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みどり花コラム
サイカチ(皁角子)

昨年11月某日、10数年ぶりに御茶ノ水に訪れました。駅も周りのビルも高くなり美しく、久しぶりの御茶ノ水の変貌に少し戸惑いましたが、御茶ノ水橋口改札の向かいにある駐在所の脇道を北の方に進むとなだらかな坂道となり、見慣れたサイカチの大木が1本立っているのを見つけ、安心しました。

 

しかし、驚いたことに1本しか見当たりませんでした。10数年前に訪れた際には数本あった筈でそれ以前には皀角坂さいかちざかという名前の通り、サイカチの木が並木となっていたことを想像します。しかし1本でもサイカチの樹木に出会えたことにほっとし、皮細工のようなさやを拾ってみました。振ってみるとカラカラと音を立てます。

 

皀角坂

皀角坂

サイカチのさや

サイカチのさや

 

 

植物は子孫を残すために必死に生きることで知られています。サイカチの堅い果皮には14〜15個の光沢のある種が収納されています。タネをしっかり抱えこんだサイカチの果皮は風雨に耐えるための強度を保ちつつ、土に帰る時がくればその命を次の世代へと繋げます。

 

サイカチの種

サイカチの種

 

葉は羽状複葉、樹木のわりには細かな小葉です。サイカチの最も注目すべき特徴の一つは、枝が変形したトゲです。その形状からは危険を感じますが、漢方薬として利尿剤や解熱剤に使われるなど、私たちにとっての大切な資源でもあります。さらに特徴的なのは、大型の豆果ができることで知られ、この豆果はサポニンを含み、その豆果を石けんの代わりに使用することができます。コラムを書く際いつもお世話になるAさんから教わった、豆果を使用した石けん水の作り方をご紹介します。

 

『よく水洗いしたさやをハサミなどでちぎり、ひたひたの水に一晩浸け置きます。一晩経った茶色の水に、さやの内側をていねいに揉み出します。完成です。』

 

サイカチの葉

サイカチの葉

 

サイカチのトゲ(提供:大阪市立長居植物園)

サイカチのトゲ
(提供:大阪市立長居植物園)

 

余談になりますが、私が30年ほど前にイスラエルを訪れた際に、日本のサイカチとそっくりさんの樹木に出会いました。添乗員さんが「イナゴマメ」と見せて下さったさやが、日本のサイカチのさやとそっくりなのです。少し捩れたブーメランのような形をしていました。

 

このイナゴマメは、新約聖書「ルカ15-11」に登場する放蕩息子の譬え話に登場する植物です。日本のサイカチと同じマメ科です。また中東やアジアでは、天秤で宝石を計る分銅にイナゴマメが使われているようで、宝石の重さを表す単位「カラット」の語源として知られています。茶色のつやつやした日本のサイカチの種と、イスラエルで見かけたイナゴマメの種がそっくりでした。

 

 

イナゴマメ 実(提供:大阪市立長居植物園)

イナゴマメ 実(提供:大阪市立長居植物園)

 

緑花文化士 松井 恭

(2025年7月)

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サイカチ(皁角子)
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