私が初めてその花に出会ったのは、イスラエルのガリラヤ湖畔です。
薄紫の花を満開に着け、すっくと立った一本の樹木でした。その時はその花の名(樹木の名)を知りませんでした。そうです。イエスが説教に歩かれた、そして一番弟子のペテロがお魚を捕っていたガリラヤ湖です。湖を船で横断し、「山上の垂訓」教会のある丘に登りました。懐かしい思い出です。
次に出会ったのは、娘が仕事でロスアンゼルスに行くことになり、3歳だった孫に付き添うため行動を共にした時のことです。ロスアンゼルスの空港に、ホテルの庭に、ディズニーランドの園内に、その花、ジャカランダ(ノウゼンカズラ科)は良い香りを漂わせ、文字通り咲き乱れていました。高木あり、若木もあり、幾本も幾本も。
英語の全く解らない私と、日本語もほとんど話せなかった孫と二人、ディズニーランドで半日遊びました。とても暑い日で、アイスクリームを食べたい食べさせたい一心で、ポップコーン売り場の女性に「アイスクリーム屋さんどこですか?」と、日本語で尋ねました。その方は解ってくださって、指を指しながら教えてくださいました。
私は夢中で、お礼も申し上げずその場を離れようとした時、抱っこされていた孫が突然「サンキュウ!」と言ったのです。びっくりです。日本語も話せなかった3歳の子が、と、思いがけないことで驚きました。御礼も言わず立ち去ろうとした私は、余裕が無かった、と言い訳も出来ず反省いたしました。まさに負うた子に教えられ、でした。6月の終わり頃から7月にかけての数日、ジャカランダ(和名:キリモドキ)を思う存分堪能することができました。
それから何年経ったでしょう。
あのすばらしいジャカランダが、温泉の町、熱海に咲いていたのです。6月の半ば、梅雨晴れの日に行ってみました。海浜公園通りの街路樹として、何本も植えられ花盛りでした。奇麗でした。落ちていた花がらを拾いながら友人と歩きました。
幸せなひとときでした。
緑花文化士 松井 恭
(2023年5月掲載)
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