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生きもの小話
夏の闇の恐怖、その後、風通し良く 

うんざりするような夏の暑さも後半の頃。扉の向こう側は真っ暗な闇。

 

ギイっと扉を開けると…。ざわざわとそしてうごめく何か!!

 

きゃー!

 

 

もう10年以上も前のことです。当時、国営武蔵丘陵森林公園で、私はボランティアさんたちと一緒に、野草の保護や雑木林の育成などを行っていました。ボランティアさんの熱心な取り組みにより作業で必要となる道具や資材が増えて行きました。ちょっとした着替えができるスペースもなかったため、これまで使っていなかった四阿の倉庫を本格的に使おうということになりました。そうと決まれば、大掃除です。私と同僚の2人で、箒やらビニール袋やらを各々手に持って、公園の倉庫に向かいました。

 

知ってましたよ。きっと何かいるんだろうって。気持ち悪かったですもん。なんとなく気持ち悪くて使ってなかったのに、道具が増えたので仕方なく使うことにした四阿の倉庫。

そのころの私は、昇格したばかりでした。「できる係長」ってところを同僚に見せたい!

私が先頭を切って倉庫の扉を開けて中を確認し、安全確認をしてから同僚を招き入れて掃除しようと思っていました。

 

現場となった四阿 扉の向こうに何かがいる??

現場となった四阿
扉の向こうに何かがいる??

 

埃っぽくて、風雨にさらされた扉は、やはりなんとなく気持ち悪くて、ドアノブを回すのもためらわれました。意を決して息を飲み、倉庫の扉に近づく。一歩二歩。扉を開けたら、なーんだ何もなかったねって…。イメージは大事。三歩、四歩、五歩。扉の前に立って、せーのっ!

 

ざわざわ。ざわざわ。

あっちでぴょーん!こっちでもぴよーん!

 

きゃ~~ でた~

何かいるって思ってたけど、ちょっと、たくさんいすぎ。

 

その数に圧倒され、無意識に重心が後ろへ

体を立て直そうと脚とお尻に力を入れた時、軽やかなサウンドが

 

ブチブチブチッ。

???

 

 

何今の音?そう思うと同時に、臀部に気持ち良い解放感がありました。お尻がスース―する。

なぜ?という問いとともに、こみ上げる恥ずかしさ。カッコよい係長はどこへやら。まさか、まさか。職場で!ましてやここは、お外。

 

どうする?どうする?落ち着こう、まずは確認。おそるおそるお尻に手をやってみると、ああ~。やっぱり全開です…。扉を開ける際、怖くて力みすぎたのです。怖くて力んで負荷のかかった私の臀部のズボンの縫い目は、耐えられなかったのです。闇の恐怖に。

 

扉の向こうでは、四阿の住人たちが、元気にぴょんぴょん大暴れ。私の背後は、同僚のいた空間が一歩、いや半歩、引いたように感じました。こうなると、怖いのは闇でも大量に跳ね回る奴らでも、ズボンのお尻が破けたかも!でもなくて同僚の視線。振り返って同僚と目が合い沈黙。ダメか?と心で問う私(何がダメかは分からない)。見つめ合う2人。揺れる瞳。一瞬なのに時が止まったようでした。その後、堰を切ったように大爆笑する同僚。本当に恥ずかしい、でも笑ってくれてよかった。知らないふりはもっときつい。引き続き、大量の跳ねる奴らは、ぴょんぴょん飛び跳ねて大騒ぎの様子でしたが、大笑いした後は、闇も跳ねる奴らの怖さも全くなくなっていました。

 

笑いとハッピーな時間をくれる昆虫 カマちゃん

 

 

さて、ぴょんぴょん闇の中で跳ね回っていたのは、この子です。カマドウマは、身を隠せて狭くて暗い、そしてじめじめしたところを好む地味な昆虫です。陰気な場所で暮らす生態やその見た目、想像以上に高く飛ぶ姿から不快害虫とされ、トイレに出現することもあることから、便所コオロギと呼ばれることもあります。しかしながら、カマドウマは、ゲジゲジのように頭に落ちると禿げると言われるなど(迷信か?)、危害を加えたり、農作物を食い荒らすような悪さはしません。

 

長い手足。

人間の身長に換算すると約50階建てビルの高さまでジャンプできる脚力。

エビのようにしなやかな体とボーダー模様の靴下。

言葉にすると悪くない。怖くない。

 

皆さん同じかもしれませんが、私の幼少期の思い出のほとんどは、地味な昆虫たちとのたわむれです。家ではGを素手で触り、噛まれることもしばしば。家の周りの塀に巣をつくるジグモにハマり飼育する家族とともに、わりと家で過ごすことが好きな幼少時代。田んぼで捕まえたオタマジャクシを玄関に置きっぱなしにし、翌朝カエルを大量発生させ、烈火のごとく叱られたはずなのに、それ故に叱られた恐怖でその後の記憶が飛ぶ子供でした。

 

身近な昆虫は、楽しい記憶とともに人生を豊かにしてくれます。カマドウマは、闇に潜むちょっと怖い地味な生き物。でも私にとっては、風通しの良くなったお尻に大きくガムテープを貼り、事務所に戻った思い出とともに、仲間と大笑いした楽しい身近な昆虫です。

 

 

キーワード: カマドウマ、不快害虫
川田 衣恵(かわだ きぬえ)
川田 衣恵(かわだ きぬえ)
一般財団法人公園財団 公園管理運営研究所
開発研究部 上席主任研究員
Project WILDエデュケーター
Growing Up WILDエデュケーター
 
1975年神奈川県生まれ。
ゲゲゲの鬼太郎と、夏場のTVで心霊番組をよく見て育ったためか、大人になっても暗闇や不思議なものが好き。Project WILDエデュケーター、Growing Up WILDエデュケーターといいつつも、資格を活かしきれない生臭坊主。それでも、カマドウマのいる国営武蔵丘陵森林公園で環境学習を担当したことにより、子供たちが身近な自然や生きものに触れることの大切さを実感。現在は、広く公園文化を発信するための「公園文化WEB」運営を担当。
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