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第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)

第31回は、体験を通して学ぶ環境教育プログラムProject WILD(以下、PW)の講習会をオンラインでアメリカとつなぐ等、様々な工夫を取り入れて実施している一般財団法人公園財団 環境教育推進室長 川原 洋さんの「チャレンジ!」をお届けします。

川原洋室長は、アメリカで年1回開催されるProject WILDコーディネーター会議に<br>日本代表として参加している
川原洋室長は、アメリカで年1回開催されるProject WILDコーディネーター会議に
日本代表として参加している

1.「自然や環境のために行動できる人」を育てる環境教育プログラム
世界地図や写真を使ってグローバルな目線で考えるプログラム

世界地図や写真を使ってグローバルな目線で考えるプログラム

PWは、生きものを通して自然環境に対する理解を深め、責任ある行動をとれる人材を育成するための教育プログラムです。ただ単に答えを教えるのではなく、体験しながら“考える力”を引き出していく「アクティブ・ラーニング」をベースに構築されています。

 

学校授業の中で環境教育を実践するために、1980年よりアメリカ教育省が主体となって開発に取り組み、現在、全米で最も広く活用されている環境教育プログラムの一つです。その魅力ある内容に眼をつけた一般財団法人公園財団(以下、当財団)が1999年に日本に初めて導入し、その普及に取り組んでいます。現在、日本全国の小中学校・高校・大学や専門学校などの授業や幼稚園や保育園、地域の団体が主催する自然体験プログラムなど幅広く活用され、企業における職員研修をはじめとした人材育成プログラムとしても利用されています。

 

PWには、エデュケーター(一般指導者)とファシリテーター(上級指導者)という2種類の指導者資格が設定されています。エデュケーターは、全国各地で開催されている「エデュケーター養成講習会」を受講すると資格を得ることができ、テキストの中にある様々なアイデアを自由に使う権利を得ることできます。例えば一般の方を対象に、PWのプログラムを活用した自然観察会などを実施することができます。経験をつんだエデュケーター(シニアエデュケーター)が、当財団で実施する「ファシリテーター養成講習会」を受講すると、ファシリテーターの資格を取得できます。ファシリテーターになると、エデュケーター養成講習会を自ら講師となって開催できるようになります。2020年3月末現在、全国にファシリテーター約800人、エデュケーター約25,000人が登録されています。

鳥の紙飛行機をはじめ様々な環境教育材料を活用しながら考えを引き出していくアクティブラーニングが主体

鳥の紙飛行機をはじめ様々な環境教育材料を活用しながら考えを引き出していくアクティブラーニングが主体


2.常に情報収集するPW指導者たち
アメリカから講師を呼んだ際には、事前に念入りに話し合い、講習会の準備を行う

アメリカから講師を呼んだ際には、事前に念入りに話し合い、講習会の準備を行う

PW指導者には3年毎に資格更新講習の受講が義務付けられています。日本の指導者が常に新しい情報を得られるように、2010年から年に2回、アメリカ人講師を招いてファシリテーター更新講習を開催しています。また、アイダホ州から専門家を招きクマの講習、オハイオ州政府職員を招きコウモリに特化した講習など、アメリカの進んだ環境教育を取り入れられるよう様々な講習会を実施してきました。また、PW公式ホームページを通してのタイムリーな情報提供、特定の動物に焦点をあてた体験会の開催等、日本全国の指導者に対する様々なサポートを行っています。

 

しかし、2020年初めから蔓延しはじめたコロナウイルスの影響で、アメリカ人講師の日本招聘はもちろんのこと、対面で行う講習についても様々な対策を施す必要が出てきました。当然ながら、ファシリテーター更新講習の開催もこれまで積み上げてきた手法や内容の変更を余儀なくされました。

 

発想の転機となったのは、2020年6月13~14日に開催されたテキサス州政府主催の環境教育指導者フォーラムでした。このフォーラムは、テキサス州の自然環境関係の仕事に従事する方々、自然環境に興味のある方々を対象に、毎年、100名前後の関係者が一堂に会して盛大に開催されていました。しかしコロナの影響で、全ての州政府職員は在宅勤務がマストとなり、通常の開催はできなくなりました。そんな状況下でも中止としないのがアメリカ人ですね。なんとか実施できるように調整した結果、2020年のフォーラムは初のリモート開催となりました。主催者の1人であるテキサス州自然公園局のKiki CORRY氏の推薦のおかげで、私は初めてのリモート開催フォーラムの栄えある基調講演者に抜擢いただきました。基調講演(40分)は、あらかじめ録画した画像を流した後、実際にアメリカとリモートでつないでリアルタイムで質疑応答を行いました。活発な意見交換は約1時間に及び、アメリカのコロナ禍における環境学習の状況等もうかがい知ることができました。

 

この経験によって、オンライン講習に対する抵抗がなくなりました。当初、コロナ蔓延のため、アメリカ人講師を招いて実施する講習会をあきらめていたのですが、時差をうまく調整すればアメリカとオンラインでつないで実施できる!と考えるようになりました。

