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第26回 地域と協働したプロジェクト

第26回目は、地域団体や市民と共に竪穴住居を復元するプロジェクトを実施している兵庫県立考古博物館の「チャレンジ!」をお届けします。

兵庫県立考古博物館 事業部長 髙瀬 一嘉さん <br/>建築中の竪穴住居の屋根に乗り、カヤを結束する竹製の針を手にしている
兵庫県立考古博物館 事業部長 髙瀬 一嘉さん
建築中の竪穴住居の屋根に乗り、カヤを結束する竹製の針を手にしている

中学生が発見した遺跡
「播磨大中古代の村」には竪穴住居と共に<br/>弥生時代の植生が復元されている

「播磨大中古代の村」には竪穴住居と共に
弥生時代の植生が復元されている

史跡おおなか遺跡(以後、大中遺跡)は兵庫県で一番小さい町、播磨町にある弥生時代の遺跡です。この場所はそれまでは普通の畑でしたが、1962年(昭和37年)に地元の中学生3人組が土器を掘り出したことで発見されました。大量の土器の出土にびっくりした彼らはそれを担任の社会の先生に鑑定を依頼します。その重要性に気づいた先生が新聞社に持ち込んだ結果、世間の知るところとなりました。

 

大中遺跡と命名されたこの遺跡は研究者や地域住民によって、保存運動が盛り上がり、工場予定地だったものを兵庫県が買い取り、遺跡公園として整備しました。現在は県立歴史公園「播磨大中古代の村」として隣接する兵庫県立考古博物館(以下、博物館)が環境整備をおこない、公開・管理しています。

 

博物館は兵庫県内の遺跡及び考古資料の調査研究を行っています。その成果を活用して、出土品を観覧できる展示の他に、触れたり試したり、発掘体験ができたりするハンズ・オン展示、考古学の調査成果を解説する講座、古代体験イベント「大中遺跡まつり」などを開催し、考古学の普及啓発に努めています。また、「播磨大中古代の村」の整備の一環として、博物館の学芸員、地域や関係団体と共に竪穴住居を造る「竪穴住居復元プロジェクト」を実施しています。

 

 

植栽されているドングリを紹介するマップは、<br/>イラストレーターの井上リエ氏の協力を得て作製した

植栽されているドングリを紹介するマップは、
イラストレーターの井上リエ氏の協力を得て作製した


自分たちで竪穴住居をつくる「竪穴住居復元プロジェクト」
職人の建てた竪穴住居は<br/>カヤもきれいにそろっている

職人の建てた竪穴住居は
カヤもきれいにそろっている

大中遺跡は、今から約1,800年前の庶民が住んでいた集落跡で、奈良県にある平城宮跡などとはずいぶん様相が違う遺跡です。これまでに100軒以上の竪穴住居跡が見つかっています。しかし、発掘調査からわかるのは、建物の地面から下の部分だけです。そのためやや時代は下りますが、古墳の発掘調査で出てきた家型の埴輪などを参考に、どんな建物だったのかを考えていかなければなりません。しかし、そういった一見面倒なプロセスこそが知的好奇心を刺激され、ロマンのある作業となっています。

 

また、実際に木を切り、穴を掘り、部材を組んでみてはじめて気づくことも多く、発掘調査で得られた資料を理解するのに大いに役立っています。また、博物館で地元の市民といっしょに竪穴住居を復元する活動を行うことで、地域と博物館への愛着が生まれることも期待できます。

 

このため、博物館では、2008年からため池の環境保全を担っている「いなみ野ため池ミュージアム」、里山林を保全している「NPO法人ひょうご森の倶楽部」、建築学科がある「国立明石工業高等専門学校」、博物館のボランティア「ひょうご考古楽倶楽部」などの市民と連携しながら実施する「竪穴住居復元プロジェクト(以下、プロジェクト)」を開始しました。

 

 

実際に作業をすると弥生人の苦労が偲ばれる(プロジェクトで建てた竪穴住居)

実際に作業をすると弥生人の苦労が偲ばれる(プロジェクトで建てた竪穴住居)

博物館のガイドボランティアの昔の暮らしの説明も、<br/>竪穴住居の中ですると理解が早い

博物館のガイドボランティアの昔の暮らしの説明も、
竪穴住居の中ですると理解が早い


材料調達から実施する竪穴住居づくり
屋根の材料となるカヤが生えている環境は<br/>少なくなりつつある

屋根の材料となるカヤが生えている環境は
少なくなりつつある

活動はまず材料の入手から始まります。

 

