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生きもの小話
幼少期は好きで触っていたのに今は…

私は生き物の中で、昆虫類、爬虫類、両生類を素手で触ることができません。そんな私ですが、子どもの頃は、クワガタ、バッタ、セミ、アマガエル、サワガニなどを家で飼育していました。カナブンの体に糸を結んで飛ばしながら遊んだり(カナブンさん!ごめんなさい…)、トカゲのしっぽを切ったことだってありました。遊び場所は公園や野山がお気に入りでした。シロツメクサで花輪を編んで身に着けたり、小さなニワゼキショウを花束にできるほど摘んで花瓶に飾ったり、とにかく自然の中で幼少期を過ごしました。けれども成長とともに飼育していた生き物たちは家からどんどん減り、思春期に入るとお洒落に芽生え、生きものから疎遠となっていきました。とりわけ昆虫類は、いつの間にか大の苦手になっていました。

 

公園財団に入団以来、私は長く植物管理の仕事に携わっています。植物に昆虫はつきものですね。例えば、草花の調子が悪い時は、プランターの土中にコガネムシの幼虫が大量発生していることがよくあります。幼虫たちが根を食べてしまうため萎れてしまうのです。西洋朝顔の葉が一晩で減ってしまった時は、親指ほどもある大きなスズメガの幼虫がどこかに隠れています。植物担当の使命として、これらの昆虫たちを取り除かなければなりません。手袋を防具替わりにしてポーカーフェイスを装って立ち向かうのですが、心の中では思いっきり悲鳴をあげております。それでも、慣れと言うのは凄いもので、長年にわたるこの作業(修行)によりメンタル面はかなり鍛えられました。

 

さて、今でも忘れられない出来事を紹介させていただきます。

 

このメルヘンチックなリュックサックのポケットに生き物がいるとは想像もつかない

このメルヘンチックなリュックサックのポケットに生き物がいるとは想像もつかない

自然遊びを重視している保育園へ娘を通わせていた時のことです。いつものように娘をお迎えに行くと、娘のリュックサックのポケットからビニール袋がはみ出していました。気になって取り出してみると黒い粒がたくさん入っていたのです。オシロイバナか朝顔の種を集めたのかな?と思った瞬間、その黒い粒がなんと平べったく変形し、もぞもぞと動き始めたのです。「ギャ~!」と叫びながらビニール袋を思いっきり投げ飛ばしてしまいました。そう、それはダンゴムシさんの集団だったのです。周りにいた園児たちに大笑いされてしまいました…。苦い出来事はそれだけではありません。保育園から帰ると洗濯機を回すのが日課でした。娘のズボンの中には、土やゴミなどが入っていることが多いので、いつものように何の気なしに手を入れて探ってみると指先にカサカサとした感覚が…。これは乾燥した落ち葉かな?と思って取り出してみると、出てきたのはセミの抜け殻たち!

 

「ギャ~!もう!!なんでぇ~」

 

これらは10年以上たった今でも忘れることができず、トラウマとなって私の記憶に深く刻み込まれております。

 

 

さて、なぜこんなに怖いと感じるのでしょうか?

これらのゾワッとさせられた体験について推考してみますと…

 

植物管理で対面する生きものたちは、「そこにいるであろう!」という予測の上で出会うわけで、対面する前に自分の中でちゃんと心の準備ができているのです。娘が集めたダンゴムシやセミの抜け殻は、気が緩んだ無防備な時に、想定外のものが突然目の前に現れるからだと思いました。まさにドッキリカメラのような感じです。苦手な生き物に手袋なしで触れているのですから!

子どもの頃は素手で触っていたのに、なぜだろう?自身に問いかけてみても不思議に思えます。大人になってから苦手になる原因には諸説あるようです。ホルモンのバランス変化により、考え方が変わることもあるようです。そもそも人間は自分と違う姿や形の生き物が苦手と感じるそうですが、子どもの頃は苦手意識よりも好奇心が勝ることで生き物に触ることができるようです。なるほど!

 

植物性発生材に集まり、様々な生き物の棲み家となる“バイオネスト”

植物性発生材に集まり、様々な生き物の棲み家となる“バイオネスト”

現在、植物管理の一環としてコンポストセンターの管理も担当しています。園内では剪定された木々や植物が大量に出てきます。これら植物発生材の運搬と処理コストが高いため現場で処理できる方法を探していました。数年前に、その解決策の一つとして「バイオネスト」の存在を知りました。バイオネストは枝を組み合わせて鳥の巣のように成型し、植物発生材をその中に積み上げて堆肥化します。生態系の循環を考えた自然に優しい土作りができるわけです。そして、バイオネストには様々な生きものたちが集まってきます。

 

バイオネストのパートナー“マクラギヤスデ”

バイオネストのパートナー
“マクラギヤスデ”

仕事の一環で設置すると調査が必要となります。そこに集まる生きものたちを調べたことがありました。実体顕微鏡を使って種類の同定を行いました。あれほど怖かった生きものたちなのに、いつの間にか顕微鏡越しに見える造形の美しさに魅了されていきました。特に気に入ったのがマクラギヤスデでございます。枕木を並べたような面白い形とオーストラリア産の枕木のような色合い、白く光る突起物がキラキラして美しい。この取り組みを通して、ダンゴムシなど土壌分解に関わる様々な生きものたちについて知ることができました。そして、苦手だったこれらの生きものたちが、発生材の運搬および処理経費を大幅に抑えてくれる大切な作業スタッフ!いえ、私にとって仕事のパートナーだと思えてきたのです。自分でも驚くほどの気持ちの変化です。また、いつの日か幼い頃のように直接、手で触れられる時がやってくるかもしません。自然と共生していくためには、相手(生きもの)をよく知る必要があります。苦手だった生きものたちも私たちの暮らしを様々な形で豊かにしてくれているのです。

 

体長2センチ程度約20個の体節の各節から2対の脚があり、実体顕微鏡で見ると造形美に魅入る

体長2センチ程度
約20個の体節の各節から2対の脚があり、
実体顕微鏡で見ると造形美に魅入る

幼体は成体に比べて淡い色で体節が少ない

幼体は成体に比べて淡い色で体節が少ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近読んだ本『虫ぎらいはなおるかな? -昆虫の達人に教えを乞う-』にこんな一文がありました。

世の中は無菌室じゃない。気持ち悪いものがいるから楽しいこともあるし。気持ち悪さは人生のスパイスくらいに考えておけばいいんじゃないでしょうか?

 

この“人生のスパイス”というフレーズがストンと落ちました。確かに刺激的なスパイスです。

昔のことが思い出されました。

「ダンゴムシの皆さま、あの時、投げ飛ばして、ほんとにごめんなさい」

 

(2024年4月掲載)

 

コンポストセンター/植物発生材を集約し堆肥を作る施設

植物発生材/剪定枝、刈草、芝草、伐採木、開花終了した花苗など

 

 

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。 https://www.projectwild.jp/

キーワード: 自然遊び、子どもの好奇心、コンポストセンター、バイオネスト、マクラギヤスデ
柴田 雅子(しばた まさこ)
柴田 雅子(しばた まさこ)
1972年京都府生まれ
一般財団法人公園財団木曽三川公園管理センター勤務
グローイングアップ・ワイルド エデュケーター講習修了

幼少期は野山を駆け回り、草花摘みや枝や石の収集、生き物採集、公園で靴飛ばしや鬼ごっこなどをして日が暮れるまで遊ぶ。
時には日が暮れて門限を破るまで遊び、締め出されることも。
植物と公園が好きで入団後、植物管理、広報・企画、市民協働、清掃などの業務に携わる
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