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みどり花コラム
ギンドロ 松井恭

植物にも流行があると思うのです。

 

何年前でしょう。14~15年前になりますか。「キングサリ」というマメ科の樹木の植栽が流行したことがありました。その名前の通り、金色の鎖が垂れ下がるような美しい花でした。あ、あそこに、あ、この家にと、3~4軒のお宅でキングサリがみられたものでした。しかし、栽培が難しかったのでしょうか、最近全く見なくなりました。

 

かつて流行した植物として、もう1種思い出すものがあります。それはヤナギ科の「ギンドロ」です。何てきれいな木でしょうと、初めてその樹木に出会った時、そう思ったことを覚えています。ただ、残念ながら、高齢のため、どこの植物園で見たのか思い出せなくなっています。

 

ギンドロの樹皮

ギンドロの樹皮

 

樹皮にソロバン玉のような模様のあることがギンドロの特徴だと思いますが、私が美しいと思いましたのは葉です。カエデのような形をした葉の裏側が、銀白色をしているのです。風が吹くと表側の緑色と銀白色がチラチラと見え隠れし、とても美しいと感じました。

まるで樹木1本そのまま童画のようでした。

 

ギンドロの葉

ギンドロの葉

 

ギンドロは宮沢賢治が好んだ木としても知られています。花巻農学校に賢治が初めてギンドロの苗木を植えたのだと教えて下さったのは、長野県某市の図書館長をなさっていた先生でした。このコラムを書くにあたって、お聞きしたいことがあり連絡を取ってみたのですが、どうしても連絡がつきませんでした。

 

ヤナギ科は大きく分けて、ヤナギ属とヤマナラシ属に分けられます。

ヤナギ属は、私達が比較的多く目にするネコヤナギ、川端で早春まっ先に緑を見せてくれるシダレヤナギ、昔柳行李やなぎごうりを編んだといわれるコリヤナギなどです。一般的に「柳」という字で書かれます。

ヤマナラシ属はヤマナラシ、ドロノキ、ギンドロも入ります。一般的に「楊」の字が使われます。そして北海道大学で有名なポプラと呼ばれる樹形の美しい、すっくと成長する樹木も入ります。ポプラは北アメリカ原産のヤマナラシ属と、ヨーロッパ原産のヤマナラシ属との交雑種だそうです。

 

賢治の作品には、樹木がよく登場します。「ひかりの素足」にはマユミの木、「雪わたり」にカシワの木、「どんぐりと山猫」には、ブナの木、クルミの木、カヤの木などです。

賢治の作品に、ヤナギの登場する作品もあります。「風の又三郎」には、「楊」の字で何回も登場します。ヤマナラシかドロノキでしょうと想像します。

「銀河鉄道の夜」の作品の一場面に、「川の向こう岸が俄かに赤くなりました。楊の木や何もかもまっ黒にすかし出され、天の川も波もときどきちらちら針のように赤く光りました」と楊の木が風景の一部に登場します。やはりヤマナラシかドロノキでしょうと私は思います。

 

巷でギンドロの樹木を見るのは少なくなりましたが、花巻に「ギンドロ公園」があります。これは私事ですが、初めてのコラムに「河童に会いに」の表題で、遠野で見たホップのことを書かせて頂きました。

旅の帰り新花巻で下車し、賢治記念館、孫の女の子が好きだと言った童話館、そしてギンドロ公園に娘のレンタカー運転で連れて行ってもらいました。かなり大きく成長したギンドロが何本も植えられ、空気まできれいと思えた素敵な公園でした。

 

ギンドロ公園のギンドロ

ギンドロ公園のギンドロ

 

16~17年前にギンドロ公園に訪れた際、拾ったギンドロの葉

16~17年前にギンドロ公園に訪れた際、拾ったギンドロの葉

 

もう一つ、私事ですが、「ヤマナラシ」にも思い出があります。

 

植物が好きというだけで、知識に乏しい私は、植物に関する講座に通ったことがあります。たしか神代植物公園だったと思うのですが、ある日のフィールドワークの授業で、先生からヤマナラシの説明を受けました。ヤマナラシの葉柄がとても長いこと、そして扁平であることを伺い驚き感動しました。

 

葉柄が長く扁平なので、風が吹くとサヤサヤととても良い音を奏でるのです。生徒はみな、落ちていた葉っぱを拾い振ってみました。子どものように、皆いい顔でした。

 

 

                         松井 恭                           (2025年12月掲載)

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