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みどり花コラム
クリスマスローズを植物画で描く 豊島秀麿

花の写真を撮るのが趣味で、写真をもとに図鑑で名前を確認していました。しかし、複数の写真を見比べても確認できないときがありました。植物画を描き始めて気が付いたのは、花をきちんと見ていなかったということでした。見ようとしなければ見えないものがあるのです。「あなたの家の階段は、何段ありますか」と聞くと、答えられない人が多くいるのと同じです。見慣れた花でも、雌しべ、雄しべ、花弁、萼片などを数えていない場合が多いものです。実物通りに描く植物画は、見ようとしなければ見えないものまで描くことになります。

 

植物画を描くときは、まず、その植物を調べます。クリスマスローズはキンポウゲ科ヘレボルス属の多年生の植物です。多くが有毒で汁が皮膚につくと炎症を起こすことがあります。私の家には、白い花と、赤紫の花の2種類のクリスマスローズがあります。白い花は名前のようにクリスマスに近い季節に蕾ができてくるので原種のヘレボルス・ニゲルの系統、赤紫のものは早春といえる季節に咲く、ヘレボルス・オリエンタリスの系統のようです。早春にならないと咲かないものをクリスマスローズと呼ぶのは変ですが、日本ではヘレボルス属のものはみなクリスマスローズと呼ぶようです。花びらに見えるものは萼片が変化したもので、本来の花弁は、蜜腺に変化して雄しべの周りを取り囲んでいます。普通の花のように緑の萼片に包まれていないため、蕾のときから綺麗です。花が古くなって本来の花弁である蜜腺が落ちても萼片が変化した花びらは残るので、花の寿命は長いのです。切り花にするときは蜜腺が落ちてからの方が、花がしっかりして長持ちするそうです。

立ち上がった茎に葉をつける有茎種か、付けない無茎種か、花の大きさや葉の大きさ、葉脈や鋸歯はどうなっているか、など様々なことを考慮しながら絵を描いています。植物画を描くと、見慣れた花でも知らなかったことが沢山出てきて驚かされます。知識が増え、植物の世界が広がります。

 

 

緑花文化士 豊島秀麿

(2023年12月掲載)

区切り線
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