公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
みどり花コラム
神社で出会った木々

家族の趣味につきあっているうちに、私自身がすっかりハマってしまったこと。それは神社巡りです。神社って、なんて自然度が高いんでしょう。そして木がある。非日常の祈りの空間で厳粛な気持ちになることも魅力ですが、素直に「うわ、この木、大きい!」とか、「何、この木? 雰囲気、独特!」と感動し、楽しめることも魅力です。

たとえば、北茨城の酒列磯前神社さかつらいそさきじんじゃ。恥ずかしながら、タブノキの自生があるのを知りませんでした。参道のタブノキ並木の、曲がりくねった枝ぶり、なまめかしいと言ってもおかしくない木肌。それだけで異空間に迷い込んだようで圧倒されました。

 

神秘的な雰囲気の酒列磯前神社のタブノキ

神秘的な雰囲気の酒列磯前神社のタブノキ

 

栃木県小山市の安房神社。ここの杜は、なんと自然林だというのです。平地の自然林で何本ものモミがそびえるさまは、感慨深いものがありました。

コナラは、北関東の里山を代表する美しい木です。葉裏が白く、風が吹くと翻り、山に波を立てます。白い波頭が斜面から谷、中腹から麓へとまぶしく移ってゆきます。コナラはどこにでもありそうで、意外にも神社には少ないのですが、佐野市の露垂根神社つゆしねじんじゃの東には、懐かしいたたずまいのコナラがありました。

同じく、佐野市賀茂別雷神社かもわけいかずちじんじゃの奥宮に至る山道には複数のホオノキがあり、晩夏の夕暮れの光の中で、大ぶりの葉むらが透けていたのが印象に残っています。

 

天蓋のような賀茂別雷神社のホオノキ

天蓋のような賀茂別雷神社のホオノキ

 

筑波山神社ではブナ。男体山から女体山に向かう山道にありました。訪れたのは晩秋だったので、もう葉を落とした木も多かったのですが、地衣類の付着した木肌といい、枝ぶりといい、風格を感じました。

 

女体山に向かう途中で出会った風格のあるブナ

女体山に向かう途中で出会った風格のあるブナ

 

日光市瀧尾神社に至る山道も素敵です。山道の途中には、サルオガセでしょうか?地衣類が垂れ下がる木や、背の高いトチノキもありました。沢には谷地坊主の株がみられ、梅雨時に歩いたときは、時々ヤマビルが降ってくるのに閉口しましたが、樹冠の空気がどことなく霧っぽくて、しいんとした感じが厳かでした。ホオノキや、カツラの大木もありました。

 

日光市瀧尾神社の山道にある背の高いトチノキ

日光市瀧尾神社の山道にある背の高いトチノキ

 

忘れられないのは、そう、カツラです。鹿沼市の加蘇山神社の奥の宮への参道に、千本かつらと呼ばれている2本のカツラの木があるらしいのです。樹齢は千年ともいわれています。それを見ることがずっと憧れでした。一度、カツラは無理でも、せめて本殿までは行ってみたいと出かけました。ところが、午前中というのに、道半ばで突然の雷鳴。直後に集中豪雨。山の奥に向かっていく車道は少しずつ狭まっていくようでした。ただでさえ不安になっていたところ、雨は降り続き、すさまじい勢いで雨水が流れ出し、何とその道路は川のようになってしまったのです。本当に、とんでもない時に来てしまったと思い、結局は断念することにしました。やっとの思いで平地にたどり着いた時、山の上には青空が!ああ、でも、もう引き返す気にはなれませんでした。ずっと憧れで、またまたさらに、遠い憧れの木になってしまった千本かつらなのです。

千本かつらの写真を見ると、根元にたくさんの細い幹が集まっています。野木町にある野木神社のイチョウもそうでした。1本の木が何本にも見える・・それが高じたら、1本で森みたいになるんだろうな、と思います。どこかの神社に、そんな木もあるかもしれません。出会ってみたいものです。

 

加蘇山の千本カツラ (写真提供:鹿沼市教育委員会)

加蘇山の千本カツラ (写真提供:鹿沼市教育委員会)

 

 

緑花文化士 田中 由紀子

(2022年8月掲載)

 

区切り線
過去記事一覧
活躍広がる日本発のDNA解析手法 植物の”新種”報告がまだまだ増えそう!
地に咲く風花 セツブンソウ
稲架木はさぎに会いに
クリスマスローズを植物画で描く
カラムシ(イラクサ科)
園芸と江戸のレガシー
植物標本作りは昔も今もあまり変わらず
カポックの復権
オオマツヨイグサ(アカバナ科)
森の幽霊? ギンリョウソウ
ジャカランダの思い出
水を利用してタネを散布する植物
都市緑化植物と江戸の園芸
スノードロップの季節
枯れるオオシラビソ 蔵王の樹氷に危機
シモバシラ
葛布くずふの話
琥珀
うちの藪は深山なり
神社で出会った木々
光を効率よく求めて生きるつる植物
モッコウバラとヒマラヤザクラ
志賀直哉と赤城の躑躅つつじ
花のきょのいろいろ
桜の園芸文化
動物を利用してタネを散布する植物
お餅とカビ
危ない!お豆にご用心
風を利用してタネを散布する植物
山椒の力
土佐で見たコウゾの栽培
「大伴家持の愛した花 カワラナデシコ」
「シアバターノキ」とブルキナファソ
白い十字の花、ドクダミの魅力
いずれアヤメか
すみれの花咲く頃
シマテンナンショウの話
セツブンソウ(節分草)
ハイジとアルプスのシストの花
年賀状 再び
開閉するマツカサ
和の色、そして、茜染めの思い出
いわしゃじんを毎年咲かせよう
知らないうちに
ボタニカル・アートのすすめ
ハマナスの緑の真珠
恋する植物:テイカカズラ
マメナシを知っていますか?
桜を植えた人
春の楽しみ
みゆちゃんのわすれもの
遅くなってゆく年賀状
イソギクは化石のかわりに
イノコズチの虫こぶ
ヒマラヤスギの毬果
私たちのくらしと海藻
河童に会いに
カラスビシャクを観察して
何もかも大きい~トチノキ~
キンラン・ギンラン
早春の楽しみ
キンセンカ、ホンキンセンカ
カラスウリの魅力
イチョウ並木と精子
コスモスに秘められた物語
「蟻の火吹き」の語源について
新しい植物分類
サルスベリ(猿滑、百日紅)
小松原湿原への小さな旅
野生植物の緑のカーテン
江戸の文化を伝えるサクラソウ
工都日立のさくら物語 ―大島桜と染井吉野―
ニリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)
能楽と植物
サカキの冬芽と花芽
ケンポナシみつけた
セイダカアワダチソウの話
ヒガンバナ、そしてふるさと 
いにしえの薬草‘ガガイモ’
トリカブトの話し
ツユクサ、花で染めても色落ちしてしまう欠点を逆利用!
アサギマダラ
「思い込み」の桜
常磐の木 タチバナ
柿とくらし
植物に親しむ


TOPに戻る

公園文化ロゴ2