「地球最後の秘境」と謳われるパプアニューギニアは、21世紀に入ってからも新種の動植物が次々と発見される国であり、未開の熱帯雨林が生い茂り、海のオアシスとよばれる珊瑚が豊富で、生きものが住む環境としてはこの上ないパラダイスである。
成田空港から首都ポートモレスビーまで直行便で6時間30分。
現在も多くの生物学者や文化人類学者が訪れる国だ。
その中の一人、アメリカ合衆国の生物地理学・進化生物学者ジャレド・ダイアモンドは
著書「銃・病原菌・鉄」の中で、以下のように述べている。
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彼はパプアニューギニアをフィールドワークの対象地域として調査する中で、
ある日、ニューギニア人のヤリが著者に投げた問い掛け、「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものと言えるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」(銃・病原菌・鉄 引用)
という疑問に対し、その一つの答えとして、
ヨーロッパが偶然地理的な条件に恵まれていたからで、
「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない」
(銃・病原菌・鉄 引用)
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ニューギニアは年中温暖で、自生する食料が豊富にあるため、人々は食料を得るのに比較的容易である。筆者も実際パプアニューギニアで生活した中で、自生する食料の豊富さや温暖な気候から生じる生きてく上での安心や解放感を感じた。
生きもの達にとって、自然豊かで自由な土壌が秘境とよばれる多様性を育んだのかもしれない。
写真:https://mapmania.org/map/75851/papua_new_guinea_1964
【ハナビラクマノミ&センジュイソギンチャク ~共生とは~】
(pink anemonefish&Magnificent sea anemone)
海のアマゾン「コーラル・トライアングル」が存在するパプアニューギニア。
世界の中でも最もサンゴの種類&数の多い地域と言われていて、
生きものたちの楽園となっている。
そんな海の生きものパラダイスで出会ったのは、
ハナビラクマノミと丸く縮んだセンジュイソギンチャク。
イソギンチャクは時々、包み込むように鮮やかな丸い壁面をつくって、壺のような形に変形。
そこにクマノミがひっそりと隠れている。
双方は相利共生の関係にあり、それぞれのメリットで生活している。
・クマノミはイソギンチャク付近で生活し、捕食者が近づいてくると、急いでシェルターであるイソギンチャクの中に逃げ込む。
・イソギンチャクはクマノミたちと共生すると、自身の成長スピードがあがる。
(魚がいることで、藻類の光合成が促されて栄養効率が上がる)
広い海のアマゾンで生き抜くための知恵であり、双方が出会った奇跡も神秘的だ。
「生きもの」たちは、環境や状況に応じて、今後もダイナミックに変化していく可能性を秘めている。
【ムシロガイ(貝殻貨幣:シェルマネー) ~古くて新しい信用システム~】
(Nassarius livescens ※Shell money)
ラバウルへ訪問した際、マーケットで通貨を支払わず、貝殻で物々交換をする光景を発見!
実は、貝殻貨幣(シェルマネー)と呼ばれる「ムシロガイ」だった。
「ムシロガイ」は、干潟から水深10m位のやや深い海にまでの砂底に生息している巻貝で、細長い2本の足で早く動くのが特徴。
写真:https://kotobank.jp/word/%E3%83%A0%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%AC%E3%82%A4-140495
貝殻貨幣は、この小さな貝に穴をあけ、木のツルを通し紐状にしたもので、小さな巻貝の尖った部分を切り取って穴を開けている。
パプアニューギニアの東ブリテン州ラバウルのトーライ族ではタブと呼ばれる貝殻の貨幣が、結婚時の支払いや伝統的な用途にだけでなく、モノの売買を媒介する交換媒体としても今日に至るまで使用されてきた。
これを約2m作ったものを1パラムと呼び、約400円の価値があるそうだ。
この「ムシロガイ」はラバウル近郊では採取できず、国内の遠方又はソロモン諸島など過去の外国との交易から入手したのではないかという説があるなど、入手経路が不明で謎が多い。
国家権威によらない独自の信用価値を生み出し、人々の間で交換が行われるシステムは、インターネット上の仮想通貨のような新しいシステムとも言えるかもしれない。
生きものたちからの発見や学びを通して、私たちの住む社会を考えるきっかけにもなる。
愛すべき「生きもの」たちと共に、Yumi hamamas !
※Yumi=みんな hamamas=幸せ (現地ピジン語より)
(2023年6月掲載)
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