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公園管理運営チャレンジしました
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)

第3回目は、熊本市にある水前寺江津湖公園(以下、公園)でくまモンの地上絵で、熊本地震への支援に感謝の気持ちを伝えた一般社団法人 熊本市造園建設業協会(以下、市造協)の遠藤茂樹さんの「チャレンジ!」をお届けします。

(一社)熊本市造園建設業協会 水前寺江津湖公園管理事務所 遠藤茂樹さん
(一社)熊本市造園建設業協会 水前寺江津湖公園管理事務所 遠藤茂樹さん

ビオトープの管理をしていく中で、思い描いていた理想の形として、「適度に水中部分に草を残し 生物の隠れ家を作る」ことや「水中の観察がしやすいように通路際は草を排除し水面を開ける」こと等を考えて、5 月下旬から手鎌で地上部の草を刈ったり、根元から引き抜いたりしました。しかし、5月下旬からの草刈りでは、草が伸びすぎてしまい、根がある限りすぐに成長するため、頻繁に草刈りをしないと追いつかない状況でした。もっと早い時期から伐根除草が必要だったことを痛感し、この失敗を踏まえて、2021年のクサヨシの生育状況から年間の植物管理とビオトープ利用のスケジュールを見直しました。

今年も3月から植物たちとの壮絶な戦いを繰り広げており、皆様に快適なビオトープ空間を提供するため、日々奮闘しています。

 

伐根除草前後の様子(2022年3月20日)

伐根除草前後の様子(2022年3月20日)


地域のにぎわいをつくる「みなも祭り」
江津湖みなも祭りでの江津湖水上クルーズ

江津湖みなも祭りでの江津湖水上クルーズ

公園では、「江津湖の水と緑を「み」ん「な」で「も」っと楽しもう」という思いと公園の湖の「水面」をかけて2012年から毎年10月に「みなも祭り」を実施しています。高所作業車から地上絵をご覧いただく「くまモンの巨大地上絵」をはじめ、バーチャルフィッシング等の水や緑に関する体験ができるコーナー、地域の市民グループによる音楽演奏会、江津湖周辺のお店が公園内に集まる“江津湖マーケッツ”等を開催しています。

中でも「くまモンの巨大地上絵」は、高所作業車に乗って上空約12mから芝生の刈り込みによって図案を描画した地上絵(タテ約40m×ヨコ約60m)と江津湖の景色をご覧いただけるため、人気のイベントの一つとなっています。毎年8月からデザイン案を作成し、熊本県へデザインの申請を行った後、現地で位置出しを行い、石灰で線を引き、芝生刈込場所、刈込高さの確認した後芝刈りを行い、高所作業車から地上絵の確認・調整を行って9月末に地上絵は完成します。

江津湖みなも祭り2015でのくまモンの巨大地上絵

江津湖みなも祭り2015でのくまモンの巨大地上絵


熊本地震にあって
地震で崩れた護岸と倒れた柵(公園内)

地震で崩れた護岸と倒れた柵(公園内)

しかし、今年は4月におきた熊本地震の影響で、公園をメインの観覧場所とする熊本市主催の江津湖花火大会が中止となりました。公園でも、今年度のイベント実施の可否について公園の指定管理者である私達、市造協内で検討し、「みなも祭り」の実施についても検討することとなりました。

公園の管理棟がある熊本市東区は、前震が震度6弱、本震が震度6強でした。幸いお客様に被害はありませんでしたが、公園内に新たに水が湧く場所ができたり、湖の擁壁が崩落したり、園路に段差ができたり、管理棟のガラスが割れるなどの被害がありました。前震本震とも、地震が起きた直後に多くの市民が公園に避難してきました。いずれも駐車場は閉門していましたが、急遽開放して対応に当たりました。この時、公園は市民にとっての拠りどころであり、非常に重要な存在であることを改めて認識しました。

結局、公園内の被害がそれほど大きくなかったことや、夜間開催の花火大会とは異なり安全の確保が可能であること、何よりも被災地である熊本を盛り上げていくために「がんばれ熊本!江津湖みなも祭り2016」と題して開催することになりました。

断水のため、江津湖に水を汲みに来る市民

断水のため、江津湖に水を汲みに来る市民


地上絵でお礼を伝えよう
気を使った文字刈り作業

気を使った文字刈り作業

震災直後から、様々な支援を全国各地から頂きました。震災からの復興を頑張っていますというメッセージを全国に発信したいと思い、「みなも祭り」で4年間実施してきたノウハウがある地上絵を利用してはどうかと考えました。

これまでは、くまモンだけの図案だけでしたが、メッセージ発信のため、今年初めて地上絵に文字を入れることにしました。文字はしっかりと認識してもらわなくてはならないので、例年より多くのデザイン案を作成し、くまモンの使用許認可をしている熊本県にも何度か確認しながらデザイン案を決定しました。文字は、刈り間違えたら修正がきかないので、刈り取る場所と刈り残す場所を間違えないように十分注意しながら作業をしました。地上での作業だけでは全体像が見えてこないので、イベント当日同様に高所作業車を利用して上から確認しながらの作業となりました。

また、これまで、イベント当日は2人乗りのゴンドラの高所作業車を利用していたので、参加者数が限られていました。多くの人に見てもらうために、今年は大型のゴンドラの高所作業車を準備しました。その結果、家族や友人などと一緒に見ることができて、より多くの方に見て頂くことができました。皆さん、くまモンの巨大地上絵と江津湖の風景を楽しんでいたようです。今回は全国放送でも地上絵の紹介をしていただいたので、地上絵を目当てに関東や関西からも来園された方もいらっしゃり、5回目となる2016年の「みなも祭り」には約2万人のお客様にご来場いただきました。

地震からの復興は道半ばですが、今の熊本の姿を見に皆さんあそびに来てください。お待ちしています!

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2016年12月掲載

今年の巨大地上絵

今年の巨大地上絵

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