずいぶん前にテレビでタモリさんが言っておられました。

生まれ変わるほど、生きものは賢くなって、最終的に人間にたどり着くのだそうな…

そのセオリーを元に、小さな微生物から昆虫類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類へと。

もしかしたら、あのときの賢い(悪戯好き)カラスは、飛び級で、哺乳類の中でも一番知能の高いホモサピエンス(人間)に生まれ変わってたりして…笑

 

鳥の賢さは実感できます。このカラスもそうですが、我が家のインコたちもとても賢いです。確固たる意志と感情そして知恵を持っています。

長寿=賢さ

これも確かだと思います。カメをこよなく愛する仕事の相棒より、カメの賢さを実証できる興味深い話をたくさんいただいています。

熱帯魚だってそうです。我が家の小さな水槽でカージナルテトラを飼育しています。普通の配合飼料(フレーク)をあげるときは、水槽を2回、コンコンと叩きます。美味しいエサ(冷凍赤虫など)を上げるときは、水槽を必ず5回、コンコンコンコンコンと叩いてからエサをあげています。そうすると、水槽を2回叩くときより5回の方が、喜んでいるのがわかるんです。おそらく音の回数をちゃんと聞き分けているんだと思います。

昆虫はどうでしょう。

小学生の頃、クワガタが大好きで(今もそうですが…)、特にお気に入りはヒラタクワガタでした。平たい重戦車のような…恐竜に例えるとトリケラトプスのような重量感が最高です。オオクワガタやコクワガタなどDorcusチームは、上手に飼育すると3年以上、生きます。

あるヒラタクワガタのことを思い出します。

毎回、飼育ケースをコンコン叩いてから、バナナやリンゴをあげていました。すると、いつの頃からか、飼育ケースを叩くと、オガクズの下からもそもそと顔を出すようになったのです。

これ本当の話です。

そうです!私、水槽コンコンが好きなんです(笑)

小さな昆虫だって学習するんですね。

 

子どもの頃にリアルな生きものを飼育してほしいと思います。そこには、子どもたちにとって様々な気づきと学びが間違いなくあります。もし、お子様が何か飼育したい!と言ったら、お父様、お母様!生きものが苦手だったとしても、その願いをかなえてあげて下さい。子どもさんの成長に欠かせない学びが必ずそこにありますので!

 

そうそう、話を戻して…、2年の夏に負けてあと一歩届かなかった近畿大会出場は、負けた後のカラス事件もあって…その悔しさは倍増!おかげで厳しい練習に耐え頑張ることができました。翌年の夏は、見事、県代表として近畿大会出場を果たせました。

私にとってハシブトガラスは、幸運の青い鳥Blue Birdなのです。

カラスって、太陽光に反射すると、青く輝くんですよね。よく観察してみて下さい。真っ黒ではありません。なかなか渋くて気品のあるブルーなんです。

 

幸せの青い鳥に、オシッコをかけられた人は、なかなかいないと思います。

カラスが、私に運(うん〇)をかけてくれたんですね…いや「大」ではなく「小」だな…(笑)

 

私におしっこをかけてくれたカラスは間違いなくハシブトガラスでした。鳴き声も、「かぁ~かぁ~」と非常に澄んだ声だったことが鮮明に思い出されます(笑) ハシボソガラスは、濁った声に聞こえます。がぁ~がぁ~という感じです。
是非、カラスの声にも耳を傾けてみて下さい。

 

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。 https://www.projectwild.jp/

(2023年7月掲載)

キーワード: カラス、動物の知能、アニマルコミュニケーション
川原 洋(かわはら ひろし)
川原 洋(かわはら ひろし)
一般財団法人 公園財団 公園管理運営研究所 開発研究部 環境教育推進室長
Project WILD 日本代表 コーディネーター
東京都「体験の風をおこそう」実行委員
INSECT MARKET 自然教育アドバイザー

幼少から奈良で育ち、今年、56歳になります。
大阪府立大学農学部卒業後、同大学の修士課程(造園学修士)を修了。修士の時にオーストラリアのメルボルン工科大学に留学経験を持っています。
29歳のときに転職し(財)公園緑地管理財団に入社。得意の英語を生かして2008年から東京本部にてProject WILDの普及に力を注いでいます。アメリカで年1回開催されるProject WILD コーディネーター会議に、日本代表として毎年参加し、AFWA(全米野生生物協会)や全米各州の環境教育関係者としっかりとしたネットワークを持っていることが強みです。
2019年に全米各州の指導者から選出される名誉ある「最優秀コーディネーター賞」を受賞。アメリカ人以外の受賞は、Project WILDの長い歴史の中で初めて!日本人初の受賞となりました。
幼少から自然の中で遊ぶことが大好きで、家の中で遊んだ記憶がほとんどありません。私の小話はすべて実体験から生まれたものです。
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