第2回目は、国営みちのく杜の湖畔公園(以下、公園)のふるさと村に人形道祖神「鹿島様」を展示した、みちのく公園管理センター 総務グループ 利用サービスリーダーの土方 敏彦さんの「チャレンジ!」をお届けします。
公園のふるさと村は、東北6県の古民家を移築・復元したエリアで、移築・復元した古民家と、古民家で使われていた道具の展示、民話語りや体験イベントを通して、昔の暮らしの知恵や文化を紹介しています。これら民俗文化紹介の一環として、東日本に伝わる人形道祖神をふるさと村に展示するため、2014年より準備をはじめました。
人形道祖神は、東日本の中でも秋田県に多く伝えられており、災いや自然災害、病気などを防ぐ守護神として村境にまつられています。このため、民俗文化紹介に加え、2011年に起きた東日本大震災への慰霊の意味も込め、ふるさと村の守護神として人形道祖神を設置したいと考えました。
人形道祖神は、地域によって姿形は様々なので、ふるさと村に展示するのにふさわしい人形道祖神を探すために、まず、秋田県を中心に現地調査し、次に、博物館の資料や人形道祖神についての文献による調査を行いました。最後に、国立歴史民俗博物館やワシントン市キャピタル児童博物館、NHK農業まつり等での展示事例を確認し、これらの調査を元に、「民俗的に価値があり古くから現代まで伝承されている」「観る人に強い印象を与える」という2つの点から秋田県湯沢市末広町に伝わる高さ約4mの「鹿島様」を候補に選びました。
展示する人形道祖神の候補は「鹿島様」に決まったものの、公園の周辺には「鹿島様」を作ることのできる人がいません。そこで、様々なつてをたどり、秋田県湯沢市末広町内会高橋征悦会長(2015年当時)を紹介いただき、会いに行きました。高橋会長からは、「鹿島様」は、町内会の有志で作っている神聖な神様であり、お金をもらって商売として引き受けるつもりはない。」と言われました。
また、町内会の有志は高齢の方が多く、「末広町内にまつる他にもう一体別に作るというのは大変な作業である」とのことでした。しかし、高橋会長を何度か訪ね、ふるさと村についての説明や、今回の展示が、ふるさと村を訪れる人々に秋田県湯沢市をはじめとする人形道祖神の民俗を知ってもらうためであること、東日本大震災の慰霊としても考えていることを説明したところ、高橋会長から「東日本大震災の被災地である宮城県の皆さんに喜んでいただけるなら、作ってみましょう。」と協力いただける旨のお返事をいただきました。また湯沢市に後援をお願いし、湯沢市まるごと売る課から、藁のパーツを作る場所やふるさと村までの送迎等の協力をいただくことになりました。
「鹿島様」を作るには、約120kgの稲藁と木彫りで作った面(顔)が必要になります。ふるさと村の「釜房ろばたの会」にご提供いただいた藁を11月に湯沢市まで運び、湯沢市内で伝統様式によりあらかじめ藁のパーツを作っていただきました。また、以前より釜神(かまかみ:宮城県を中心に伝わるかまどの神様)のお面展示で公園とかかわりのあった宮城県内の加美町木彫りの会の佐々木明氏に木彫りの面(顔)を12月から3か月かけて丁寧に制作いただき、それらを併せて、ふるさと村に設置することになりました。
「鹿島様」の設置は、3月10日に行われ、あいにくの強風となりましたが、湯沢市広末町内会と加美町木彫りの会、湯沢市まるごと売る課のみなさんの協力の元、約6時間かけて組立設置が行われました。最後は神様(「鹿島様」)にお神酒をあげて全員で完成を祝いました。
鹿島様の御披露目は、翌日の2015年3月11日の東日本大震災慰霊の日に行われ、「鹿島様」はふるさと村の写真撮影スポットとして多くのお客様にお楽しみいただきました。
「鹿島様」の展示に至るまで、人形道祖神の選定、制作協力者への制作依頼、強風の中の制作等、様々な苦労がありましたが、「鹿島様」制作を通じて知り合った湯沢市の皆さんと今も親しくさせて頂いている事や「鹿島様」をご覧になったお客様の「おおきいね~。」「すごいね~。」という歓声を聞くと展示して良かった、と思うと共に、「鹿島様」のパワーを感じます。「鹿島様」は、1年ごとに作り直す風習があることと、藁の傷みが進んだため、設置から約1年後の2016年4月に撤去しましたが、来年以降に再度制作したい、と考えています。
※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2016年10月掲載
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第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
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第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
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第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練(静岡県立森林公園)
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第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
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第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
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第23回 できる人が、できる時に、できることを(諫早市こどもの城)
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第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
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第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
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第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)