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第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練

第37回は、静岡県立森林公園でイノシシなど獣害に対応するための防災訓練を実施している同施設指定管理者 一般社団法人フォレメンテあかまつ事務局長 三輪照光てるみつさんの「チャレンジ!」をお届けします。

一般社団法人フォレメンテあかまつ<br/>事務局長 三輪照光さん
一般社団法人フォレメンテあかまつ
事務局長 三輪照光さん

天然のアカマツ林を主体とした公園
アカマツの疎林が広がる森林公園

アカマツの疎林が広がる森林公園

浜松市浜北区にある静岡県立森林公園(以下、森林公園)は、三方原台地の北側にあり、天竜奥三河国定公園の特別地域に指定された面積約215haの自然公園です。「ビジターセンター“バードピア浜北”」、「木工体験館」、一般の方や学校等が宿泊・研修できる施設「森の家」、「キャンプ場」、イベントのできる「芝生広場」や森林を巡る「散策路」などがありますが、約70%に当たる150haはお客さまの入ることのできない森林区域となっています。森林区域には、ニホンジカやカモシカ、イノシシ、サル、ノウサギなどの多くの動物が生息しており、早朝や夕方などにこれらの動物がお客さまが利用しているエリアまで出てくることもあります。シカ、サル、ウサギなどは特に被害はありませんが、イノシシによる芝生広場や歩道・管理車道脇の掘返しなどの被害が、ほぼ毎日発生しています。

 

 

多くのイノシシは、春に子供を産み、夏にかけて子育てを行い、秋になるとそれらの子供たちが成長し、森林区域外でも姿を見かけるようになります。また、冬に備えてミミズやヘビ、トカゲのほかドングリやキノコなどの餌を求めて大人のイノシシも動きまわるため、毎年11月から3月にかけてイノシシの出没が増えます。森林公園の中だけでなく、周辺地域で人に危害を加えたり、農作物を荒らしたりした時には、地域からの要望や県の取組として、猟友会にイノシシ駆除をお願いすることもあります。イノシシ駆除は、森林公園の中でも行うことができますが、来園者の被害も想定されることから実際は森林公園に隣接する民有林内で有害鳥獣駆除として捕獲狩猟期間(11月1日~3月15日)のみでの対応となっており、なかなか駆除しきれないのが現状となっています。


関係各所と連携して取組むイノシシに対応する防災訓練を
黒い柵が、イノシシが出た時に逃げ込むための シェルターであることを初めて知る来園者もいた

黒い柵が、イノシシが出た時に逃げ込むための シェルターであることを初めて知る来園者もいた

私たち指定管理者(以下、当社)は、公園内でイノシシ出没の情報があると、園内放送で注意喚起を行うなど、来園者に注意を促してきましたが、2016年3月に森林公園内で来園者がイノシシに襲われ、9人が負傷する事件が発生しました。

この事故を受けて、2016年度に公園管理者である静岡県西部農林事務所がスポーツ広場、キャンプ場などの広場を中心に森林公園内6ヶ所にイノシシが襲ってきたときに人間が逃げ込むシェルターを設置しましたが、当社でも園内放送の他にできることはないか考えていました。

 

それから約2年後の2018年2月に浜松市東消防署にお願いし、応急手当や病院に搬送するまでの手順を確認する「負傷者救出合同訓練」を森林公園で開催し、当社職員も参加しました。この訓練にヒントを得て、実際にイノシシが出た時に当社職員が速やかに対応できるような訓練をしたいと考えました。そこで、浜松市消防署、静岡県西部農林事務所、静岡県猟友会西部支部等に協力を仰ぎ、当社主催で「獣害対応防災訓練」を実施することにしました。

2019年に実施した「獣害対応防災訓練」では、「森林公園内の遊歩道を散策中の来園者から、同行者がイノシシに襲われたとビジターセンターに電話連絡が入る。」という想定で、考えられる作業などについて、訓練のシナリオを作りました。時期は、イノシシの活動が活発になりはじめる11月とし、来園者にも参加していただける内容としました(表1)。当日の訓練では、消防署や猟友会などに講師の一部をお願いし、当社の常勤職員のほぼすべての職員と、来園者にも参加を呼びかけ、関係者25人、一般参加者(来園者)6人で実施しました。

 

図1

 

 


実施した訓練での課題を次年度に活かす
登りの斜面においては、 頭部を前進方向になるように方向を変え搬送

登りの斜面においては、 頭部を前進方向になるように方向を変え搬送

2019年の訓練では、あらかじめ役割分担を設定したため、円滑な救助作業、避難誘導作業や、来園者の避難誘導訓練を実際に行うことができました。また、消防署員から止血方法などの応急処置の実技を学ぶこともでき、多くの成果が得られました。さらに、猟友会員から森林公園内にはイノシシが3家族40頭くらいいることや、イノシシから身を守る保身技術を教えていただき、来園者だけでなく、応急対策訓練で講師を務めた消防署員も熱心に聞き入っていました。一方で、止血法は教えてもらったけれど、そのほかの応急処置なども知りたい、実際の勤務体制に合わせた訓練も必要ではないか、という意見が参加者から聞かれました。

 

このため、2020年は、これらの課題を踏まえ、骨折したときの添え木の当て方等、ケガに対処する方法を講習内容に加え、更に少人数でも急斜面を担架で負傷者を運べるよう2~3人で搬送できる担架を購入し、実践することとしました。また、2019年は平日の実施でしたが、2020年は来園者の多い日曜日の開催としました。開催した日曜日は、他の大規模イベントを実施していたため、園内の道路の渋滞により講師である消防署員が講習時間までに到着できず、私が口頭でポイントを説明する、というハプニングもおきました。このように、繁忙日に事故が起きた場合、救急隊員の到着まで時間がかかる可能性があることもわかり、ビジターセンター“バードピア浜北”の職員だけでなく、木工体験館や森の家職員など森林公園の管理運営に関わる施設の職員も実践訓練を積んでおく必要があること、来園者にも適宜手伝っていただけるような声掛け方法なども学ぶ必要があるとわかりました。

そこで、今年(2021年)は職員が少ない状況下でどのように避難誘導及び救出ができるのか、一般来園者に負傷者救出の応援をお願いして救出が円滑にできるのか等を確認する内容を考え、11月中旬に実施の準備をしています。

森林公園という立地から、イノシシが出ることは仕方のないことです。それをあきらめるのではなく、いざというときにきちんと対応できるよう、毎年課題を確認しながら今後も「獣害対応防災訓練」を実施し、安心安全な公園管理運営を実施していきたいと考えています。

 

◆関連ページ

静岡県立森林公園 https://kenritsu-shinrinkouen.jp/

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2021年11月掲載)

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過去記事一覧
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
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第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
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