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第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)

第32回は、学校団体や家族連れで公園を楽しむための仕掛け作りに取り組み、公園公式アプリを提供している国営昭和記念公園の川田衣恵さんの「チャレンジ!」をお届けします。

 

昭和管理センター企画グループ<br/>環境学習チームリーダー 川田衣恵さん
昭和管理センター企画グループ
環境学習チームリーダー 川田衣恵さん

1.学校団体や家族連れが楽しめるプログラムの提供
自然体験学習は少人数で屋外で行うことが多い

自然体験学習は少人数で屋外で行うことが多い

国営昭和記念公園(以下、公園)の管理運営を行っている昭和管理センター(以下、当センター)では、2018年4月からの「子ども料金の無料化」「大人料金の見直し」など国営公園の入園料改定に関する試行に合わせ、子供たちが公園に来るきっかけづくりを積極的に行っています。

 

子供の公園利用は、魅力的な遊具1つで増えますが、公園遊具の増設は、費用面を含め、ハードルがあります。紙を配布したりアプリで配信したりして遊べるコンテンツは、遊具の設置の必要はなく、比較的簡単に提供することができます。そこで、当センターでは、子供たちの来園促進方策としてソフトの提供に力を入れ、家族で公園を楽しむためのプログラムと、校外学習などの学校団体が公園を利用しやすくなるプログラムの2つを実施することにしました。前者は、これまで公園で実施してきたイベントプログラムを強化し、提供していますが、後者については、これまでのプログラムに加え、より手軽にできるものを提供したいと思いました。

 

折しも、2020年から始まった新学習指導要領のポイントの1つとなる情報活用能力・ICTの活用のタイミングと重なり、カシオ計算機株式会社(以下、カシオ)から公園内で使えるアプリの提案がありました。カシオというと計算機のイメージが強いですが、自然体験を紹介するメディア(WILD MIND GO!GO!)の運営も行っており、ゲーム感覚で学べるコンテンツなども提供しています。そのノウハウや技術を活用して、たのしみながら公園を散策したり、学ぶことのできるスマートフォンのアプリを提供できる、とのことでした。また、スタンプラリーなどの紙を配布するコンテンツよりもたくさんの情報を提供でき、一つのアプリで何種類ものゲームを提供できるアプリは長く使ってもらえるのではないかと思いました。

 

更に、総務省のデータによると2019年には世帯におけるスマートフォンの保有割合は8割を超えており、家族向けのサービスとしてもスマートフォンのアプリは良いツールなのではないか、と考えられました。

 


2.幅広い年齢層が使えるアプリに
「コロニャのかくれんぼ」にはジャンプしたり<br/>「ワンワン」言うミッションがあり、それをクリアしないとコロニャたちをゲットできない

「コロニャのかくれんぼ」にはジャンプしたり
「ワンワン」言うミッションがあり、それをクリアしないとコロニャたちをゲットできない

公園の情報やマップだけであれば、スマートフォンから公式ホームページで見ることもできます。アプリでは、これらのベーシックな機能に加え、幅広い年齢層が楽しめるよう複数のコンテンツを入れた公園内で使えるアプリにしました。

 

そこで、就学前の小さな子供から大人まで楽しむことのできるコンテンツを3つ提供することにしました。まず、スマホのアプリがあれば誰でも楽しめるコンテンツとして、公園内に隠れている猫のキャラクター「ころころコロニャ(以下、コロニャ)」をアプリを使って探すゲーム「コロニャのかくれんぼ」、次に文字を読んで考えられる小学校低学年から楽しめるコンテンツの謎解きゲーム「コロニャと公園なぞとき」、3つ目の学習要素が強い「自然発見ビンゴ」は小学生~大人まで楽しめます。この3つのコンテンツで幅広い年齢層の子供に、何度もアプリを楽しんでもらいたい、と考えました。詳細については、表1にまとめた通りです。

 

表1

 

 

どのコンテンツも、実際に自分で試しながら制作しました。「コロニャと公園なぞとき」は、クイズが意外と難しかったり、また、「コロニャのかくれんぼ」は、コロニャたちを探す姿がはたから見るとおかしいと、ほかのスタッフに笑われたりしました。

 

公式アプリ公園情報画面(左)と<br/>コロニャのコンテンツ(右)

公式アプリ公園情報画面(左)と
コロニャのコンテンツ(右)


3.コロナ禍で役割が一変
アプリ看板にはQRコードも付けたため、<br/>来園してからダウンロードするお客様が多い

アプリ看板にはQRコードも付けたため、
来園してからダウンロードするお客様が多い

約1年かけて、2020年4月のリリースを目標に作業を続けてきましたが、いよいよリリース段階の同年3月になって、新型コロナウイルス感染症拡大により、小中学校の休校や感染拡大防止のため様々なイベントが中止になり、さらには4月に出された緊急事態宣言の影響により、公園が閉園となり、アプリのリリースも延期せざるを得なくなりました。

 

緊急事態宣言も解除され、公園も再開園した2020年6月にようやく、公式アプリ「GO!昭和記念公園」としてリリースすることができましたが、当初考えていた「校外学習や家族で遊べる」ツールとしての役割に加え、「非接触型」「3密を避けて広い園内で遊べるツール」という新たな側面での役割も担うことになりました。更に、これまで園内で紙のマップを配布し提供していた、樹木を探すコンテンツ「もくもく探検ゲーム」を2020年11月に追加し、コンテンツの強化を図りました。

リリース直後から、公園の主要ゲートや施設にお知らせ看板を出すほか、利用が多く見込まれる週末ごとに、公園公式SNSで紹介しました。これらの甲斐あって、リリースから6か月でダウンロード数5,500となりました。

特に「もくもく探検ゲーム」は、これまで校外学習の一環として多くの学校団体にご利用頂いていました。コロナ禍で、小学校などでも一人1台タブレット端末の貸し出しがある自治体もあり、今後、タブレットを持った子供たちがアプリを使って植物を覚えたり、理解を深める一助になるのではないかと考えています。

 

「自然発見ビンゴ」では、実際の植物を探し、写真を撮るため、自然と植物を覚えることができる

「自然発見ビンゴ」では、実際の植物を探し、
写真を撮るため、自然と植物を覚えることができる

 

コロナ禍で私たちの生活様式も変わり、公園に求められる機能も変化してきています。これらの変化に対して、新しいサービスなどを導入するだけでなく、発想の転換などを行い、今あるものを上手く生かしてこれからも公園管理運営に携わっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

◆関連ページ

 

国営昭和記念公園HP:https://www.showakinen-koen.jp/

 

アプリの紹介ページ(国営昭和記念公園HP):https://www.showakinen-koen.jp/goshowakinenkoen/

 

アプリの紹介ページ(国営昭和記念公園Twitter):https://twitter.com/showakinenpark/status/1285802486603759617?s=03

 

WILD MIND GO! GO!:https://gogo.wildmind.jp/feed

 

 

※内容、肩書などは、掲載時のものです。(2021年3月掲載)

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過去記事一覧
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
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第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
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