庭に植えられる中国南部原産の落葉樹で、最近は公園の木や街路樹としても使われます。
幹は滑らかで「猿滑」の名があり、夏の間赤い花を咲き続けることから「百日紅」の別名もあります。白や紫、絞りの花もあります。
花の美しさ、花期の長さにちなんだ昔話が幾つかあります。朝鮮の伝説では、昔海岸の
漁村に、水難を防ぐため、村の娘を竜神に捧げる習慣がありました。ある年、長者の娘が選ばれ、最後の化粧を終え、海より来る竜神を待っていました。その時、この国の王子が
船で通りかかり、娘から事情を聞き、竜神と戦って負かしてしまいました。王子と娘はそこで相愛の仲となりましたが、王子には使命がありましたので、百日後にここに戻ると約束して、立ち去りました。娘にとって百日は千秋の思いで、百日を待たずして悶死してしまいました。百日目に戻った王子は、娘の死を知り悲しみました。娘の墓に生えたのがサルスベリで、百日の間、花が咲き続けているのだと言うことです。
漁に出たまま戻らぬ父親を、丘の上で火を焚いて待つ娘が、赤い花のサルスベリになったと言う昔話もあります。この木は、日当りが良く肥沃な土地で大きく育ちますので、このような物語が生まれたと思われます。
サルスベリは五月に新葉を出し、夏に花を咲かせ、十月には紅葉して葉を落とし始めます。四季の変化がはっきりしていて、都市に彩や季節観をもたらす優れた樹木と言えます。
芥川龍之介はこの落葉期間が長いことに気が付いて、「朝寝も好き、夜も早く寝てしまう、木が横着な人間と同じく、腹立たしく思えることがある。」と書いています。しかし、
サルスベリは暖かい地域の木で、冬は休眠して寒さをしのいでいるのですから、これは迷惑な話です。
この話は『上原敬二著・樹木大図鑑』を参考にしています。
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(2018年7月掲載)
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