
今、高校生の孫が4才の時のことです。
用事がある娘に代わり、私が孫を幼稚園に迎えに行きました。
帰り道ポツポツ雨が降ってきたので、「合羽着る?」と孫に聞いたところ、かっぱと言う響きが面白かったのか、「かっぱ?」と聞き返され、「かっぱ、かっぱ」とはしゃぎます。
『あ、そうか、今の子は合羽とは言わないのか。』と思い「ごめんごめん、レインコートのことよ、かっぱは川にいるんだった」と言いました。それが変に受けて、「違うよ、海にいるんだよ、山にいるんだよ」と遊びながらの楽しい帰り道となりました。
その時です。私はふと思いつきで、「河童に会いに行ってみる?」と言いました。
それが娘と2人の孫、夫と私の5人で岩手県の遠野に行くきっかけになったのです。
新幹線で新花巻まで、そこからローカル線の釜石線に乗りかえ一時間ほどで遠野に着きました。
釜石線の車中で「ボクどこへ行くの?」と女性に話しかけられました。
「河童見にいくんだよ、キュウリ持ってきたよ」と孫。
「本当に遠野に河童いるんですか?」とお姉ちゃんの孫娘。
「いるよ~おばちゃん、ちゃんと会ったよ」と見事なお答え。
遠野では、人に聞かれたらそう答えるよう、それが旅人への優しさだとの決りのようなものがあるのでしょうか。
でも残念ながらカッパ淵で河童には会えず、キュウリはかぶと虫を捕ったという男の子にあげました。
さて、カッパ淵から帰る道の両側の畑に、きらきらお日さまの光を受け、輝くように果実の下がる植物に出会いました。
「あ、ホップ!」私は思わず足を止め眺めました。

黄緑色の果実がビールの香りづけに使われる
(写真提供:キリンビール株式会社)
ホップはカラハナソウと同じ種で、アサ科の雌雄異株、雌木の果穂がビールの香りづけに利用されます。図鑑で見て知っていましたが、実物を見るのは生まれて初めてです。植物好きの私が見とれていると、孫達も一緒にホップの畑を眺めます。きらきら輝くようなホップに見入る私たちに、畑で作業をしていた方が、遠野はホップの産地であること、この畑のホップは、キリンビールに納めると教えてくれました。
キリンビールといえば、私が子供の頃から父が好んで飲んでいたビール。思わず父を偲びました。
カッパには会えなかったけれど、私にとって遠野は、ホップとの出会いの地となりました。

高く這う柵を組んだホップの畑
(写真提供:キリンビール株式会社)
緑花文化士 松井 恭
(2019年7月掲載)

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