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私たちのくらしと海藻 川本幸子
海松(ミル)<br> 写真提供:千葉大学 海洋バイオシステム研究センター 銚子実験場

海松(ミル)
 写真提供:千葉大学 海洋バイオシステム研究センター 銚子実験場

をご存じでしょうか。夏の渚で見つけた緑色のビロードみたいな海藻。それが海松です。現代ではめったに食べられないのですが、古くはおなじみの食材だったようで朝廷に献上されていました。その姿から有職文様として海松文があり、装束をはじめ種々の工芸に生かされています。更にその色は海松色という伝統色になりました。昔の人の美に対する感覚におどろかされます。

 

 

 

海に囲まれたわが国では、食材として海藻は欠かせません。こんぶ・わかめ・てんぐさ・のり・ひじき・もずく・あらめなどが食卓にのぼらぬ日はないでしょう。おいしいばかりか食物繊維やミネラルたっぷりで私たちの健康に役立っている海藻ですが、アジアの一部地域の人々しか消化できないのだと聞きました。私たちは本当に恵まれていますね。

 

 

 

ところで、海藻の用途は食用ばかりではありません。例えば、伝統工芸による壁の土はつのまたなどの煮た汁でこねて作ります。国宝の建築も海藻がなくては作れないのです。製塩にはほんだわらを重ねて海水を掛け、それを焼きます。歌に詠まれる「藻塩焼く」とはこの作業を指します。またふのりは絹ののりづけに欠かせませんし、昔は髪を洗う時にも使われていました。変わった用途としてはを駆虫薬として広く用いたことでしょうか。現在、食用以外の使われ方として最も一般的なもの。それは寒天培地かもしれません。

 

 

 

てんぐさから作られる寒天をベースにしてシャーレを入れ、培養しているようすは誰しも目にしたことがあるはずです。世界じゅうの研究機関や医療機関でてんぐさは役立っているのです。

 

 

今日も海藻の利用についてさまざまな研究が進んでいます。画期的な用途が発見されるのも遠くないと期待されるところです。

 

 

 

 

緑花文化士 川本幸子

(2019年8月掲載)

 

てんぐさの天日干し

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