公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
みどり花コラム
植物に親しむ 小林正明
二子山古墳

二子山古墳

高山植物に詳しくても、案外道端の雑草の名前は知らないという人も多いようです。特にイネ科やカヤツリグサ科の植物まで正確に同定できる人は少ないでしょう。しかし、そんな身近な植物でもきちんと調べて種名がわかったりすると、なんとも楽しいものです。

そこで、身近な植物の世界に親しむための恰好な方法を、私の経験を元に紹介してみようと思います。その方法とは、まず独自のフィールドを決め、その区域の植物相(フロラ)を調査してみることです。あくまで素人の行う調査ですから、科学的に完璧な結果を求めるのではなく、可能な限り忠実に現存種を記録することを心がけます。そのためには、今まで気に留めなかった植物でもきちんと同定しなくてはなりません。図鑑の説明を子細に読み込み判断を下す過程を経験すると、自然と知識が蓄積され楽しさが増してきます。

 

私の場合、子供の頃から親しんできた近所の二子山古墳(群馬県前橋市)をフィールドにしました。この古墳には、ソメイヨシノの古木を中心に、地域の人々が下草を刈り込みながら守ってきた里山環境が残っています。おそらく何世紀にもわたって生命を受け継いできた植物もあるだろうことを期待して、調査を始めました。長辺わずか90メートルの古墳ですが、1回に30分ほどの時間をかけて歩き、2年間で55回の記録を取りました。その結果、付近では目にすることのなかった、群馬県の絶滅危惧種でもあるノカンゾウを見つけたことが最大の発見でした。オオアラセイトウをはじめとした多くの外来種が繁茂する陰で、ヨツバムグラ、ヤマハッカ、ツリガネニンジン、フユノハナワラビといった草花が脈々と遺伝子を繋いできていたのです。

 

カメラに収めた数百枚の写真と、221種の植物目録が私の宝として残りました。手持ちの図鑑には多少の書き込みが増え、大脳にはいくらかの知識が蓄積されたはずです。そして、なによりも楽しい思い出が残りました。高山植物を見に行くことは難しくなっても、まだまだ身近に発見の喜びがあるものです。

 

緑花文化士 小林 正明

(2017年1月掲載)

 

ノカンゾウ

ノカンゾウ

作成した植物目録と使用した図鑑

作成した植物目録と使用した図鑑

区切り線
過去記事一覧(敬称略)
キチジョウソウ 横山 直江
旅と植物 日名保彦
ナギの葉 松井恭
雑木林~私の大好きな庭 千村ユミ子
名札の問題 逸見愉偉
ミソハギ ~盆の花~ 三輪礼二郎
葛粉についてもっと知りたくて 柴田規夫
明治期にコゴメガヤツリを記録した先生 小林正明
「ムラサキ」の苗を育てる 服部早苗
活躍広がる日本発のDNA解析手法 植物の”新種”報告がまだまだ増えそう! 米山正寛
地に咲く風花 セツブンソウ 田中由紀子
稲架木はさぎに会いに 松井恭
クリスマスローズを植物画で描く 豊島秀麿
カラムシ(イラクサ科) 福留晴子
園芸と江戸のレガシー 鈴木泰
植物標本作りは昔も今もあまり変わらず 逸見愉偉
カポックの復権 日名保彦
オオマツヨイグサ(アカバナ科) 横山直江
森の幽霊? ギンリョウソウ 三輪礼二郎
ジャカランダの思い出 松井恭
水を利用してタネを散布する植物 柴田規夫
都市緑化植物と江戸の園芸 鈴木泰
スノードロップの季節 服部早苗
枯れるオオシラビソ 蔵王の樹氷に危機 米山正寛
シモバシラ 森江晃三
葛布くずふの話 臼井治子
琥珀 松井恭
うちの藪は深山なり 千村ユミ子
神社で出会った木々 田中由紀子
光を効率よく求めて生きるつる植物 柴田規夫
モッコウバラとヒマラヤザクラ 服部早苗
志賀直哉と赤城の躑躅つつじ 小林正明
花のきょのいろいろ 古川克彌
桜の園芸文化 鈴木泰
動物を利用してタネを散布する植物 柴田規夫
お餅とカビ 森江晃三
危ない!お豆にご用心 川本幸子
風を利用してタネを散布する植物 柴田規夫
山椒の力 いつも緑のとまと
土佐で見たコウゾの栽培 米山正寛
大伴家持の愛した花 カワラナデシコ 安田尚武
「シアバターノキ」とブルキナファソ 松井恭
白い十字の花、ドクダミの魅力 柴田規夫
いずれアヤメか 三輪礼二郎
すみれの花咲く頃 川本幸子
シマテンナンショウの話 臼井治子
セツブンソウ(節分草) 森江晃三
ハイジとアルプスのシストの花 松井恭
年賀状 再び 永田順子
開閉するマツカサ 小野泰子
和の色、そして、茜染めの思い出 柴田規夫
いわしゃじんを毎年咲かせよう 川本幸子
知らないうちに 逸見愉偉
ボタニカル・アートのすすめ 日名保彦
ハマナスの緑の真珠 志田隆文
恋する植物:テイカカズラ 古田満規子
マメナシを知っていますか? 服部早苗
桜を植えた人 伊藤登里子
春の楽しみ 鯉渕仁子
みゆちゃんのわすれもの 山岸文子
遅くなってゆく年賀状 永田順子
イソギクは化石のかわりに 古川克彌
イノコズチの虫こぶ 清水美重子
ヒマラヤスギの毬果 小野泰子
私たちのくらしと海藻 川本幸子
河童に会いに 松井恭
カラスビシャクを観察して 志田隆文
何もかも大きい~トチノキ~ 三輪礼二郎
キンラン・ギンラン 横山直江
早春の楽しみ 豊島秀麿
キンセンカ、ホンキンセンカ 佐藤久江
カラスウリの魅力 小林正明
イチョウ並木と精子 森江晃三
コスモスに秘められた物語 下田あや子
「蟻の火吹き」の語源について 志田隆文
新しい植物分類 豊島秀麿
サルスベリ(猿滑、百日紅) 宮本水文
小松原湿原への小さな旅 松村文子
野生植物の緑のカーテン 小林英成
江戸の文化を伝えるサクラソウ 黒子哲靖
工都日立のさくら物語 ―大島桜と染井吉野― 鯉渕仁子
ニリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属) 佐藤久江
能楽と植物 川本幸子
サカキの冬芽と花芽 古川克彌
ケンポナシみつけた 永田順子
セイダカアワダチソウの話 逸見愉偉
ヒガンバナ、そしてふるさと 森江晃三
いにしえの薬草‘ガガイモ’ 服部早苗
トリカブトの話し 三輪礼二郎
ツユクサ、花で染めても色落ちしてしまう欠点を逆利用!柴田規夫
アサギマダラ 横山直江
「思い込み」の桜 田中由紀子
常磐の木 タチバナ 清水美重子
柿とくらし 三島好信
植物に親しむ 小林正明


TOPに戻る