
冬は咲く花も少ないので、植物の冬芽や葉痕をみる自然観察会が、多く開催されます。
過日、自然観察会を実施している知人から冬芽の話しをしたところ、サカキの冬芽について、参加者から「その冬芽は花芽なのか、葉芽なのか」と質問され、答えに迷ったと知らされました。ハナミズキやクロモジなどでは、冬期に来春開く花芽を見ることができますが、サカキでは見当りませんので、時間を追って調べてみました。
写真1はサカキの12月の姿で、今年伸びた枝の先端に、赤い鳥の爪のように曲った特徴的な冬芽がついています。日当りのよい枝では、所々にもう側芽がみられますが、花芽なのか葉芽なのか不明です。側芽は葉のある葉腋や、枝に直接的に着いていますが、直接的に着くところは、葉をつけなかった葉腋だと思います。
新年を迎え、4月下旬から5月初旬にかけて、写真2のように、先端の冬芽は新しい枝葉を伸ばし、葉腋についた側芽で枝葉となるものの根元には、先の丸い形をした花芽がつきます。枝葉のない所の側芽も3~4個の花芽となっていきます。
この花芽が開花するのは、6月の中旬頃写真3のように、5花弁のロウ細工のような、径15mmほどの厚みのある乳白色の花を、チャの花のように下向きに咲かせます。花にはほのかに香りがあります。花つきは大変よく、それ相当の果実がつくのですが、7月になると多くが落ちてしまい、成熟するものはほんの一部になります。
以上のように、サカキの爪のような冬芽は春に伸びて新枝になりますが、年内に花芽をつけず、冬を越して2年目を迎えて、花芽をつけることがわかります。
サカキは関東地方では、自生をみるのは難しいので、榊と国字で書くように神事に使われますので、神社の庭をさがすのがよいと思います。
緑花文化士 古川克彌
2017年12月掲載

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