公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
公園管理運営チャレンジしました
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)

第23回目は、子供と大人が交流しながら学ぶ「諫早(いさはや)市こどもの城」で利用者の活動をサポートしている野中邦浩さんの「チャレンジ!」をお届けします。

諫早市こどもの城 野中邦浩さん
諫早市こどもの城 野中邦浩さん

1.大人も訪れる「こどもの城」
諫早市の市街地から車で20分、白木峰高原の自然の中にある「こどもの城」

諫早市の市街地から車で20分、白木峰高原の自然の中にある「こどもの城」

こどもの城は、2009年(平成21年)3月にオープンした長崎県諫早市の「児童健全育成施設」で、市が直営で管理しています。白木峰高原をいかした自然環境の中で、子供の主体的な活動や、大人と子供の交流を通して子供たちの生きる力を培うことを目指して作られた施設ですが、乳幼児や小学生だけでなく、思春期の中高生や大学生、主婦、退職された方まで、幅広い世代が訪れ、年間約10万人の利用者があります。

 

利用者は、遊具で遊んだり、イベントに参加したり、室内でスタッフや他の利用者と交流をすることができます。諫早市民を含むグループであれば、お誕生日会など子育てサークルの会合や部活動などでのワークショップなど、自分達の活動を実施することもできます。

更に、通称「ボランティア」と呼ばれる市民が赤ちゃんを抱っこしたり、音楽を演奏したり、自宅の花を館内に飾るなど、様々な活動をしています。

職場や部活動の研修にも使われる

職場や部活動の研修にも使われる


2.利用者とスタッフの積極的なコミュニケーション
土日祝日を中心に1時間程度実施するこどもの城バッティングセンター

土日祝日を中心に1時間程度実施するこどもの城バッティングセンター

こどもの城のスタッフは、会話や身体接触を伴う直接的なコミュニケーションを重視して利用者に接しています。こどもの城では、全ての利用者に、来館時に受付簿に名前を書いてもらいます。子供を抱っこしてきたお母さんがいれば、子供が泣いても躊躇せずスタッフが子供を抱っこして、お母さんにはゆっくり、スタッフとコミュニケーションをとりながら名簿に記入してもらい、一人の個人としてこどもの城を利用してもらいます。

 

子供を連れてきたけれど、スマホばかりみているお父さんがいれば、どんどん声をかけてお父さんにできる役割、例えば、こどもの城バッティングセンターのバドミントンの羽を投げる役などを担ってもらいます。最初は面倒臭そうにしていたお父さんも、だんだん羽根を投げるのに夢中になり、最後には他の利用者の子供とも楽しそうに遊んでくれます。スタッフは、利用者に対して遠慮せず、様々な形でコミュニケーションをとり、利用者同士が世代を超えて交流できるよう心がけています。

このため、こどもの城では、利用者が他人の子供の面倒を見たり、一緒に遊ぶなどの状況も見られます。

子供はスタッフやボランティアに預け、 大人同士で会話する 「子育てワンポイントコーナー」

子供はスタッフやボランティアに預け、 大人同士で会話する
「子育てワンポイントコーナー」


3.様々な活動(仕掛け)
こどもの城では「汚れるからダメ」等、遊びを制限しないため、子供たちの遊びはダイナミックになる

こどもの城では「汚れるからダメ」等、遊びを制限しないため、子供たちの遊びはダイナミックになる

こどもの城では、屋内でのイベントとしてロッククライミングのように壁を登る「10mの壁のぼり」、我が子と離れて子育てについて話し合う「子育てワンポイントコーナー」、屋外でのイベントとして自然と触れ合う「森のじかん」、“ちゃんばら”の練習をする「白木峰忍者塾」など様々な活動を実施しています。

 

実施内容は、参加する人と相談しながら内容を決めることもあります。毎年夏季に実施している「沢歩き・沢遊び」は、子供たちの自然体験活動の機会を提供する意図で企画したものです。しかし、企画を検討していく中で、参加者の中に、知り合いが水難事故で亡くなったという方がいらっしゃり、水難事故を防ぐことのできるような活動に参加したい、という意向があることがわかりました。そこで、子供たち自身が道具をバッグに詰める体験、万一に備えてのロープワーク、さらには、実施日までの普段の生活をリズム良く(規則正しく)行なうことの啓発まで行なうプログラムとしました。「沢歩き・沢遊び」というタイトルですが、内容は「沢を活用した親子リスクマネジメント講座」になり、現在では夏休みの人気の活動の一つになっています。

「沢歩き・沢遊び」のイベントでは、ライフジャケットを着用し、水辺での活動も行う

「沢歩き・沢遊び」のイベントでは、ライフジャケットを着用し、水辺での活動も行う


4.できる人が、できる時に、できることを、できるだけ
毎年12月に開催しているコンサートは、「共に」を表現するのにふさわしい場となる

毎年12月に開催しているコンサートは、「共に」を表現するのにふさわしい場となる

現在、こどもの城のボランティア登録者は250人ぐらいいます。ボランティアは1.5時間のリスクマネジメント研修を受ければ、誰でもなれることができるので、地域の方もいれば、県外の方もいます。毎日来るボランティアもいれば、1年に1回来る方もいます。しなければならない事、という決まりはなく、「自主性」「無償性」「社会性」「先駆性」の4つの考え方で活動を実施してもらい、私たちスタッフはそれをサポートしています(表1)。

 

ボランティアのある高齢の男性は、子供と走り回って遊ぶことはできませんが、赤ちゃんの抱っこなら一日中できます。その男性に赤ちゃんを抱っこしてもらったお母さんは、子供から離れ、「子育てワンポイントコーナー」に参加したり、イベントを開催したり、自分の活動をします。スタッフは、ボランティアも含めた利用者がお互いにコミュニケーションをとりながら、「できる人が、できる時に、できることを」、無理せずに「できるだけ」やってもらえるよう声かけなどを行っています。

 

冒頭にも述べたように、こどもの城は、子供たちの生きる力を培うことを目指して作られた「児童健全育成施設」ですが、子育てをする親やそれを取り巻く大人の心理的な負担を受け止める「心理的支援施設」でもあります。毎年12月には、スタッフによるコンサートを開催していますが、このコンサートには、大人だけを招待します。これは、こどもの城の運営を支えている人たちへの「感謝」がテーマであり、お互いに1年間の働きをねぎらい、他では味わえない一体感ができる良いコンサートとなります。

 
表1
 

今後もたくさんの人がこどもの城で自分の時間を過ごしていただけるよう、日常的な声かけ、イベント等を通して、利用者と様々な方法で積極的なコミュニケーションをとっていきたいと考えています。

 


関連ページ
諫早市こどもの城HP:https://www.city.isahaya.nagasaki.jp/cat_childcastle_c

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材時のものです。(2020年4月掲載)

 

※現在、こどもの城は屋外のさんぽ、自然散策などの屋外活動のみ再開しています。

あらかじめ申し込みが必要です。詳しくはホームページをご覧ください

https://www.city.isahaya.nagasaki.jp/post09/67585.html

区切り線
過去記事一覧
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


TOPに戻る

公園文化ロゴ2