クズはマメ科の多年草で、可憐な花を短い穂状につけ、花だけを見るとなかなか美しい植物ですが、つる性で庭などに入りこまれると根絶するのが大変で、雑草として嫌われることがしばしばです。ただ、葛粉を取ったり葛布を取ったりと、有用な面もある植物です。以下に葛粉について調べたときのことを記します。
クズの根を金槌のようなものでたたき、水を入れた水槽にそれを入れて、上に浮いたゴミや下に沈んだゴミを除き、水を蒸発させて、残った白い粉が葛粉です。
しかし、これではまだ夾雑物があるので、この白い粉をまた水に溶かして上下の不純物を除去して、さらに純度を上げていきます。これを何回か行うことによって葛粉が取れるのです。
実際にこのようにして葛粉を取ったことがあるので、葛粉生産の工程はほぼ分かっていました。それでも、生業として行っている生産者がどのような規模でどのように行っているのか知りたくて、何十年も前に奈良県の吉野まで出かけていきました。葛粉といえば吉野葛。奈良県の吉野がよく知られているので、思いたったが吉日とばかりに夜行バスに乗り奈良へ。早朝5時頃に奈良に到着。こんなに早くに連絡するのは悪いし、朝食を食べたくても店が全く開いていないため、生産地のある吉野方面行きのバスの始発が来るのをただ待つだけでした。
2~3時間経ったでしょうか、ようやく到着したバスに乗り、吉野へ。
吉野には葛粉を売っている店がたくさんありますが、
生産しているところが分からず、店で葛粉を1つ買い、生産している場所を聞いてみました。すると、吉野は吉野葛で知られているけど、生産しているところは規模がそれほど大きくないので、大宇陀に行くよう勧められました。葛粉を販売している店の多い吉野の町並みを一通り歩いた後、約20㎞離れた大宇陀へ足を延ばしました。
大宇陀には大規模に葛粉を生産しているところが2か所あるようですが、その日は、1か所はご主人が外出中のため見学させてもらうことはできず、もう1か所の生産者のところを見学させてもらいました。ただ、その日は残念ながら大きな水槽で、ゴミを沈殿させる作業の時間で、他の工程は見られずじまいでした。説明いただいた内容から、生産工程は予想どおりでしたが、規模がすごかったのを覚えています。それに、クズの根の太さにびっくりです。見本として置かれていた根は特に太いものかもしれませんが、直径で20cmはあったでしょうか。私が遊び半分に葛粉を採っていたものの直径にして10倍、断面積にしたら100倍はあるような太さです。
ただ、クズの根は最近、といっても私が訪れたのは何十年も前のことですが、奈良近辺では取れなくなり、九州から取り寄せているとのことでした。もっとも、当時でも少し輸入に頼っていたようですので、今ではほとんど輸入しているのかもしれませんが。思い立ったらすぐに実行できた過去が懐かしくまた羨ましく思う今日このごろです。
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(2024年7月掲載)
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