公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
公園管理運営チャレンジしました
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)

第7回目は、公園の発生材の有効活用を目指す公益財団法人 神奈川県公園協会(以下、協会)の藤田 和宏さんの「チャレンジ!」をお届けします。

公益財団法人 神奈川県公園協会の「木の実木のまま」担当の藤田和弘さん(左)と<br>ボタニカル・ダイ担当の宮地知之さん(右)
公益財団法人 神奈川県公園協会の「木の実木のまま」担当の藤田和弘さん(左)と
ボタニカル・ダイ担当の宮地知之さん(右)

公園の発生材を活用する新事業を
木の実の産地の一つである相模原公園

木の実の産地の一つである相模原公園

私は、秦野ビジターセンターに配属されていた時に、公園の維持管理の過程で出てくる剪定枝や木の実を使ったクラフト教室をイベントとして実施し、参加された方が楽しくクラフトを作る姿をみていました。また、どんぐりやマツボックリ等を公園に遊びに来た子供たちがうれしそうに拾っている姿を見た事もあります。木の実は、クラフト教室などを通じて自然や植物に関心をもつきっかけになりますが、利用することが無ければ、落ち葉等と一緒に処分しなければなりません。

一方、2011年に協会全体で新たな事業を検討した所、「公園の利用促進するものをインターネットで販売する」ことに決まり、私はその担当になりました。秦野ビジターセンターに配属されていた時の経験から、木から落ちて清掃等で掃いてしまう木の実や剪定枝を販売してはどうかと考えました。その売上を公園の利用促進や「花とみどりのフォトコンテスト」等の公益事業に使うのであれば、当初の目的である「公園の利用促進」にも貢献でる上、発生材の有効活用もできます。販売に際して、公園管理者である神奈川県の確認をとり、インターネットで木の実を販売することにしました。

販売する木の実には、色を塗ったり加工はせず、駆虫処理のみを行うこととし、お客様には木の実の素朴さを楽しみ、緑や公園に親しみを持っていただきたいとの思いから、販売サイトに「木の実木のまま」と名付けました。

津久井湖城山公園等に常設されているクラフト教室

津久井湖城山公園等に常設されているクラフト教室


注文は北海道から沖縄まで
販売サイト「木の実木のまま」

販売サイト「木の実木のまま」

木の実の販売に当たり、協会が管理運営している公園のスタッフに相談したところ、各公園でクラフト教室等に使った余りを分けてもらうことになりました。そのため、まつぼっくりやマテバシイ、モミジバフウ等たくさん出る木の実、約10種が販売品目となりました。販売用の木の実を集めるため、神奈川県立保土ヶ谷公園等へ清掃作業を手伝いに行くと、担当者から「ここのドングリは、毎年、地元の保育園児が取りに来るから残しておく」と言われ、公園の利用状況を考慮にいれながらの採集となりました。

木の実を集めた後、必要に応じて熱湯処理等を行いました。どんぐりの中でも、マテバシイやクヌギ等は堅いため、長時間熱湯処理をしても大丈夫ですが、比較的軟らかいシラカシ、スダジイ等は熱湯処理の時間が長いと果皮(殻)が壊れてしまう等、試行錯誤をしながら、処理の方法、保管方法を検討しました。

木の実や注文サイトの準備が整い、2012年11月から販売サイト「木の実木のまま」をオープンしました。オープン当時には、協会のホームページと協会で発行している『かながわの公園歩きサポート情報誌 かながわパークナビ』に掲載しました。サイト開設から3ヶ月ほどはまったく注文がありませんでしたが、徐々にクラフト材としてドングリ等を求める方から注文が入るようになり、初年(2012年度)は10件ほど。その後は年に20~30件ほどの注文となりました。2013年9月には、地元東急ハンズ横浜店の担当者が「木の実木のまま」をご覧になり協会に声がかかりました。東急ハンズでは、2013年10月の横浜店リニューアルにあわせて、横浜店オリジナル商品「神奈川県産木の実」を販売したい、とのことで、協会から安定して供給できる木の実を選定して、東急ハンズ横浜店に木の実を卸すことになりました。東急ハンズ横浜店では、現在でも協会のマークを付けて、「神奈川県産木の実」販売しています。また、リニューアルオープンの時には、店頭で協会のスタッフが木の実を使ったクラフト教室を開催しました。

一方、2014年8月には、インターネットの質問サイトで、「この時期、どんぐりはどこで購入できる?」という質問に対して「木の実木のまま」のURLが紹介されており、驚くと共に、大変うれしく思いました。最近では、「家の周りには無い木の実が欲しい」と購入して下さる北海道の方や、毎年ドングリ等を購入される九州の福祉施設の団体さん等、様々な地域のお客様にお買い求めいただいています。また、注文の度に木の実に穴が開いていないか、カビが生えていないかをチェックし発送しているため、これまでクレームはほとんどありません。

東急ハンズ横浜店で販売している木の実

東急ハンズ横浜店で販売している木の実


新しい商品の開発
ボタニカル・ダイで染めたハンカチとバンダナ。右上の緑色の鮮やかなハンカチは、クロマツで染めたものです。

ボタニカル・ダイで染めたハンカチとバンダナ。右上の緑色の鮮やかなハンカチは、クロマツで染めたものです。

協会では、「発生材の有効活用」を目指して、木の実だけでなく、剪定枝や散ってしまう花びら等も活用し始めています。
2016年10月から、特殊なタンパクを用いて色鮮やかに染める「ボタニカル・ダイ」という方法を用いて、マツやヤナギの剪定枝を原料に鮮やかな色に染めたハンカチやバンダナを販売しています。今年4月(2017年)からは、大磯城山公園にオープンした旧吉田茂邸バラ園のバラの花びらで染めたハンカチの販売を始め、バラ園の評判と共に、ご好評をいただいています。
「木の実木のまま」では、公園の木の実を販売している事だけが注目されがちですが、木の実を使ったクラフトの提案や、発生材を原料にした染物を販売するなど、積極的に「発生材の有効利用」をしながら、「公園利用の促進」「公園の活用」を行う事業であるということを多くの方に知っていただきたいと考えています。

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材時のものです。(2017年8月掲載)

大磯城山公園の旧吉田茂邸のバラ園

大磯城山公園の旧吉田茂邸のバラ園

区切り線
過去記事一覧
第50回 公園散策を楽しめるセルフガイドマップ(新宿中央公園)
第49回 ステキな公園はスタッフの健康から「‘キラリ’健康プロジェクト」(国営みちのく杜の湖畔公園)
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(千葉県船橋市)
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練(静岡県立森林公園)
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる(株式会社日比谷アメニス)
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(東京都足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(諫早市こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


TOPに戻る