![みどり花コラム](./img/common/midori.png)
公園や植物園を歩くと、植えられた植物に名札がついていることがあります。親切なことだと感心します。
ところが、たまに間違っていることに気づきます。なんだかモヤモヤします。観察すると、間違いの中にもいくつかのパターンがあることが分かってきました。
ある公園の「野草園」ではだれもがなじみの身近な植物「ムラサキツメクサ」名札がありました。ところがすでにムラサキツメクサは無くなっていて「コメツブウマゴヤシ」が生えていました。多年草でもずっと同じ場所に生えるとは限りません。
![ムラサキツメクサ](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/murasakitumekusa-1024x683.jpg)
ムラサキツメクサ
![コメツブウマゴヤシ](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/kometubuumagoaysi-1024x683.jpg)
コメツブウマゴヤシ
また、「ウグイスカグラ」と名札があっても、よく見ると「ミヤマウグイスカグラ」だということもあります。植栽の際に、植木屋さんが間違った分類の植物を持ってきたりします。植木屋さんは似ていれば同じと考えることがあり、間違った名札が付くことになります。
![腺毛が多く見えるので多分ミヤマウグイスカグラ](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/miyamauguisukagura-1024x683.jpg)
腺毛が多く見えるので多分ミヤマウグイスカグラ
最近面倒なのが、科名の変更です。APG分類になったので、なじみの科名がだいぶ変わりました。「カエデ科」はなくなり、「ムクロジ科」になりました。私など古い人間には違和感満載です。「ユリ科」は多くの種を含む大きな科でしたが、いくつかの植物が「イヌサフラン科」や「キジカクシ科」として独立しました。新しい科名にはまだ慣れません。これらの名札は公園などでは掛け替えが進まず、まだ新旧混在していますから注意が必要です。
種名が変わることもまれにあります。「ツリフネソウ」は「ワタラセツリフネソウ」が別の種類だと2005年に発表されました。川の土手でよく見る「セイヨウアブラナ」と思っていたのは「アブラナ」だと最近分かったそうです。
![両脇の花弁がうまく写っていませんが、ワタラセツリフネソウです](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/wataraseturihunesou.jpg)
両脇の花弁がうまく写っていませんが、ワタラセツリフネソウです
そのほか、間違いとは言えないけれど、植物の名付け方に違和感があるのもあります。
「ヤハズエンドウ」は標準和名ですが、別名「カラスノエンドウ」の方が一般的です。その仲間に「スズメノエンドウ」というマメ科の植物があります。「カスマグサ」は、ちょうど「ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)」と「スズメノエンドウ」の中間的な大きさの草花です。別名「カラスノエンドウ」と標準和名「スズメノエンドウ」の頭文字「カ」と「ス」の間の草という意味で「カスマグサ」と名付けられたと言われています。
2つの植物名を組み合わせて名付ける場合、標準和名である「ヤハズエンドウ」と「スズメノエンドウ」から「ヤスマグサ」となるのではないかと想像しますが、名付け方1つとっても奥深いものです。
![カスマグサの名前由来](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/図.png)
カスマグサの名前由来
![カラスノエンドウ](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/karasunoendou.jpg)
カラスノエンドウ
![カスマグサ](https://www.midori-hanabunka.jp/wp-content/uploads/2024/09/kasumagusa-scaled.jpg)
カスマグサ
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(2024年9月掲載)
![区切り線](./img/qaa/dot2.png)
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