第28回目は、子供たちに何度も足を運んでもらいたいと、ゲーム感覚で植物を学ぶことができるオリジナルプログラム「アロア・ワッド探検隊」の企画を展開している、小田原フラワーガーデン(神奈川県小田原市)の「チャレンジ!」をお届けします。
嶋大樹さん(右)と田代園長(左)
小田原フラワーガーデン(以下、フラワーガーデン)は、ウメ、バラ、ハナショウブをはじめ、ゴミ焼却施設の余熱を利用した温室「トロピカルドーム温室(以下、トロピカルドーム)」に約300種の熱帯・亜熱帯植物が植栽され、四季折々に季節の花を楽しむことができる植物公園です。小田原フラワーガーデンパートナーズは、2011年4月から指定管理者としてフラワーガーデンを管理運営しています。
2011年に指定管理を始めた当初、課題となっていた、子供の来園者を増やす方策の一つとして、子供たちが興味を持って何度もフラワーガーデンに来たくなるコンテンツ「アロア・ワッド探検隊」を企画しました。謎の植物学者アロア・ワッドからの植物に関する様々な指令(ミッション)が出題されるというストーリーのもと、トロピカルドーム内を探検しながら問題を解く、セルフガイド式の体験プログラムです。入園者は探検隊員としてミッションに挑戦し、五感を使いながら植物を学ぶことができます。探検隊員には「探検隊員証(以下、隊員証)」が発行され、ミッションをクリアすることでスタンプを1つゲットできます。スタンプを集めていくと、隊員証がレベルアップし、アロア・ワッドの助手である「正隊員」になることができる仕組みにしました。
「アロア・ワッド探検隊」では、トロピカルドーム入口にある管理棟1F受付のスタッフに声をかけて、隊員証とミッションカードをもらい、始めます。ミッションをクリアできればスタッフが隊員証にスタンプを1個押し、5個スタンプがたまると次のレベルの隊員証がもらえます。隊員証のレベルはビギナークラス、アドバンスクラス、マスタークラスの3段階で、全てのレベルで5個ずつスタンプが集まると「正隊員」として任命され、オリジナルの記念品がもらえます。
ミッションはいつでも挑戦できるものを常設ミッションとして約12種類準備しています。内容は、ミッションカードに載っている写真と同じ花や葉っぱなどを探す簡単なものから、樹名板の解説を頼りにミッションカードに書かれた問題を解くものなど、難易度にバリエーションを持たせています。
スタンプを集め、だんだんレベルが上がっていくという達成感が項を奏し、2017年度には未就学児~小学生の入園者数が企画実施前の3.5倍となり、フラワーガーデン人気の企画となりました。今年で8年目になりますが、途切れることなくミッションに挑む子供が現れ、2020年8月末現在、ビギナー隊員14,765名、アドバンス隊員962名、マスター隊員389名、正隊員215名です。
最初は常設のみだったミッションも、年を経るごとに、ヒスイカズラの開花時期にしか挑戦できない「ヒスイカズラミッション」や、夜間開園時に見られる植物に因んだ「トワイライトミッション」など、フラワーガーデンの人気の植物の開花やイベントと連動させたミッションも用意するようになりました。
「アロア・ワッド探検隊員」は、正隊員になったら終わりではありません。正隊員になると、植物のレポート作成という新たなミッションに取り組むことができます。レポート作成時には貸し出しのカメラを使い、隊員それぞれで気になった植物の写真を撮影します。写真は専用の用紙に貼り付け植物のおすすめポイントや説明文を記入して提出してもらいます。完成したレポートは、トロピカルドーム入り口の立て看板に一定期間掲示され、看板を見た来園者にドームの見所などを伝えます。観察の視点なども隊員によって様々でスタッフから見ても興味深いものがたくさんあります。レポートを見て、「アロア・ワッド探検隊員」に参加する来園者もいます。
また、植物に関する知識を高めることも正隊員の活動の一つであり、毎年夏にアロア・ワッドのお土産であるフルーツを試食するイベントに参加してもらっています。試食前に、クイズなどを交えながらフルーツや熱帯植物について学び、2014年~2017年はドリアンを、2018年は日本のトロピカルフルーツを、2019年はアテモヤを試食し、五感を通じて体験・学習してもらいました。2020年は残念ながら、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、試食会の実施は見合わせましたが、正隊員は日々、楽しいレポートを作成してくれています。普段は、スタッフから情報を発信することが多いため、こうした活動を通じて来園者の目線、特に子供たちの関心事を知ることができるのは、私たちスタッフにとっても良い機会となっています。
今後も、子供たちが植物に興味を持って取り組めるミッションを出して行き、多くの子供たちにフラワーガーデンで植物の知識を深めてもらえるようこの取り組みを続けて行きます。
第50回 公園散策を楽しめるセルフガイドマップ(新宿中央公園)
第49回 ステキな公園はスタッフの健康から「‘キラリ’健康プロジェクト」(国営みちのく杜の湖畔公園)
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(千葉県船橋市)
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練(静岡県立森林公園)
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる(株式会社日比谷アメニス)
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(東京都足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(諫早市こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)