エノキとかジュズダマ、カラムシ、ウマノスズクサ、アワブキ、コクサギ、カラスザンショウ、ハンノキ、などなど・・・。何の変哲もないこれらの植物たちを熱心に観察するようになったのは、昆虫の世界に造詣の深い友人ができてからのことです。わたしは、彼のことを「チョウチョ・ハカセ」と呼んでいます。
かなり昔のある秋のはじめ頃、庭のフジバカマの花に見知らぬ大型の蝶がやってきたのを見たときは、夢を見ているのかと思いました。地球上にこんなに美しい蝶がいるなんて!アサギマダラとの初めての出会いでした。ハカセによると、アサギマダラは夏の日本列島の南北を渡りする蝶で、ヨツバヒヨドリとかフジバカマの花での吸蜜が大好き。食草はキジョランとのこと。
他の地方ではどうなのか分かりませんが、わたしの住む広島県内ではキジョランの自生地は数えるほどしかありません。それも深い谷間の森の中です。日常、やたらに見かける植物ではないのです。でも、あの美しい蝶が卵を産んでくれるかもしれないなんてすばらしい。早速キジョランの短い枝を手に入れてきました。
キジョランは、艶のある丸っこい常緑の葉をつけたツル性の植物で、挿し木で容易に発根します。本葉3枚ほどの小さな苗を、支柱を立てて庭に続く裏山に植えました。移植したそのキジョランは、何年も同じ大きさのまま、遅々として成長しませんでした。ところが5~6年も過ぎたころから俄然勢い付き、隣に生えているヤブツバキにツルを伸ばし、這い上がり、よじ登り、ぐんぐん成長して厚みのある大きな葉を増やしていきました。
昨年の秋の終わりごろ、ハカセが裏山のキジョランにアサギマダラの幼虫がいるのを発見しました。幼虫は無事に越冬し、この春は我が家の敷地内から飛び立った個体がいるはずです。たった1本しかないのにアサギマダラのお母さんは、広い空からどうやってあのキジョランを見つけてくれたのでしょうか。
(緑花文化士 横山直江) 2017年5月掲載
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