
以前、干支にちなんだ植物の絵の年賀状について書かせていただいたことがありますが、これはその後日譚です。
干支の絵の年賀状は、どんな植物にするかを考えて、その植物を捜すという過程が一番楽しく、それが決まるとほっとして、年末になるまで手をつけないのが生来無精者の私です。2020年は子年なのでネズミムギ(イタリアンライグラス)にしようと2019年の春に決めました。
これにはとても良く似た植物があって、ホソムギ(ペレニアルライグラス)といいます。ネズミムギは小穂に芒がありますが、ホソムギにはありません。私は、イタリアのネズミにはヒゲがあるとおぼえています。5月から7月の散歩の時、道端で穂を摘んでは「これはネズミムギ、これは違う」とよりわけていましたが、芒があるような、ないようなものもあって、これは後に何かの本で「ネズミホソムギ」と命名されていると知って納得しました。
さて、ネズミムギも集まったし、ドライフラワーにしたり、押し葉にしたりして蓄えたので、これにインクをつけてペタリとスタンプして写しとり、後はコピーすればいいと簡単に考えていましたが、年末になっていざ取りかかってみると、この植物はインクの乗りが悪く、うまく写しとれない上に、それをコピーすると何だかわからなくなってしまいます。水を敷いたり色々悪戦苦闘しましたがうまくゆかず、結局一枚一枚手で描くはめになってしまいました。
30枚の年賀状を全て描き終えたのが2月29日でした。家族からは「それはもう年賀状じゃないよ」と言われながら、せめて2月の消印にしたいと29日に投函しました。このコラムのお話をいただいて、ネズミムギの写真と撮ろうと捜しに行って愕然としました。あんなに沢山あったのに、道路が拡張されて1本も生えていなかったのです。長い芒があっても、小穂の形は細長いもの、ずんぐりしたものと色々でした。
ところで、来年は丑年、カマツカ(別名ウシコロシ)にしようと思っています。私の散歩コースでは、みんな伐られてしまって、このカマツカが最後の1本になってしまったので、記念に葉っぱの形だけでも残しておきたいと思ったのです。道路際の田んぼの畦道に植えられているのですが、ひどい扱いを受けていて、折られたり車にこすられたり・・・。それに、近い将来、道路の拡張の為、伐られる運命にあります。そばを通る時はいつも「がんばっているね。」と声をかけています。お正月早々コロシという名前はふさわしくないかもしれませんが、このカマツカにエールを送りたくて決めました。
2022年の寅年には、ヌリトラノオを見つけたので、もう安泰と思っていたのに、この春出版されたシダの本によると、私の見つけたのはどうやらトキワシダだったようで、また振り出しに戻り、
楽しい植物捜しはまだまだ続きます。
▼みどり花コラム 遅くなってゆく年賀状
https://www.midori-hanabunka.jp/midori?term=m4188
緑花文化士 永田順子
2020年12月掲載

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