
ヒートアイランド現象により年々厳しさを増す夏の暑さ、そんな中で、このところ見かけることが多くなった緑のカーテンは一服の清涼感を与えてくれる存在と言えるでしょう。
使われているのは、ニガウリ(ゴーヤ)、フウセンカズラ、アサガオなど、それはそれで悪くは無いのですが、私としては、野生種であっても都市化による厳しい環境の中で頑張って生きているクズ、ヤブガラシ、と言った植物にもぜひ活躍の場を与えてほしいのです。
両者とも葉が複葉で変化に富んでますし、花は派手ではないものの魅力が無いわけではありません。また、多年草なので一度植えれば毎年生えてきますし、丈夫で生育旺盛ときてます。よって手間もかからず、厳しい暑さをものともせずに見事な緑のカーテンを作ってくれることでしょう。
しかし実際にはなかなか一般には受け入れられないかもしれません。いざ実行すると「雑草なんか茂らせて」と苦情が来そうです。それは日本人の心のうちに栽培の歴史を持たず観賞の対象ともされてこなかった植物への根強い偏見がみられるからです。
そこで提案したいのが、まずは斑入りの種から導入することです。写真は家の近くで見つけたヤブガラシですが、クズにも美しい斑入りのものが発見されています。これならば受け入れられるのではないでしょうか。
なんといっても日本には斑入り植物栽培観賞の伝統があります。今から200年ほど前の江戸時代に水野忠暁と言う旗本が『草木錦葉集』なる世界に例を見ない斑入り植物図鑑を出版しているくらいです。
昨今の都市部には園芸植物と帰化植物があふれています。せめて公共施設の緑のカーテンだけでも野生のつる性植物にしてもらえないでしょうか。それで野生の植物を見直す機会を持つことができることを願わずにいられません。
(緑花文化士 小林英成) 2018年5月掲載

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