六月。野原や水辺にさまざまな花が見られる季節です。この頃咲く花でよく似たものに、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタがあります。「何れ菖蒲か杜若」(広辞苑)という慣用句もありますね。
国語辞典によると菖蒲はあやめとも、しょうぶとも読むことができます。アヤメはアヤメ科の植物で大きな花びらをつけますが、ショウブはショウブ科(APG分類体系)で長さ5~6cmの穂状の花序をつけます。まったく違う植物なのに不思議です。
万葉集には、ショウブのことを、「あやめぐさ」と詠った歌がいくつかあります。この呼び方は、芭蕉の句『あやめ草足に結ばん草鞋の緒』からも、江戸時代まで続いていたことがわかります。ショウブには、その香りから、魔除けの効果があると信じられていたので、草鞋に結んで旅の無事を祈ったのでしょう。ショウブのことを「あやめ」と言っていた時代には、アヤメは「はなあやめ」と呼ばれていました。
ハナショウブはアヤメ科のノハナショウブの園芸種で数千種もあり、菖蒲園で見られるとおり、大変華やかです。カキツバタも同様にアヤメ科の植物で、アヤメ、ノハナショウブ(ハナショウブ)と混同されがちです。
この3種を見分けるには、まず生育地に注目することです。アヤメは山野に、カキツバタは水湿地に、ノハナショウブは山野や水湿地に生えるという特徴があります。また、アヤメの外側の花びらの基部には、黄色と紫色の網目状の模様がありますが、ノハナショウブのものは黄色の細長い三角状の斑になっています。カキツバタのそれは、白~黄白色の斑になって中央部まで伸びています。葉の幅にも違いがあり、カキツバタが最も幅広で2~3cm、アヤメが最も狭く1cm程度。ノハナショウブはその中間と言うことができます。
いずれアヤメか?ややこしいですね。
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(2021年5月掲載)
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