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第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)

第29回目は、四万十緑林公園しまんとりょくりんこうえん(高知県高岡郡四万十町)で園内の広場にピアノを設置し、公園に訪れた人に気軽に弾いて、音楽に親しんでもらう取り組みを行っている公益財団法人四万十公社 弘光 功典さんの「チャレンジ!」をお届けします。

窪川四万十会館と四万十緑林公園の管理運営を担当している 弘光 功典さん
窪川四万十会館と四万十緑林公園の管理運営を担当している 弘光 功典さん

「窪川四万十会館」がシンボル施設の四万十緑林公園
豊かな自然が後背に広がる緑林公園

豊かな自然が後背に広がる緑林公園

高知県南西部の四万十町にある四万十緑林公園(以下、緑林公園)はゴーカート場、アスレチック、野外ステージに加え、約500人を収容できるメインホール等を有した公共文化施設「窪川四万十会館(以下、四万十会館)」のある町の公園です。四万十会館では、四季折々、様々なコンサートや講演等が行われ、緑林公園のシンボルとなっています。

 

四万十会館には、メインホール常設のグランドピアノがありますが、多目的室やロビー、園内でも使うことのできるアップライトピアノを探していました。そこで、四万十町にある廃校・休校になった学校で眠っているピアノがあれば譲り受けたいと教育委員会に相談したところ、快く許可を頂くことができました。実際にピアノを見て周り、状態の良かった3台のアップライトピアノを今年(2020年)2月に譲り受けました。3台のピアノはそれぞれ、館内の多目的室やロビーで使う屋内用2台と、屋外に持ち運んで使う屋外用1台とに使い分けることにしました。

 

音楽イベントを行う野外ステージ。<br/>左奥に見える建物が四万十会館 

音楽イベントを行う野外ステージ。
左奥に見える建物が四万十会館 


屋外でも音楽を楽しめるストリートピアノを
ピアノは、専用の手作りの台車を用いて<br/>四万十会館職員2人で園内を移動している

ピアノは、専用の手作りの台車を用いて
四万十会館職員2人で園内を移動している

四万十会館では、メインホールでのコンサートだけでなく、ロビーや園内の野外ステージなどを活用して、音楽に親しめる様々なイベントを実施してきました。特に、屋外での音楽イベントは、とても気持ちが良く、園内に自由に弾けるピアノを設置したら楽しいだろうと思い、3年ほど前からストリートピアノの構想を練り始めました。世界各国の公共空間に置いてあるストリートピアノを参考に、企画を考えていたため、2月にアップライトピアノが四万十会館に来てすぐ、3月1日に野外ステージに口神ノ川(くちごうのかわ)小学校から譲り受けたアップライトピアノを試験的にストリートピアノとして設置することにしました。

 

ストリートピアノの設置に当たっては、ピアノが倒れて事故が起きることが無いよう、固定金具で取り付けることにしました。また、このピアノは前述のように屋外専用のピアノとしたため、普段は野外ステージ近くの倉庫に保管し、使うときにピアノ移動専用に作った台車に載せ、職員2名で地続きで移動させて設置することにしました。

 

ところが、四万十会館のSNS上で広報も行い、設置の準備も万全に済ませた実施2日前の2月28日、急遽、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止することに決まりました。

 

設置のたびにしっかりと固定されるピアノ

設置のたびにしっかりと固定されるピアノ


四万十会館だからできるコロナ禍の活動を
「55ピアノ~55分のピアノ独練会~」では<br/>他の楽器を持ち込んでピアノと共に演奏もできる。また、5人までの少人数での利用としている

「55ピアノ~55分のピアノ独練会~」では
他の楽器を持ち込んでピアノと共に演奏もできる。また、5人までの少人数での利用としている

新型コロナウイルス感染拡大防止のため3月には小中学校の休校が決まり、4月には緊急事態宣言が出され、四万十会館で予定されていたコンサートなども中止となりました。そこで、コロナ禍で演奏場所がなくなった町内のアーティストの活動支援として、また、外出自粛で「お家時間」を過ごしている人々が楽しいひと時を過ごせるよう、4月から6月にかけて月1回、四万十会館での地元アーティストの演奏を配信する「お家でコンサート」を無料で開催しました。 おかげさまで、多くの方にご覧頂くことができ、特に緊急事態宣言期間中に配信した「お家でコンサートvol.1」はメインホールの収容人数の倍以上の1,000人を超える方にご覧頂きました。

 

更に、9月からは、55分間、メインホールでグランドピアノが弾ける「55ピアノ~55分のピアノ独練会~」(利用料金2,000円)をコロナ対応の一環として実施しました。これは、これまで構想していましたが、ホールの空き状況等から実現することができずにいたもので、今回、メインホールの利用が皆無になくなってしまったのを機に、構想を練り直し、実施に至りました。

 


緑のステージで奏でる「森のピアノ」
森のピアノの脇に設置した看板には<br/>利用に関する注意事項も記載している

森のピアノの脇に設置した看板には
利用に関する注意事項も記載している

このように、コロナ禍でできることを試行錯誤しながら実施するのと平行して、ストリートピアノの企画を練り直し、ようやく9月下旬から実施することになりました。ストリートピアノという名前も緑林公園のイメージに合う「森のピアノ」とし、四万十会館職員でピアノに森をイメージしたイラストを描き、9月26日(土)から11月29日(日)の間の土日祝日の天気の良い日の10時から15時30分に設置することにしました。また、期間中に実施するイベント「月夜の森の音楽会(10月2日)」、「シェルシェ2020(10月24日)」などでも「森のピアノ」を使いました。設置時には、青空の下、たくさんの人が楽しくピアノを弾く姿が見られました。今年は11月29日までの設置となりますが、今後も、春と秋の気候のよいシーズンに設置を行っていく予定です。

シーズンオフには、じっくりとピアノの調整を行った後、町内の子供たちと一緒にピアノにイラストを描くワークショップを行い、地元の人からも親しみを持ってもらえるピアノに育てて行きたいと考えています。

 

 

今後も公共文化施設である「四万十会館」と、「緑林公園」のお互いの持つ特色を上手く掛け合わせて、自然豊かな環境で様々な文化が体験できる場所として、多くの人に楽しんでもらえるよう施設運営を行っていきます。

 

設置時には家族や友達と<br/>思い思いの音を奏でる姿が見られた

設置時には家族や友達と
思い思いの音を奏でる姿が見られた


■関連ページ

四万十会館Facebook https://www.facebook.com/shimantokaikan/

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2020年11月掲載)

 

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