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みどり花コラム
ヒガンバナ、そしてふるさと 
樹林地など半日陰に生育するヒガンバナ

樹林地など半日陰に生育するヒガンバナ

ふと思い浮かぶ日本の秋の風景。田圃にイネが色づき始めて、その畦に真っ赤なヒガンバナの列。鮮烈な赤です。季節は秋のお彼岸。

ヒガンバナは日本で一番異名が多い植物だといわれています。標準和名としてはヒガンバナです。マンジュシャゲ―曼珠沙華はインドのサンスクリットのマンジュシャカの漢音訳といわれています。ただインドのマンジュシャカの花は赤でなく、白い花だといいます。本州、以南、四国、九州に分布します。死人花、幽霊花などの異名で、あまり歓迎されない感じがあります。各種の言い伝えも日本各地にありますが、有毒植物だというほかに、この花の激しいとも見える赤色、秋の彼岸に唐突に花だけ咲くような性質よるのかもしれません。

この植物の故郷は中国南部あたりだといわれていますが、いつ、どうやって日本にやってきたかはわかっていません。イネが渡来したころ来た史前帰化植物と思われます。

この植物は三倍体のため種子を作って繁殖することができません。繁殖は球根によります。一説に、この球根が海流に乗って日本にたどり着いたというものがあります。だとすると、まず球根が海に浮くことが必要でしょう。球根だけでは浮くことは難しいのですが、枯れた葉を付けた状態だと浮くことがあります。また海水の塩分に耐えなければなりません。実験では20日ほど海水につけた球根が生きていけるということがあり、中国南部から九州まで、海流に乗って条件が良ければたどり着けるということはありうるということです。この説が正しいかどうかはわかりません。球根が何らかの作物の株に混ざって来たかもしれません。

帰化植物は嫌われ者が多いのですが、外国に行ったとき、路傍に日本では「帰化植物」といわれる植物が生えているのを見ると、「お前の故郷はこんなところだったのか」と声をかけたくなります。こうしたことを考えてみるのも一つのロマンではないかと思います。

 

緑花文化士 森江晃三

2017年09月掲載

 

■参考文献
栗田子郎(2002):ヒガンバナの博物誌 研成社
北隆編集部編(1993):秋の花いろどり(Flower Catalog) 北隆館
北嶋広敏(2009): 緑の雑学事典 グラフ社
ヒガンバナの民俗・文化誌:http//www5e.biglobe.ne.jp/~lycoris/higanbana~minzoku.bunka-2.html

 

ヒガンバナの花の縦断面、花冠の部分を除いた子房の部分、中に胚珠(種子のもと)があることがわかるが結実しない

ヒガンバナの花の縦断面、花冠の部分を除いた子房の部分、中に胚珠(種子のもと)があることがわかるが結実しない

この球根が海を渡ったのでしょうか

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