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第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)

第39回目は、国営アルプスあづみの公園(長野県安曇野市)で、公園内に生きものが集まる新しいビオトープを作った、国営アルプスあづみの公園堀金・穂高地区の椎名 春菜しいな はるなさんの「チャレンジ!」をお届けします。

<center></center><p>国営アルプスあづみの公園 堀金・穂高地区<br /> 市民協働・特農作物係 椎名 春菜さん</p><center></center>

国営アルプスあづみの公園 堀金・穂高地区
市民協働・特農作物係 椎名 春菜さん


堀金・穂高地区の里山文化ゾーンにビオトープを作る
造成工事前の農家風あずまや周辺(2019年)

造成工事前の農家風あずまや周辺(2019年)

国営アルプスあづみの公園(以下、本公園という。)は、3000m級の峰々が連なるアルプスの麓に広がる安曇野地域にあり、豊かな自然環境に恵まれた立地を活かして、観光、文化、環境学習などの多様なレクリエーション活動の拠点として、また、安曇野地域の環境保全の拠点として整備されています。
北の大町・松川地区は、乳川が形成した標高890~690mの扇状地のうえに広がる豊かな森林エリアに位置しています。一方、南の堀金・穂高地区は、烏川が形成した標高730~620mの扇状地のうえに広がる田園エリアに位置しています。
両地区とも、10%にも満たない緩やかな勾配の地形が公園の大部分を占めています。ここには、ニホンザルやニホンカモシカ、ツキノワグマといった大型のほ乳類が確認されるなど、計画区域内に生息する動植物は多種にわたっています。

 

本公園の堀金・穂高地区は、失われつつある安曇野の田園風景を保全・復元し、いつでもその景観にふれることができ、地域の自然・文化の多彩な魅力を短時間で最大限に体験できる拠点として、田園文化ゾーンと里山文化ゾーンの2つのエリアから構成されています。

 

しかし、里山文化ゾーンは、花の開花時期以外は、利用者が少ないことや生物資源を活かしきれていないこと等が課題とされていました。中でも懐かしの風景エリアの「農家風あずまや」は、懐かしの風景エリアの拠点として使えるように整備され、周辺には花修景等を試みましたが、水はけの悪いじめじめとした場所だったので、草花もうまく育ちませんでした。

 

そこで、「水はけが悪い環境なら、いっそのこと水を溜めて、生物の集まるビオトープにできるのではないか!」と2020年1月より環境整備を始めました。当初は、人手も少なく、多くの時間を要しましたが、市民参加型の調査イベントを実施したことによりゲンゴロウやイモリ等の希少生物の発見等の成果を出し、2021年3月よりビオトープの本格的な造成工事につなげることができました。

造成工事の様子(2021年3月)

造成工事の様子(2021年3月)


大盛り上がりを見せたいもり池
小学校の課外授業で生き物観察&ビオトープに住む生き物ゲームを実施(2021年6月)

小学校の課外授業で生き物観察&ビオトープに住む生き物ゲームを実施(2021年6月)

ビオトープ(愛称 いもり池)の造成工事が始まってからは、公園主催のイベントだけでなく、学校の課外授業や市役所主催の生きもの観察会にも活用されました。造成工事前の2020年度に懐かしの風景エリアで実施したイベントは、市民参加型の調査イベントが1回のみでしたが、造成工事開始後の2021年5月から8月までの3か月の間だけで計6回ものイベントを開催することができました。イベントの利用者数も前年度の17名から約8倍の135名の方々にお越しいただけました。

 

安曇野市自然観察会「国営アルプスあづみの公園で水の中に暮らす生きものたちの世界をのぞいてみよう」<br/>の開催(2021年8月)

安曇野市自然観察会「国営アルプスあづみの公園で水の中に暮らす生きものたちの世界をのぞいてみよう」
の開催(2021年8月)

 

学校の課外授業でも活用され、安曇野市の小学校には、生き物観察といもり池に住む生き物ゲームを組み合わせた環境教育プログラムを提供しました。市役所主催のイベントでは、安曇野市自然観察会として「国営アルプスあづみの公園で水の中に暮らす生きものたちの世界をのぞいてみよう」をテーマに、いもり池の生きものを探す体験イベントに活用されました。また、ふらっと立ち寄ってくださったお客様には、常備している網を渡して一緒に生きもの採集を楽しんでもらったり、大人がトンボを探しに来たりと、イベント以外でも「農家風あずまや」周辺を有効活用してくれるお客様が増えました。

 

さらに、今年は新規イベントとして、3Dプリンターを使った「ビオトープの生きものの模型色塗りイベント」を2022年6月19日に実施しました。おかげさまで予約も満員となり、参加できない方が多いことが今後の課題ではありますが、お客様に「農家風あずまや」のいもり池に棲む生きもの達の立体的な塗り絵を楽しんでいただけたと思います。参加してくださったお客様からは、“生きもの大好き”や“またやりたい!”といったお声をいただき、今後のイベントに期待が持てました。

「ビオトープの生きものの模型色塗りイベント」の開催(2022年6月)

「ビオトープの生きものの模型色塗りイベント」の開催(2022年6月)

 


これからも継続的にビオトープを活用するために
設置したバイオマストイレ(2022年7月)

設置したバイオマストイレ(2022年7月)

2022年3月に無事一つ目のビオトープ(いもり池)は完成に至りましたが、まだまだ課題や改善点が山積みです。例えば、イベント利用時に気づいたトイレが遠いことや足元のぬかるみが酷い箇所があること、イベント時以外ほとんど水に触れることが出来ないこと等があげられます。これらの改善するため、バイオマストイレを1台近くに設置し、ぬかるみ軽減のための土を移植し足場を整え、車いすの利用者も参加できるユニバーサルな「タッチプール」を施工しました。その他にも、いもり池という名前を定着させるため、看板を建てていもり池と生息している生き物を紹介しています。

 

また、ビオトープの管理やイベントを継続的に続けるため、どんなスタッフでも円滑に管理ができるように「生物管理マニュアルの作成」を進めています。これは今までのビオトープの活用方法やイベントの利用実態をまとめ、ビオトープ造成時に考えた基本方針に基づいた今後の展開の道標となるマニュアルです。さらに、団体利用を積極的に受け入れられるよう、団体の予約時に「ビオトープ利用」を選択肢に加えるといった、「団体利用受け入れマニュアルの作成」をスタートしました。現在は、本公園の堀金・穂高地区のHP上で「ビオトープの生きものライブラリー&団体利用」のご案内ページを掲示しています。

新設したタッチプール(2022年7月)

新設したタッチプール(2022年7月)

今後も定期的に生きもの観察会イベントを継続して続けるとともに、他にも一般参加型の「ビオトープ設置物の制作イベント」やビオトープと福祉を掛け合わせた「バリアフリーイベント」等、「農家風あずまや」のビオトープならではの独自性を持ったイベントの展開を進め、本公園やいもり池に愛着を持っていただけるよう、工夫を凝らしてお客様をお待ちしております!

 

ぜひ遊びに来てください!

 

 

 

 

 

 

 

現在のいもり池(2022年7月)

現在のいもり池(2022年7月)

 

 

椎名春菜さんは、Project WILDのエデュケーターでもあり、公園文化WEBの「生きもの小話」にて、イモリへの愛を語られています。そちらもぜひご覧ください。

 

■関連ページ

国営アルプスあづみの公園

ビオトープの生きものライブラリー&団体利用

野生生物ワークショップ

公園文化WEB-生きもの小話-I LOVE イモリ❤

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2022年7月掲載)

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