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みどり花コラム
森の幽霊? ギンリョウソウ 三輪礼二郎

この植物をはじめて見たとき、大抵の人は驚きの声をあげるに違いありません。森林の薄暗いところに、全身真っ白な、鱗のようなものに包まれた、不気味な姿をしているのですから。

 

幽霊草人目に付いてしまひけり(西村しげこ)

 

前身真っ白!まるで幽霊のようなギンリョウソウ

前身真っ白!まるで幽霊のようなギンリョウソウ

 

ギンリョウソウ(銀竜草)の名は、鱗片葉に包まれた全体の姿を竜にみたてたところから来たもので、ユウレイグサ(幽霊草)あるいはユウレイタケ(幽霊茸)とも呼ばれています。うなだれた花をつけた姿は、掲句のように人目を引かずにはおきません。

夏の季語でもあり、角川俳句大歳時記には次のような解説文が載っています。

「イチヤクソウ科1。山地の樹陰に生える菌根植物で高さ10センチ前後。葉は鱗状で茎に貼りつくように互生しているが、茎も葉も銀白色。六、七月頃茎の頂に苞葉に包まれた純白色の五弁花を一個下向きにつける」

この植物の最大の特徴は、全身真っ白、つまり葉緑素を持たないところにあります。葉緑素を持たないということは、光合成を行っていないということです。何故それが可能なのかというと、菌根2の作用によって、地中の腐葉から養分を得ているからなのです。このような植物を腐生植物といいます。他にシャクジョウソウやツチアケビなどが知られています。

 

姿が僧や修験者の持つ錫杖(シャクジョウ)に似ていることから名づけられたとも

姿が僧や修験者の持つ錫杖(シャクジョウ)に似ていることから名づけられたとも

 

シャクジョウソウは、ギンリョウソウと同じイチヤクソウ科で、よく似た姿で、よく似た環境に同時期に生えています。この名前は淡黄褐色の全身を、錫杖に見立てて付けられたものです。

腐生植物とよく似た植物として、寄生植物が思い浮かびます。例えば、ヤドリギやネナシカズラ。ヤドリギは葉緑素を持ち、自ら光合成を行いつつも、寄主から水や養分を吸い上げる半寄生植物であり、ネナシカズラは葉緑素を持たず、すべてを寄主にたよる全寄生植物です。腐生とか寄生とか、植物の様々な生き方を見るとき、そのしたたかさに驚くほかありません。

 

 

※1 現在のAPG分類体系では、ギンリョウソウ、シャクジョウソウともにツツジ科に分類されている。

※2 菌根とは「菌類との複合体となった根。菌糸が高等植物の根に共生して形成される。養分の相互補給などが行われている。」(広辞苑)

 

緑花文化士 三輪 礼二郎

  (2023年6月掲載)

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