第49回は、国営みちのく杜の湖畔公園で「‘キラリ’健康プロジェクト」として健康経営の推進に取り組む鈴木幸子さんの「チャレンジ!」をお届けします。
私たち一般財団法人公園財団の経営理念の1つに「人を育て、人を活かし、働く者が活力に溢れ、その家族が幸せに暮らせる組織を目指します。」という言葉があります。しかし、病気やけがをして休業するスタッフも見受けられ、公園緑地等の総合管理を担うフロンティア組織として、お客様へ幸せを提供する前に、スタッフ自身が健康で働いているだろうか、という疑問がありました。総務という仕事柄もあり、仕事を通してスタッフの健康管理をもっとサポートしたいと思い、2022年に産業保健研修を受講しました。
特に「働く人の健康と身体活動」の研修で、30代から50代の働き盛り層で運動不足が顕著であることや、運動不足が心身の健康だけでなく、仕事の生産性の低下にもつながることなど、健康や健康経営※1)について学びました。
はじめに、みちのく公園の管理センタースタッフの身体平衡性機能チェック(閉眼片足立ちテスト)を行い、現状を把握することとしました。下図のとおり、どの世代でも全国平均を下回り、特に40代では21秒とほぼ平均の半分という低い結果となりました。
そこで、1つ目の取り組みとして、バランスボールを導入しました。バランスボールは、椅子の代わりとして使用することで、体幹部を鍛え平衡感覚を養うことができます。体幹部を鍛えると、体の動きがスムーズになり、腰痛予防や内臓の働きがよくなるといった効果があります。
例えば、これまでデスクワークをしていて、別の場所に用事があるときは、イスに座ったまま、イスのキャスターを使って移動しがちでしたが、バランスボールを使うことで、その都度立って移動しなければならなくなり、結果として運動量が増えました。また、仕事の合間にバランスボールを使ってストレッチ運動を行うなど、肩こりや腰痛予防などにも活用しました。
2つ目として、ウォーキングの推進に取り組みました。ウォーキングには、体脂肪の減少による肥満解消や血中の中性脂肪の減少、血圧や血糖値の改善に効果があるといわれています。その他、心肺機能の改善や骨粗鬆症の予防などの効果も見込まれます。
スタッフ全員(職員15名、現場スタッフ29名)に万歩計を配布し、1人1人が毎日どのくらい歩いているのかを確認してもらうことからスタートしました。現場スタッフの中では1日平均約14,000歩を記録する方もいて、月ごとに歩数を集計した結果を掲示すると、自然とスタッフが集まり、集計結果に感嘆の声があがったこともありました。歩数を毎日確認することで、多く歩いた日、少なく歩いた日がわかるようになり「もう少し歩こう」などの意識も芽生え、自己管理ができてきたと思います。地元で採用している地域職員の年度末の面談では、ほとんどの人がウォーキングをやって良かったと回答し、体重が減ったという話しもありました。
また、ウォーキングの機会を創出するため、週2回、園内の早出ウォーキングを推進しました。国営みちのく杜の湖畔公園は、東北唯一の国営公園として、蔵王山麓の裾野、釜房湖畔に位置しています。南東北の主要都市である仙台市、山形市、福島市を20~50km圏内におく、豊かな水と緑に囲まれた公園で、早出ウォーキングには絶好のロケーションです。南地区の花畑では、蔵王連峰をバックに初夏にはポピー、秋にはコスモスが見られます。四季折々に変化する花々や風景は、スタッフだけが知っているお気に入りの場所として、ウォーキングのついでに写真を撮影し、コメントと一緒に園内マップに加えて、情報を共有することにしました。共有された情報は、園内のお客様案内にも活用し、公園の魅力アップに繋がりました。
今回の取り組みによる健康に関する成果は、数字としてはまだ表れていませんが、ウォーキングについては、スタッフが歩数を確認することにより健康管理を意識するようになりました。また、写真を撮ることで“おすすめスポット”の発見や、写真のコメントで情報を共有し、お客様への案内に役立てるなどの効果がありました。
そして、月ごとに、歩数の多いスタッフには「たくさん歩いたで賞」、素敵な写真を撮影した方には「写真賞」、コメントが良かった方には「コメント賞」、加えて、写真の構図や実際に歩いてみないとわからない新しい発見があったものなど、10点満点評価をして、合計点が高かった方に贈る「センター長賞」を設け、表彰しました。取り組みについて評価されることは、スタッフのモチベーションを上げ、取り組みのさらなる推進に繋がりました。
今回の「健康プロジェクト」は、スタッフの健康を考えて始めましたが、途中から、園内の素敵な場所を見つけて写真撮影をしたり、写真にコメントを添えてマップに加え、スタッフ全体で情報共有するなど、取り組みが広がりました。何より、この取り組みをスタッフ全員が行うことで、一人一人が徐々に気持ちを盛り上げていき、チームとして1つにまとまったように思いました。
早出ウォーキングは、南地区エリアを対象としていましたが、他のエリアでの実施を希望する声もあがっているため、エリアの拡大を検討したいと思います。また、園内で見つけた素敵な場所を「スタッフぽけっとガイド」としてまとめ共有したいと思っています。これからもスタッフの健康増進のため、微力ながら精一杯尽力していきます。
※1)「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。(引用:経済産業省HP)
■関連ページ
▼国営みちのく杜の湖畔公園
※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材当時のものです。画像無断転載厳禁。
(2024年6月掲載)
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