ある日の夕刊の化粧品の広告が目に留まりました。1本の樹木の写真があり、その果実から採られる脂で作られた化粧品の広告とのこと。植物好きの私の興味を惹きました。
「シアバターノキ」というアカテツ科の樹木で、小さな鶏卵ほどの果実の核から採られる油脂が、昔から西アフリカ北部一帯の重要な交易品だったとのことです。名前の通り、ヨーロッパでは調理油として使われると知りました。
その化粧品はフランス製で、日本にも販売店があると知り行ってみました。
そして、ハンドクリームをひとつ買いました。チューブ入りのその品は比較的購入し易い価格だったのです。
使ってみて、そのなめらかさと、何より良い香りのすることがうれしくて(それはその樹木の持つ香りだと思うので)クリスマスプレゼントにと友人に、そして自分用に毎年いくつか求めています。
ところで、「シアバターノキ」は西アフリカ北部の何という国が主な栽培地なのでしょう。
調べてみると、「ブルキナファソ」という聞きなれない国だとわかりました。地図を開いてみます。小さな国がいくつかある中の、海に面さない三角形のような国。化粧品の会社はフランスですが、栽培地のこの国の主婦たちのお財布が潤うといいな、なんて考えました。
ある日、どこの国の開催でしたか、夏季オリンピックの入場式をテレビで見ました。日本やアメリカのように洒落た制服で身を包み、100人単位で入場してくる選手たちの中に、たった3人民族衣装の選手が入場してきました。多分、選手は3人の中のおひとりなのでしょう、民族衣装がいいな、と思っていると、彼らは「ブルキナファソ」の札を掲げていました…。
今年開催予定の夏季オリンピックで「ブルキナファソ」の選手が参加されるのかどうか、わかりませんが、シアバターノキとオリンピックを通して、ブルキナファソという国が身近に感じられたことは言うまでもありません。
緑花文化士 松井 恭
2021年7月掲載
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