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第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)

第12回目は、多摩動物公園で動物の魅力を伝える、公益財団法人 東京動物園協会 多摩動物公園 教育普及課教育普及係 係長 天野未知さんの「チャレンジ!」をお届けします。

多摩動物公園 天野 未知さん
多摩動物公園 天野 未知さん

世界初のライオンバスを走らせた動物園のパイオニア、多摩動物公園

森で暮らす習性により、高所に張ったロープを渡るオランウータン(オランウータンのスカイウォーク)。


正門のアジアゾウの像は撮影スポットとしても人気がある


多摩動物公園は、上野動物園に次ぐ東京都の第2の動物園として1958年に開園しました。ライオンの放飼場の中を来園者を乗せたバスが走る「ライオンバス(2018年6月現在は、ライオンバス発着場の耐震化に伴う工事のため休止中)」や1年を通してチョウが舞う昆虫生態園など、動物を楽しんでいただく様々な工夫をいち早く行ってきました。

私は、教育普及係に属し、広報や学校団体向けプログラム、子ども向け体験プログラム、企画展などの教育活動を行っています。企画展は年3~4回実施しており、年度当初に各企画展のテーマと担当するチーム(3~5人)を決めて進めていきます。企画展のテーマは新たに展示を開始した動物や動物園で取り組んでいる保全活動など様々ですが、年末から新年にかけて行う企画展では干支に関係した動物を取り上げることが多くなります。昨年(2017年)も干支展チームメンバー4人で話し合い、戌年にちなんでイヌ科のタヌキとオオカミを取り上げることにしました。

アサギマダラ、オオゴマダラなどチョウの食草となる植物が植栽され、様々なチョウが観察できる昆虫生態園。


園内の動物だけでなく、野生動物にも目を向ける
京王電鉄、都営地下鉄に出した企画展の中吊り広告。

京王電鉄、都営地下鉄に出した企画展の中吊り広告。

タヌキは動物園ではどちらかといえば地味な動物ですが、日本人にとってなじみのある動物で、「タヌキ寝入り」、「タヌキ親父」など普段使われている言葉も多く、文化的な側面からも多様な解説が出来ます。それらをどうやって魅力的に伝えるかチームで検討したとき、週刊誌のスクープ風にしたら読みやすいのではないか、というアイデアが出ました。そこで、週刊誌の紙面を研究し、夜行性のタヌキの活動を紹介する記事に「深夜のおしのびデート」、秋から冬にかけて栄養を蓄える性質を紹介する記事に「激太りの真相は!」など、目を引く見出しをつけ、読みやすい平易な文章でタヌキの魅力を紹介しました。この結果、来園者にも好評で、SNS上でも話題になり、多くの方にタヌキに親しみを持っていただくことができました。
 企画展示の目的は、2つあり、一つは身近な動物に関心を持つ「きっかけづくり」であり、もう一つは園内で展示している動物の観察へつなげることです。このタヌキ展では、二つ目の目的からタヌキの展示舎「タヌキ山」の案内ガイドを配布し、「動物園でのみどころ」をお知らせしました。更に、多摩動物公園の後背の多摩丘陵には多くの野生生物がいます。タヌキも生息しており、身近にタヌキやその生息跡を見ることができるため、「野外でタヌキを見つけるコツ」を紹介するチラシも配布しました。

自然な感じのタヌキ山。柵がなく見やすい展示も多摩動物公園の特徴の一つ。

自然な感じのタヌキ山。柵がなく見やすい展示も多摩動物公園の特徴の一つ。


スタッフが一丸となって開催する開園60周年記念イベント
開園60周年記念事業の一つとして、京王電鉄(株)の協力を得て5月5日に運行したスペシャル電車。社内ではクイズ大会などを実施した。

開園60周年記念事業の一つとして、京王電鉄(株)の協力を得て5月5日に運行したスペシャル電車。社内ではクイズ大会などを実施した。

多摩動物公園は今年(2018年)で、開園60周年となります。60周年記念イベントとして2018年5月から2019年3月まで、月替わりでテーマを決めて行う「月間動物」イベント(表1)などを開催しています。これらの記念事業を進めていくにあたっては、プロジェクトチームを組み、教育普及係だけでなく、普段は動物の飼育や売店運営を行っている他の部署のスタッフもメンバーに加わり、いろいろな視点でイベントを企画しています。
月間動物企画の他にも、6月24日には、ベストセラー『ゾウの時間 ネズミの時間』の著者、本川達雄先生に講演をいただくなど、様々な記念イベントを予定しています。動物園に来園する方はファミリー層も多いため、講演会では子供も楽しく学べる内容にするなど工夫をこらし、今回の本川先生の講演会では午前中の講演を子供向けに、午後の講演を大人向けに内容を変えてお話いただく予定でいます。
動物園という場で誰を対象にどんなねらいの教育活動を展開していったらいいのかを考え、様々なアイデアを出し合いながら業務に取り組んでいます。今後は、タヌキ展のように、来園者と自然をつなげるような教育活動にも積極的に取り組み、動物の面白さだけでなく、自然のなかで過ごす楽しさも多摩動物公園から発信していきたいと考えています。

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2018年6月掲載

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過去記事一覧
第49回 ステキな公園はスタッフの健康から「‘キラリ’健康プロジェクト」(みちのく公園)
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練(静岡県立森林公園)
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる(株式会社日比谷アメニス)
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


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