竪穴住居は住居の骨組みである柱や梁、桁や垂木などに、クヌギやコナラ、クリ、アベマキ等の木材が使われ、屋根には茅が葺かれていたことがわかっています。そのため、骨組みの木を山から切り出してくることを始めました。しかし、プロジェクト発足当初、どこの山にどんな木が生えているかということすら知りませんでした。

 

「NPO法人ひょうご森の倶楽部」に協力を仰いだところ、彼らの活動拠点に目当ての木があり、それを伐りだすことができるようになりました。彼らはチェーンソーを持っていますが、我々は手で切ってみました。本来は石斧を使うべきでしたが鋸を使いました。建築を専門に勉強している「国立明石工業高等専門学校」の学生に切ってもらいましたが、骨組みとなるほどの木を鋸で切るのは容易ではありません。さらに学生は大工道具を扱ったことがほとんどないので、道具の使い方(日本の鋸は引いたときに切れるなど)から勉強してもらいました。

 

次に、屋根の材料としてため池に生えているアシ(カヤ)を11月から1月の間に刈り取ります。そして、発掘調査で明らかになった住居のプランを地面に描き、30センチくらい掘り下げてそこから柱を立てて大枠を作り、最後に屋根を葺きます。

 

プロジェクトは、天候の具合等によって年間20回くらい活動できますが、毎回同じメンバーが来るわけではないので、作業の確認のために30分はレクチャーします。また、夏は熱中症対策として休憩をたくさんとるため、1回にできるのは3時間程度です。このため、おそらく弥生時代の人なら2週間程度で完成させたであろう竪穴住居を、我々は1年以上かってやっとこさ1棟作るのです。

 

 

切り出した木材は皮をむくなど処理をしてから使う

切り出した木材は皮をむくなど処理をしてから使う


プロジェクトの直面する課題
ゆがんだためメンテナンスが必要な入り口

ゆがんだためメンテナンスが必要な入り口

これまでに竪穴式住居を11棟復元しましたが、やっかいなのが維持管理です。竪穴住居は大体20年くらい保つのではないかと思って(考古学の人はだいたいみんながそれ位だと思っています)いましたが、それは、「実際に人が住み、毎日メンテナンスをされていれば」の話です。そうでなければ10年くらいしか保ちません。プロジェクト開始から12年たって、倒壊の危機に瀕している住居が何棟かでてきました。屋根に上って応急処置をしていますが、垂木が腐っているため屋根が抜け落ちる可能性があり、危険な状態です。

 

担い手の育成もあまり進んでいません。最初は面白そう、と多くの人が集まってきましたが、10年経っても同じ人が活動をしています。活動が長く続いていると、どうしても新しい人が入ってきにくい雰囲気が出てきてしまっているようです。12年分きっちりと高齢化がすすみ体力面からも世代交代していく必要があります。体験イベントなどで人を集めて作業を進めようとしても、そこに集まって来た人に任せられる仕事は最後の仕上げなど、ほんのちょっぴりで簡単な部分だけです。

 

継続的に活動出来る人をスカウトしてきたり、新しい人がプロジェクトのメンバーに入りやすい仕組みづくりが必要になってきていますが、簡単なことではありません。-竪穴住居づくりはひとづくり-これが最大の課題だと考えています。

 

公園を整備するのであれば、経費がかかっても専門業者に任せたほうが早くきれいに仕上がります。我々が行っているこのような事業は手間もかかりますし、なかなか進みません。

時に続けていく意味を問われることも多いのですが、考古学の発展にもつながり、活動を続けていくことによって地元の人たちも関心を持ってみてくれています。一緒にプロジェクトを実施している「国立明石工業高等専門学校」の学生や近くの子どもたちの中から、将来、プロジェクトを中心に担ってくれる人や博物館のスタッフとして活躍してくれる人が出てくれないかなあ、と期待しながら続けていきたいと思います。

 

 

プロジェクトには、高等専門学校の学生から<br/>市民ボランティアまで、老若男女が集まる

プロジェクトには、高等専門学校の学生から
市民ボランティアまで、老若男女が集まる


■関連ページ

兵庫県立考古博物館 ホームページ:https://www.hyogo-koukohaku.jp/index.html

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2020年7月掲載)

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過去記事一覧
第26回 地域と協働したプロジェクト
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ
第23回 できる人が、できる時に、できることを
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度
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第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園
第15回 公園の看板に一工夫
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第12回 生き物の面白さを伝える動物公園
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理
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第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」
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