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生きもの小話
音のあるじは? Where does this sound come from?

2012年5月、テキサス州でのこと。

毎年、Project WILDの国際会議は自然豊かな場所で開催されることが多い。

ワイルドだろ…笑

会議の合間に外の空気を吸いたくなって扉を開けると目の前に緑豊かな空間が!

キョロキョロすると、少し離れたところにおしゃれな木製ベンチが見えました。

 

やわらかな風が頬にさらさらと心地良い、鳥のさえずり、陽射しが暖かく…いや少し熱いくらいか…

講演、ディスカッションで疲れた頭の中がすっきりと、血液がさらさらと流れていくような…癒しの時間です。ベンチに腰掛けて、の~んびりしていた時です。

 

パリパリパリパリ…ポリポリポリ♪

 

軽快なサウンドが鼓膜に心地良い。何だろう…この音?気になりはじめると、意識がそちらに向かい、音がどんどん大きくなっていくように感じられました。

 

ボリッ

 

と力強いサウンドも時々混じり…。

この音はどこで鳴っているのか?目を閉じて音の方向を見極めると、音源は私の真上、やや後方辺りから聞こえてきます。ゆっくり振り返って見上げてみました。私が座っていたベンチは、ちょうど蔓植物が絡んだパーゴラの下に設置され、私の頭上や背後には青々とした葉っぱが垂れ下がっています。

私が目を凝らして「音のあるじSource of Sound」を探し始めると、スッと音が消えました。鳥たちはあちらこちらで、さえずっています。しかしポリポリ音は聞こえない…完全に止まりました。

私の動き(振り向いた動作)に気付いて動きを止めたな!用心深い奴め…もう少し待ってやろう。すっかり探偵になった気分。振り向いた状態で、1分ほど…じっとしていると、パリパリポリポリ…音が聞こえ始めました。よしよし、さてどこだろう?音はとても近くから聞こえてくるような。だけど、どこにもいない…。でも音はしっかりと聞こえている。不思議な感覚です。

こうなったら意地でも見つけたい。しかし振り向いて腰をねじった状態でしたから、だんだんと体に痛みが増し、そろそろ限界かと思った、ちょうどその時!

 

「いた~…デデっ…でかい!」

あまりにも驚いたため、ベンチから跳ね上がりました。座った状態からよくここまで跳べたものです。

いた!いたいた!巨大な芋虫が50センチほど離れた頭上にぶら下がっているではありませんか。垂れ下がった葉っぱをすごい勢いで食べています。美味しそうにパリパリボリボリ…「音の主」は間違いなくこの子です。なんでこんな大きな生きものに気付かなかったのだろうか?と思うほど大きい。体を伸ばして食べているので全長15センチはあります。私の感覚(気持ち)的には30センチ以上あるように見える。それぐらい大きく丸々太った幼虫でした。また、美しい~。やわらかな緑色..少し白っぽいので緑白色と言ったらよいでしょうか。背中の大きめの突起はレモンイエロー、小さな突起はマリンブルーです。なんて美しいのだろう。これは間違いなく巨大で有名な蛾アトラスAtlas Mothの幼虫です。日本にも近似種が生息しています。本土にはシンジュサン、離島には沖縄県指定の天然記念物、世界最大級の蛾として有名なヨナグニサンです。ヨナグニサンには会えていませんが、遠いアメリカでヨナグニサンの親戚に会えるなんて…幼虫だけど、本当にうれしかった。

いつの日か、与那国島を旅したい。世界最大級のヨナグニサンを見るために!そう心に誓ったのが10年前…まだ行けておりませぬ。

うちの母親が見たら、腰を抜かすでしょうね…笑

 

モスラ~や♪モスラ~や♪見れば見るほど大きくて美しい。幼虫の色合いは、本土で見られるシンジュサンに似てますね。

モスラ~や♪モスラ~や♪見れば見るほど大きくて美しい。幼虫の色合いは、本土で見られるシンジュサンに似てますね。

 

Project WILDの中に“WILD Words(野生の言葉)”というアクティビティがあります。自然の中に身を置いて、Soft Eyes(リラックスした目)とKeen Eyes(鋭い目)を使って、まわりを観察してみましょう。Soft Eyesは、何か1つに焦点を当てるのではなく、周りで起こっていることを幅広く捉えることが大切です。そしてKeen Eyesを使って、気になった周辺の動き(音も含め)を追ってみましょう。自然にゆったりとひたることができる至福の時間になると思いますよ。

 

この前翅先の模様!ヘビの頭に似ていませんか?危険を感じると、さっと翅を広げて、最大の天敵である鳥たちを威嚇するのです。 この色合いに魅了されます。

この前翅先の模様!ヘビの頭に似ていませんか?
危険を感じると、さっと翅を広げて、最大の天敵である鳥たちを威嚇するのです。
この色合いに魅了されます。

 

イモムシに乗ってご機嫌だぜぇ~!もう10年以上前の写真だから若いぜぇ~

イモムシに乗ってご機嫌だぜぇ~!もう10年以上前の写真だから若いぜぇ~

 

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。 https://www.projectwild.jp/

(2023年5月掲載)

キーワード: アトラス・モス、シンジュサン、ヨナグニサン、モスラ、咀嚼音、ASMR
川原 洋(かわはら ひろし) <br/>Nickname / ひろ(Hiro)
川原 洋(かわはら ひろし)
Nickname / ひろ(Hiro)
一般財団法人 公園財団 公園管理運営研究所 開発研究部 環境教育推進室長
Project WILD 日本代表 コーディネーター
東京都「体験の風をおこそう」実行委員
INSECT MARKET 自然教育アドバイザー

幼少から奈良で育ち、今年、56歳になります。
大阪府立大学農学部卒業後、同大学の修士課程(造園学修士)を修了。修士の時にオーストラリアのメルボルン工科大学に留学経験を持っています。
29歳のときに転職し(財)公園緑地管理財団に入社。得意の英語を生かして2008年から東京本部にてProject WILDの普及に力を注いでいます。アメリカで年1回開催されるProject WILD コーディネーター会議に、日本代表として毎年参加し、AFWA(全米野生生物協会)や全米各州の環境教育関係者としっかりとしたネットワークを持っていることが強みです。
2019年に全米各州の指導者から選出される名誉ある「最優秀コーディネーター賞」を受賞。アメリカ人以外の受賞は、Project WILDの長い歴史の中で初めて!日本人初の受賞となりました。
幼少から自然の中で遊ぶことが大好きで、家の中で遊んだ記憶がほとんどありません。私の小話はすべて実体験から生まれたものです。
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