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公園管理運営チャレンジしました
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)

第6回目は、北海道札幌市にある国営滝野すずらん丘陵公園 滝野公園管理センター(以下、公園)で多くのお客様にお楽しみいただけるよう、苦労しながら「ヒマラヤの青いケシ」メコノプシス ‘グランディス’を育てている高橋理さんの「チャレンジ!」をお届けします。

滝野公園管理センター 高橋理さん
滝野公園管理センター 高橋理さん

カントリーガーデンに目玉となる植物を
チューリップが咲くカントリーガーデン

チューリップが咲くカントリーガーデン

公園では、2000年7月に「花と緑のある北のくらし」をテーマとしたカントリーガーデンがオープンし、スズランをはじめとする様々な花をお楽しみいただけるようになりました。北海道の花というと、ラベンダー、ライラック、ハマナス等が浮かぶと思いますが、公園では、他の公園ではやっていない、目玉になる植物をカントリーガーデンに植えたいと考えました。

ある時、カントリーガーデンを設計し、植栽計画を立てた(有)緑花計画の笠康三郎氏から札幌市内にあるナーセリーで「青いケシ」を育てているという情報を頂きました。「青いケシ」は西ヨーロッパから中央アジアにかけて自生する植物で、自生地の一つであるヒマラヤでも秘境でしか見られない「幻のケシ」と言われています。このケシは栽培方法が難しいと言われていますが、話題性や、青い花の美しさからカントリーガーデンの目玉としてふさわしいと考え、公園で「青いケシ」メコノプシス‘グランディス’とメコノプシス‘ベトニキフォリア’の2品種を栽培することにしました。

メコノプシス‘グランディス’

メコノプシス‘グランディス’


試行錯誤の栽培と公園ボランティアの協力
よしずによる日除け

よしずによる日除け

2001年5月に札幌市内のナーセリーから苗を購入し、公園内の高山植物のエリアである「峠の庭」に2品種36株を試験植栽しました。メコノプシスの生態、栽培方法については不明なことばかりで、植えた苗は次々と弱っていきました。そこで、自生地の環境や気候を考えた結果、日当たりが良すぎるのではないかと推察されたため、高木の陰になる場所「花人の隠れ家」へ移植したところ環境条件が良かったのか無事開花に至りました。開花した青い花を見た時は、ホッとすると同時に、青の美しさに感動した事を今でも覚えています。

開花はしたものの、「青いケシ」の栽培マニュアル等もなく、どんな土壌がよいのか、潅水はどのくらいの頻度であげればよいのか等、わからないことだらけでした。幸い、笠氏が公園のボランティアとして活動をされていたので、折に触れて相談することができ、夏によしずを設置して西日を遮ったり、積雪のある北海道で冬を越すために晩秋にたっぷり堆肥を施す等、手さぐりで「青いケシ」の栽培をしてきました。

「青いケシ」は、植栽から5年近く経った2007年頃からお客様から注目されるようになってきました。この頃、公園の花をお客様に案内するフラワーガイドボランティアが一部の花の維持管理作業をしてくれることになり、メコノプシスに対しても細かな手入れが行われるようになりました。これにより、2010年頃から株が充実し始め、厳しい夏も、積雪のある冬も8割以上の生存率で栽培を行うことが出来るようになりました。これらは笠氏の指導とフラワーガイドボランティアのおかげであり、この場を借りて感謝の意を表します。

フラワーガイドボランティアによる マルチング作業

フラワーガイドボランティアによる マルチング作業


滝野ブルーの質を高める
滝野生まれのビオラ「滝野ブルー」

滝野生まれのビオラ「滝野ブルー」

一方、当公園では、2013年頃から「青いケシ」だけでなく、ラベンダーやクロッカス、イングリッシュブルーベル、滝野公園で生まれた青いビオラ等、様々な青い花を中心に広報し、4月から7月に「滝野ブルー」としてお客様にお楽しみいただいています。これらの中で「青いケシ」は、1、2を争うほどきれいな青い花を咲かせますが、2013年の夏に、猛暑であったため夜間の潅水を長時間実施したところ、花弁に水が直接当たってしまった影響で花弁が腐って変色してしまいました。これを教訓に、現在では、夏の灌水方法と水分管理には特に気を付けています。また、花の色合いは、土壌pHとも関係があるようで、最近では、土壌のpH調整にも気を付けています。更に、当初植栽した2品種のうち、1品種は花弁の色がくすみがちで草姿も貧弱なため2011年からは青の発色が美しく花径も大きい「メコノプシス‘グランディス’」のみの栽培とし、より美しい青の景色をお楽しみいただけるようにしました。

しかし、ここ数年の夏の異常な暑さにより、札幌市内のみならず、道内のナーセリーでも「青いケシ」の苗立てが芳しくなかったため、この2年間は補植用の苗の調達が出来ませんでした。「青いケシ」の人気は年々高まっているため、今後は規模を更に広げるべく、追加植栽をしていき、この花の魅力をもっと多くのお客様に発信し続けていきたいと考えています。「青いケシ」は気難しい植物ですが、初めて公園で咲いた花を見た感動を胸に、これからも「青いケシ」の栽培に取り組んでいきます。

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2017年6月掲載

花人の隠れ家のメコノプシス

花人の隠れ家のメコノプシス

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