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みどり花コラム
小松原湿原への小さな旅
コバイケイソウ

コバイケイソウ

新潟県、苗場山の麓にある小松原湿原では、木道のまわりに、たくさんの山野草が点在し、短い夏には一斉に花を咲かせます。

中越地震の翌年の6月に、夫と訪ねました。バスを降りると、夫は、砂利道を石車にも乗らずにスタスタと歩いていきます。だんだん斜面が急になってきたように思えたのでそう言ったら、「一生懸命歩きなさい」と言われてしまいました。ごもっともです。そんな私を励ますように、小梅蕙草(コバイケイソウ)がつぼみをいっぱいつけて立っていました。斜面の上の方を見ると、灌木の間に緑のかたまりがありました。「ああ、あったよ」と、思わず大きな声で言ってしまいました。下から見てもそれはそれは見事です。みずみずしい茎があり、その上に大きな葉っぱがあり、そのまた上に小さな葉っぱがあって、細い二股の茎の先に小さな白い花が黄色いしべをもってやっと現れるというわけなのです。これが山荷葉(サンカヨウ)です。今まで歩いた道より2メートルしか左に入っていないのに、これで終わりなのかな、もっとあるはずだと思っていたら、先をゆっくりと歩いていた夫が「ほーら、いっぱい咲いているがね」と言うのが聞こえました。そこは、お日様が当たって明るくて、やや平らに見えました。白根葵(シラネアオイ)の群生です。風が吹くとだめになりそうな淡い紫色の花びらが震えていました。

私は、自分の好きなものが目の前にあると、気が違ったみたいに大喜びをしてしまい、いつも夫にあきれられます。
あんな大きな地震の後でも、草花たちは大地に根を張って、太陽に向けて葉を伸ばして生きています。儚げに見える花のたくましさに、胸がいっぱいになりました。

(緑花文化士 松村 文子) 2018年6月掲載

サンカヨウ

サンカヨウ

シラネアオイ

シラネアオイ

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