一昔前まで、群馬県など北関東のほとんどの農家では6月、7月の頃庭に植えている木に実る梅の実で梅干しを作ったり梅酒を漬けたり忙しく梅仕事をしていました。その合間にいつも作っているものがありました。
それは、やはりどの家の庭にも植えられていて梅と同じ頃に緑の実を着け始める山椒の未熟果を梅仕事の余った焼酎で作った山椒の実の焼酎漬けです。飲んだり食べたりする為の物ではありません。緑色の未熟の山椒の実が焼酎に漬かって茶色くなる8月頃からその効力が発揮されます。さて何に使うのかといえば、実から沁み出た成分をたっぷり含んだ焼酎を皮膚に塗布して虫よけに、また運悪く刺されてしまった時にはかゆみ止めとして用いるのです。昔ながらの民間療法ではありますが、これが本当に良く効くのです。
山椒の実にはサンショオール、サンショアミド、キサントキシン、ゲラニオール、リモネン、タンニン等の有効成分が含まれているそうで、特にゲラニオール、リモネン等には昆虫忌避の作用があり、サンショオール キサントキシン(両方とも山椒のピリピリ成分)タンニン等の麻痺作用そして爽やかな山椒の香りが焼酎のアルコールでスウッとする清涼感と相まって、売薬と同じ位の効力を感じさせてくれます。昔の人はそんな成分のことなど知る由もなかったけれど経験的にその効果を認めたということなのでしょう。でもいつ山椒を焼酎に漬けること考え出したのか、それを塗ると効果があることをいつ知ったのか、考えてみれば不思議なことですね。
今は色々な虫よけ剤やかゆみ止めがありますのでこんな薬はおばあさん達のおなぐさみ、といったところでしょう。でもアレルギーとか副作用などは調べてもらわないと判らないことではありますが、山椒の実を漬けた焼酎を虫よけとして、小さな子供からお年寄りまで気軽に使ってきました。夏から秋にいやな虫から守ってくれる、身近にある物で作られる家庭薬として見直してあげても良いのではないでしょうか。
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(2021年10月掲載)
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