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生きもの小話 ホッキョクグマ編

ホッキョクグマの親子©naturepl.com_Steven Kazlowski

 

種名:ホッキョクグマ
学名 Ursus maritimus
分類:食肉目クマ科
体長 オス:200-250cm メス:180-200cm
体重 オス:400-600kg  メス:200-350kg

 

 

今、子どもたちに一番人気の動物は何だと思いますか?

ジャイアントパンダと並んで、ホッキョクグマに人気が集まっています。

 

白くて、丸くて、かわいらしい容姿で描かれるからでしょうか。

実際には肉食の動物で、恐ろしくて、近寄ることなどできないのですが。

 

地球温暖化は今、もっとも懸念される環境問題になっています。

その影響を受ける動物の典型としてホッキョクグマが取り上げられることが多くなっています。

子どもたちの目によく触れるのも、これが理由かもしれません。

 

北極の氷が溶けてしまうと、生きていけないホッキョクグマ。

地球温暖化の進行で、極地の氷が溶けているというニュースが聞かれるので、ホッキョクグマの危機と温暖化を結びつけるのは難しくありません。

 

ホッキョクグマに迫る脅威は、かつては狩猟でした。

これを原因として、かつて、絶滅危惧種にリストアップされていました。

1950年代から、ソ連(現ロシア)などで保護策が講じられるようになり、1973年には、アメリカ、カナダ、ソ連、デンマーク、ノルウェーがホッキョクグマを保護する協定を締結しました。

こうして狩猟圧は下がり、絶滅危惧種のリストからは外れました。

 

しかし、今また、絶滅危惧種になってしまっています。

2006年に地球温暖化を原因として、再度、リスト入りしてしまったのです。

さて、ホッキョクグマは極寒の地に適応して、厚い毛皮と脂肪を蓄えています。

最も厚いお尻のあたりで、脂肪の厚みが10cmを超えるものもいます。

ご自分のお尻の脂肪をつまんで確認してみてください。ホッキョクグマの脂肪は相当な厚みであることがわかるでしょう。

寒さを防ぐには、そのくらいの脂肪を蓄えている必要があります。

 

また、鼻先と足裏の一部を除いて、全身を白い毛で覆われています。

ただし、実は毛は白ではありません。半透明です。

半透明の毛が重なると、毛の中の空洞で光が乱反射して白く見えるのです。

 

体が白ければ、好物のアザラシを捕まえる時に見つかりにくくなり、そっと近づくことができます。

雪と氷に覆われた土地では、白い体はカモフラージュになります。

 

あるいは、海中を泳ぐアザラシは、呼吸のために、時々、氷の間から顔を出しますが、このとき、ホッキョクグマはその呼吸穴で待ち構えていて、顔を出すやいなやガバッと捕まえます。

 

地球温暖化に生存を脅かされるホッキョクグマ©Steve Morello_ WWF

こうして、ホッキョクグマの未来は決して明るいとは言えません。

実は、狩猟で数を減らしていた時代も、温暖化の影響で数を減らしている今も、どちらも人間の影響です。

私たちは、自分たちの生活を大きく見直す必要があるでしょう。

 

 

 

 

 

でも、2050年までに、温暖化の原因となるCO2排出量を実質ゼロにすると宣言した国が今や100カ国を大きく超えています。

その中には、アメリカも日本も含まれています。

ちなみに、世界一のCO2排出国である中国は2060年に実質ゼロを目指すとしています。

 

これを契機に、アメリカ、中国、欧州各国などで、ガソリン自動車から電気自動車などへのシフトが急加速しています。走行時のCO2がゼロになるからです。

日本もハイブリッド車を含むものの、2035年までに、すべての乗用車について、新車の電動化を実現するとされています。

 

また、世界各国で、太陽光発電や風力発電の設備も導入が進み、脱炭素社会に向けて、大きく舵が切られた感があります。

経済産業省は今年の7月、2030年時点では、太陽光発電が最も安価な発電方式になるだろうという予測を公表しました。

高くて、供給が不安定な再生可能エネルギーというイメージは、大きく後退しています。

 

気候変動に対して政策提言活動を行なうWWFジャパンでは、2050年時点で、再生可能エネルギー100%の社会を実現させることは可能であるとして、シナリオを公表するなど、積極的に発言を続けています(注1)。

今や、世の中は、この方向に向けて、走り出しています。

再生可能エネルギーは気候変動問題を解決する有力な方法のひとつ©Michel Gunther_ WWF

再生可能エネルギーは気候変動問題を解決する有力な方法のひとつ©Michel Gunther_ WWF

2030年代には、夏場に北極の氷がいったん消滅する事態が起こりうると予測されています(注2)。

ホッキョクグマの生存が保証されるペースで温暖化の進行に歯止めがかかるのか、それとも・・・。

 

ホッキョクグマを救うことは、そのまま人間を救うことにつながります。

集中豪雨や洪水、土砂崩れ、干ばつ、農作物の不作に熱中症。

地球温暖化の進行にともなって人間が直面する危機は、すでに実感できるレベルに達しているように思われます。

 

ホッキョクグマが絶滅危惧種であることと、人間の危機はシンクロしているといっていいでしょう。

これから、脱炭素に向けて、私たちにできることは何でしょうか?

 

(2022年2月掲載)

 

注1:WWFジャパン(2050年排出ゼロを実現する!日本の「エネルギーシナリオ」、

2021年1月8日)
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/4534.html

 

注2:国立環境研究所(環境展望台2019年3月13日)
https://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=26602

キーワード: ホッキョクグマ、シロクマ、絶滅危惧種、地球温暖化
大倉 寿之(おおくら ひさし)
大倉 寿之(おおくら ひさし)
Project WILD本編・水辺編 シニアファシリテーター Project WILD鳥編ファシリテーター
Growing Up WILD ファシリテーター
ESDコーディネーター

1964年生。京都大学教育学部教育心理学科卒。WWFジャパンで広報・教育業務を20年あまり担当。現在、公益社団法人日本フィランソロピー協会勤務。社会課題の解決につながる活動に従事。

特に現在は、ESDコーディネーターとして環境教育や開発教育に主眼を置いた「持続可能な開発のための教育」(ESD)を教員研修、企業研修などの形で提供。 プロジェクトワイルド以外にも、ネイチャーゲームの資格などを保有し、室内および野外でのアクティビティを組み合わせた活動を考案するのが得意。 絶滅危惧種の保全をはじめとする国内外の環境問題に詳しい。プラごみ、地球温暖化、森林破壊、水産資源の減少、生物多様性、アフリカのサイやゾウなどの密猟問題を広く扱うことができる。 横浜市、気仙沼市をはじめとする各地での教員向け、一般市民向けESD講座のほか、小中高等学校等への出前授業の経験多数あり。
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