様々なグッズを準備する講習会

様々なグッズを準備する講習会


3.指導者に多様なコミュニケーションスキルを得てもらいたい
質疑応答では、「Zoomをベースに、様々なソフトを使い、講習会を実施している」、と情報提供をしてもらった

質疑応答では、「Zoomをベースに、様々なソフトを使い、講習会を実施している」、と情報提供をしてもらった

まず、アメリカの指導者たちに連絡をとり、コロナ禍の中で、どのような手法で環境教育を普及しているのか聞いてみたところ、IT先進国のアメリカでは、YouTubeを使った動画配信はもちろんのこと、スマートフォンのアプリケーションを利用したり、オンライン会議システムを活用しての環境教育講習会に取り組んでいることが見えてきました。そこで、今年度のファシリテーター更新講習は、アメリカ人講師とオンラインでつなぐことで、ITを使った新しい講習会のあり方やその実施方法について日本の指導者に伝えていただくことにしました。しかし、環境教育といえば、実際に体験したことをベースに考えを導いていくアクティブ・ラーニングが一般的です。私自身、本物に触れよう!本物から学びを深めることが大切!と言い続けていることもあって、オンラインやITを活用したバーチャルな講習会に対して良いイメージが浮かんできませんでした。しかし、いつものように実施できないわけですし、何事もトライしてみないと見えてこないものがあります。まず自身のC-Zoneから一歩踏み出してみることにしました。

 

まずアメリカと直接つないでオンライン講習が実施可能かどうかについて、時差やシステム(機材)も含めて私の所属する部署(環境教育推進室)内で検討しました。アメリカ人講師を確定させてから、講習内容を練り上げ、ようやく、実施できる目途が立ったのは、開催まで1ヶ月半前の11月上旬でした。そこから大急ぎで広報(参加者募集)を行いました。募集を開始して1週間ほどで12名の定員が満席となりました。

 

迎えた12月12日、13日のファシリテーター資格更新講習は、体調不良やコロナの蔓延状況などが原因して直前にキャンセルが出てしまい最終的に参加者は8名となりました。初日(12日)は、現在改訂中の陸上動物編テキストの進捗状況の報告や新しいアクティビティの体験、そして3名のアメリカ人講師によるレクチャー(録画)を行いました。1人目は全米野生生物協会のProject WILD事務局長であるElena TAKAKI氏より所属協会の紹介とProject WILDの今後の取り組みについて報告いただきました。2人目はオハイオ州魚類野生生物局のJen DENNISON氏よりオンラインで実施するエデュケーター講習についてのノウハウを丁寧に教えていただきました。ZOOMを活用した講習会の実施方法、オリジナルクイズを共有できるスマートフォンアプリの活用方法など、日本でも応用できそうな事例をいくつも紹介いただきました。最後に、オンライン講習開催のきっかけを作ってくれたテキサス州自然公園局のKiki CORRY氏に、コロナ禍の中での環境教育の現状とその取り組みについて、貴重なお話を聞くことができました。

 

翌日(13日)には、前日のレクチャーを受けて、アメリカの指導者3人に質疑応答を行う時間を設けました。質疑応答はアメリカ国内でも時差(オハイオ州とワシントンD.C.の間には約2時間)があるため、個別に時間調整が必要となりました。そして、単に意見交換をするだけでなく、アメリカの指導者に向けて歓迎のダンスを披露したり、全員がお面を被って挨拶したり、オンラインで講習を実施したときに場を盛り上げる演出方法を試験体得する場にもなりました。

オンラインでの講習でも場を盛り上げるために、みんなでお面をつけて挨拶

オンラインでの講習でも場を盛り上げるために、みんなでお面をつけて挨拶


4.これからはじまる指導者のチャレンジ
リアルな動物のぬいぐるみなど、<br>オンラインでもグッズは活躍する

リアルな動物のぬいぐるみなど、
オンラインでもグッズは活躍する

私が講師を務める専門学校においても、昨年末からオンライン授業がスタートしています。オンライン授業は、どうしても受動的な学習になりがちですが、JenやKikiが紹介してくれたノウハウを取り入れ、本物の動物骨格や昆虫標本をはじめリアルな環境教育グッズを活用しながら授業を展開すると、能動的に生徒たちを動かすことが可能となることが少しずつ見えてきました。

 

新型コロナウイルスの影響はまだまだ続くと思われます。引き続き、これまでの「形式(当たり前)」にとらわれることなく、様々なアイデアを駆使して体験会や講習会を開催していきたいと思っています。今回のファシリテーター資格更新講習会では、3名のアメリカ人講師がオンラインで参加しましたが、今後はファシリテーターのオンライン参加や、生き物の楽しさを伝える環境教育体験会をオンラインで開催すれば、今まで参加しにくかった遠方の方をはじめとした新規顧客の開拓にもつながります。

 

今後はオンラインの指導者養成講習会、バーチャル自然体験会などに積極的にチャレンジし、そこで得られた知識やノウハウを、全国の環境教育指導者に共有することで、新しい普及の波を起こしていきたいと考えています。

 

 

◆関連ページ プロジェクトWILD HP:https://www.projectwild.jp/

※内容、肩書などは、掲載時のものです。(2021年3月掲載)

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過去記事一覧
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


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