もう40年以上前からになりますが、春先の天気のよい日になると、散歩の途中で毎年立ち寄るところが幾つかあります。初めはまだ畑や田圃がたくさんありのどかでした。ハルリンドウを見つけた時はとても嬉しかったものでした。タチツボスミレやジロボウエンゴサクがあちこちでみられ、楽しく散歩をしていました。そのころ見つけた花々の幾つかを挙げてみると、イチリンソウの群落が数か所、アズマイチゲも見つけましたし、オドリコソウやキンランも花を咲かせていました。アマナは畑の回りや墓地などに残っていて毎年花を見せてくれます。やがて、畑や田圃は住宅地に変わっていき、ハルリンドウやジロボウエンゴサクはみられなくなり、散歩の途中で立ち寄る所も一つ二つと減っていきました。
現在でも花が残っている所を考えてみると河川改修で真っ直ぐに直したために取り残された旧河川、古くから続く農家の敷地内に作られた墓地、畑の回りに取り残された草地など、開発から逃れた場所です。今では、どちらを向いても住宅地で外来種以外何もないように見えますが、それでも注意して観察してみると、あちこちに花が咲いているものです。先日は、交通量の多いアスファルトの道路から30mほど入った切り通しの崖にタツナミソウを見つけました。暖かくなって花を付ける頃がたのしみです。
これまで散歩の途中に楽しんできたキンランなど、絶滅危惧種として挙げられる植物の中には、人の生活が生態系の一部に組み込まれて成り立っていた里地、里山の植物が多くあります。人の生活形態が変わり、里地や里山が住宅地に変わって行くのは仕方ないのかもしれませんが、現在の人の生活の中における、里地や里山のもつ意味や役割をもう一度考えてみることも必要なのではないでしょうか。どのような形態が良いかは、人により考えは違うかもしれませんが残せるものは残して欲しいと考えています。
(緑花文化士 豊島 秀麿)
2019年3月掲載
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