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公園管理運営チャレンジしました
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)

第22回目は、2015年から雪を活用した公園の管理運営を行っている青山建設株式会社 中山公園事業部のスタッフ一同の「チャレンジ!」をお届けします。


1.冬場は雪に閉ざされる地域の公園
元プロの選手が指導に来る野球教室

元プロの選手が指導に来る野球教室

中山公園(山形県東村山郡中山町)は、2つの野球場、サッカーなどができる運動広場や年間を通して使える室内練習場等がある県営の運動公園です。

 

春や秋の気候の良い時期には、野球の大きな大会や運動施設を活かした大規模な野球・サッカー等の教室が実施され、夏には高校野球の山形県予選が開催されるなど、多くの利用者が訪れます。また、未就学の子供たちが遊べるような遊具や多目的広場もあり、土日を中心に家族連れでにぎわいます。

 

私たち青山建設株式会社は、2014年(平成26年)4月より指定管理者として中山公園の管理運営をはじめました。指定管理を実施するに当たり、地元の建設会社としてサービス向上、地域貢献をしていきたいと考え、ホームランマルシェやクリスマスイルミネーション等の地域活性化事業の実施、地元の幼稚園と協力して園内に花を植栽するなど地域に根ざした事業を実施しています。

 

しかし、中山公園は豪雪地帯にあり、11月になると雪が降り始め12月には雪が積もり、外での活動はできなくなります。近くにはスキーやスノーボードができるスキー場がたくさんありますが、まだスキーができない小さな子供がいる家庭では、そり遊びや雪遊びのためにスキー場まで行くのはとても大変です。

毎年12月半ばを過ぎると雪が積もる

毎年12月半ばを過ぎると雪が積もる


2.邪魔な雪を活用する発想
5名で約1週間かけて作成。<br/>用いた雪はおよそ800トン

5名で約1週間かけて作成。
用いた雪はおよそ800トン

一方で、利用者が少ないとはいえ、園内は、雪が降るごとに重機を用いて駐車場や主要園路の除雪をしなければならず、公園を管理する私たちスタッフにとっても雪は邪魔なものです。そこで弊社の代表取締役青山潤一は、雪を有効活用して地域住民の方々に楽しみながら運動不足を解消していただくことはできないかと考え、また冬期間の公園及び施設利用者の増加を目指して、雪でジャンボ滑り台を製作することを発案しました。

 

その発案を受けた私たち公園スタッフ一同は、駐車場の一角にジャンボ滑り台を制作することにしました。駐車場の車を停めるスペースと滑り台をすべる利用者の動線を考え、なおかつ、程よく滑る傾斜角度を考えながら自社にある重機3台を駆使してジャンボ滑り台と、幼児(2~3才)でも安心してそり滑りが楽しめる小さな滑り台を作りました。

初年度となる2015年は、高さ5m幅10m全長90mのジャンボ滑り台に、複数の人が一度に滑ってもぶつからないようにレーンを設けたり、レーンによって傾斜の角度を変えたり、登りやすいように階段を作ったり、試行錯誤しながらの制作でした。また、小さな滑り台の近くには雪遊びができるスペースも作り、少しでも多くの方に楽しんでいただけるよう工夫しました。

幼児も楽しめる小さな滑り台

幼児も楽しめる小さな滑り台


3.冬の定番の遊び場所になったジャンボ滑り台
幼児から小学生までの子供とその家族が主に利用しているが、公園の室内練習場を利用した後の中学生も男女問わず遊びに来る

幼児から小学生までの子供とその家族が主に利用しているが、公園の室内練習場を利用した後の中学生も男女問わず遊びに来る

ジャンボ滑り台を開放するまでに、スタッフ一同で何度も試走し、利用の仕方をシュミレーションしました。その上で、安全面を考慮してスキーとスノーボードの使用はお断りすることに決め、2015年2月1日(日)に一般開放しました。この日はあいにくの天気でしたが、ジャンボ滑り台作成中から近隣の幼稚園、小、中学校、コンビニや駅などに掲示してもらったポスターを見て楽しみにしていた地元の人約100人が来て、心行くまで滑り台を楽しんでくれました。特に、タイヤチューブの無料貸し出しは好評で、順番待ちの列ができるほどでした。

ジャンボ滑り台オープン後は毎日滑り台の状況をスタッフが確認し、積雪が多かった場合には雪を踏み固める作業、少ないときや気温の高い場合には雪を補充して手直しするなど、安全に楽しんでいただけるよう必要に応じて決め細いメンテナンスを実施しました。また、保育園、幼稚園はクラス単位の団体で遊びに来ることも多く、その際には危険防止のためにスタッフを毎回約5名配置しました。このように、「安全に楽しむことのできるジャンボ滑り台」として2月28日までの期間中、のべ1,000人以上の方にお越しいただきました。

ジャンボ滑り台終了後には、終了を惜しむ声がたくさん寄せられたため、翌年以降も1月になるとジャンボ滑り台を作成し、毎年2月に地元の方々にお楽しみいただいています。中山公園のジャンボ滑り台は今年(2020年)で6年目となり、地域の冬の顔としてすっかり定着しました。

 

年を経るごとに小さいジャンプ台の作成や、ソリ滑りができる場所の確保をしたり、安全対策として滑り台の周りにスノーポールを立て、進入禁止のロープを張って駐車スペースと離すなど、より安全に楽しく遊んでいただけるよう創意工夫を続けています。今年(2020年)は雪が降らず、残念ながら滑り台を制作することができませんが、今後も、スタッフ一同、アイデアを出し合って、多くの方にお楽みいただける公園管理運営をして参ります。

多人数で一緒に滑ることができるタイヤチューブは<br>人気が高い

多人数で一緒に滑ることができるタイヤチューブは
人気が高い


関連ページ

中山公園:http://www.yamagata-stadium.jp/

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材時のものです。(2020年2月掲載)

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