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生きもの小話
今年はクマのニュースが! Bear Coming Out

 

私は大学を卒業してからアメリカのグレーシャー国立公園Glacier National Parkに訪れたことがあります。自然豊かなクマの一大生息地に足を踏み入れたわけですから当たり前?なのかもしれませんが、野生のクマが道路沿いを普通に歩いています。運転席のドアの横まで歩いてきて窓に鼻を押し付けてくるクマまでいました。基本、野生動物(大型哺乳類)が近くにいるときは窓を閉めて車外に出ない!などレクチャーを受けていましたし、クマに関する知識もいろいろと持っていましたので恐怖感はありませんでした。それどころか、クマに対する興味がさらに湧き上がってしまい…。

 

あれから30年近く時が流れましたが、日本で野生のクマに出会ったことはありません。正確に言いますと、今から5年前、紅葉で有名なイロハ坂を車で下っていた時に、遠くの山の斜面にツキノワグマを見つけたことがあります。黒い点が動いている…間違いなくツキノワグマでしたが、いやいや小さい。やはり近くで見てみたい。出会ってみたい!という気持ちはずっと変わりません。

 

危険な生きものであることは間違いありません。野生動物は生き抜くために強力な武器を備えています。奈良公園ではマスコットのように親しまれるシカ(神様の使いですが…)も牡鹿の角で一突きされれば大ケガです。私の知り合い(猟師)から聞いた話ですが、クマよりイノシシの方が危ないぞ!と言う意見もあります。突進されて鋭い牙で皮膚をえぐられると命に関わります。皆さんを怖がらせようとしているわけではありません。相手をよく知り、正しく怖がることが大切です。

 

ツキノワグマは、本来、大人しく臆病な動物です。決して人間を見つけたら攻撃してくる生きものではありません。おそらく、地球上にそんな生きものはいない!…いや少ないと思います。蚊は人間を目がけて攻撃?してきますが、それはメスだけです。産卵するために高栄養の食べ物(血)を必要としているからです。クマの話からだいぶ小さくなりましたが、全ての生きものの行動には当たり前に意味(目的)があります。

空腹で里に出てきてしまい人間の食べ物の味を憶えてしまうと厄介になります。

今年は特にクマのニュースがよく聞かれます。ドングリの実りが少なく、クマたちは空腹を満たす為に行動範囲を広げています。

 

来月、久しぶりにアイダホ州よりクマの専門家グレッグ・ロシンスキー氏を日本にお招きして講習会を開催する運びとなりました。コロナが5類に格下げされ、日常が戻ってきましたね。

 

アメリカにはクマと共生しながら暮らしている人々がたくさんいます。その町の住民はみな、クマの講習を受講しクマの習性を積極的に学ぶことで、良い距離感を保ちながら共に暮らしています。SDGsにて生物多様性の大切さ、重要性が大きく謳われています。野生動物と共生するためには、相手のことをよく知り理解することが大切です。

 

秋はキノコ狩りの季節です。キノコLOVEな私の知り合いは、1人(単独)でクマが生息する深い森に分け入ることはしません。おしゃべりをしたり、鈴をつけるなど、自身の居場所を発信することが大切です。クマだって人間が怖い!できれば会いたくないのです。一番、危険なのは、お互い知らずに近づいて鉢合わせしてしまうことです。こうなったら、クマは自己防衛のために攻撃態勢に入ります。子どもと一緒に行動している母グマだとなおさらです。運悪く鉢合わせしてしまった場合、クマが襲ってこない限り…走って逃げないこと!クマの目を見ながら、ゆっくり後退りで離れて下さい。重ねて走ってはいけません。クマを興奮させてしまう可能性があるからです。クマは時速60キロで走ることができます。人類最速のウサイン・ボルトUsain Boltでも逃げ切れません。また、木に登ってもダメです。ツキノワグマは木登りがとても上手です。北海道にいるヒグマはそんなに上手くないですが…それでも人間よりは上手です。木に登ることは得策ではありません。

 

そして、ここからは…話半分くらい…いや2割ぐらいで聞いてくださいませ。

 

グレッグGreggによると、もう逃げきれなければ、ツキノワグマであれば戦え!ヒグマはダメだが、ツキノワグマなら何とかなる!健康な男であれば勝てる!と豪語しておられました(苦笑)

では、どうやって戦うのか??クマの鼻ッ柱にフックかストレートパンチを食らわせろ!とのこと…。多くの神経が集まる鼻先が唯一のウィークポイントだそうです。

まぁ、アイダホ州政府で30年以上、クマの管理と研究をされてきたクマの第一人者の言葉ですから…少しは…信じられる…!??

いやいや…皆さんご自身で判断くださいませ!毎年、ツキノワグマに出会う青森在住の友人にこの話をしたら、「あのパワーとスピードに人間が対抗できるわけがない。絶対無理です!戦えません。クマ除けスプレーBear Sprayを所持しましょう!」とのことでした。

 

アメリカクロクマより日本のツキノワグマの方が、より気性が荒い!という話も聞きます。

とにかく、まずは鉢合わせするような状況をできる限り作らないこと。そして、もし近距離で遭遇してしまったら、目線を逸らさずに、ゆっくりその場から離れること。クマの生息密度が高いエリアに足を踏み入れるときは、クマ除けスプレーの携帯をお薦めします。自身の守り神(武器)となります。正しい情報と知識を持つことで、ベストな判断が可能となります。

クマのことをもっと知りたい方は、是非、11月のクマの講習会WILD About BEARにご参加ください。アメリカと日本のクマは共通点も多く、参考になることもたくさんあるかと思います。通訳は私が担当させていただきます。

 

(2023年10月掲載)

 

■お申込・詳細はコチラから

https://www.projectwild.jp/【project-wild-~クマ編~】-wild-about-bear-指導者養成講習会/

 

キーワード: ツキノワグマ、ヒグマ、プロジェクトワイルド「WILD About BEAR」
川原 洋(かわはら ひろし) <br/>Nickname / ひろ(Hiro)
川原 洋(かわはら ひろし)
Nickname / ひろ(Hiro)
一般財団法人 公園財団 公園管理運営研究所
開発研究部 環境教育推進室長
Project WILD 日本代表 コーディネーター
東京都「体験の風をおこそう」実行委員
海洋博覧会地区熱帯亜熱帯環境ゾーン基本設計検討委員 CLASS EARTH 自然教育アドバイザー
実用英語技能検定1級

幼少から奈良で育ち、今年、56歳になります。大阪府立大学農学部卒業後、同大学の修士課程(造園学修士)を修了。修士の時にオーストラリアのメルボルン工科大学に留学経験を持っています。
29歳のときに転職し(財)公園緑地管理財団に入社。得意の英語を生かして2008年から東京本部にてProject WILDの普及に力を注いでいます。アメリカで年1回開催されるProject WILD コーディネーター会議に、日本代表として毎年参加し、AFWA(全米野生生物協会)や全米各州の環境教育関係者としっかりとしたネットワークを持っていることが強みです。
2019年に全米各州の指導者から選出される名誉ある「最優秀コーディネーター賞」を受賞。アメリカ人以外の受賞は、Project WILDの長い歴史の中で初めて!日本人初の受賞となりました。
幼少から自然の中で遊ぶことが大好きで、家の中で遊んだ記憶がほとんどありません。私の小話はすべて実体験から生まれたものです。
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