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みどり花コラム
うちの藪は深山なり 千村ユミ子

街通りから今の場所へ引っ越して家を建てた時、周りは田畑で目立つ木も草も無かった。雑木林に住みたかったので、まわりにエゴノキ数本、ネムノキ、ウワミズザクラなどを植えた。

 

数年で鳥の置き土産のアケビが生え、カマツカが生え、山葡萄の一種エビヅルまで生えてきていよいよ藪になって、今では秋になるといろいろ収穫できる。アケビが今までで一番なった年は30数個ほど穫れ、垣根にまでぶら下がった。実を啜って、皮は味噌炒めにして食べたが食べきれなかった。

 

これまで最高で30個ほど実を付けたアケビ

これまで最高で30個ほど実を付けたアケビ

 

ウワミズザクラは越後ではアンニンゴと言って若い蕾を塩漬けにして食べ、実は果実酒にする。とても香りがいい。熟した実の果実酒はやや香りが落ちるが、ワインのようなきれいな色になる。

我が家のアンニンゴ(ウワミズザクラ)

我が家のアンニンゴ(ウワミズザクラ)

 

我が家のアンニンゴ(ウワミズザクラ)カマツカは白いかわいい花が咲いて秋には赤く熟し、果実酒にするとオレンジ色がかった酒になる。アンニンゴほどではないが、やはりバラ科の実だからか杏仁きょうにん香がある。

 

カマツカは秋に赤い実をつける

カマツカは秋に赤い実をつける

 

友だちに苗を貰ったナツハゼは黒く熟す。日本の野生のブルーベリーだそうな。ブルーベリーの数倍のポリフェノールを含むという。果実酒は疲労回復に効くと農業雑誌に体験談が出ていた。

 

「黒い真珠」とも呼ばれるナツハゼの実

「黒い真珠」とも呼ばれるナツハゼの実

 

ナツハゼを使った果実酒

ナツハゼを使った果実酒

 

山に住む友達がサルナシ(こくわ)の枝をくれたので挿し木したら付いて、これもよく実るようになった。いよいよ深山なみ、いい藪になってきた。サルナシは深い山へ行かないとなかなかない果実で、猿が木のうろに溜めて酒を醸したのはこの実だという言い伝えあり。やわらかく熟した実を端からちゅっと吸い込むのはおもしろく、甘酸っぱい珍味だけど、調子にのって食べすぎると舌が荒れる。

 

子供の時、県外へ養女になって出て以来、ずっと恋しかった魚沼の雑木林。そこに住みたいという願いは、結婚して新潟県に戻り、望んだ以上の雑木林、というか「藪」を手に入れて実現した。

 

春は、一冬雪の下になったエゴの実を食べに、つがいのキジバトが来る。

 

うちの藪は深山なり

うちの藪は深山なり

 

緑花文化士 千村ユミ子

(2022年9月掲載)

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