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公園管理運営チャレンジしました
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)

第25回目は、個々の公園の性格や特色の違いを明確にした公園整備を行い、だれもがお気に入りの公園を見つけられるように公園を変えていく「足立区パークイノベーション推進計画」を実施する足立区の「チャレンジ!」をお届けします

足立区都市建設部みどりと公園推進室<br/> パークイノベーション担当課長 志田野 隆史さん
足立区都市建設部みどりと公園推進室
パークイノベーション担当課長 志田野 隆史さん

老朽化、ニーズの変化によって改修が必要な公園
区民からの要望もあり、公園のシンボルとなる遊具は補修しながら使い続けていくことに(舎人いきいき公園)

区民からの要望もあり、公園のシンボルとなる遊具は補修しながら使い続けていくことに(舎人いきいき公園)

足立区には、公園・児童遊園が490か所(2020年4月現在)ありますが、似たような公園も多くあり、中にはあまり利用されていない公園もありました。また、少子化の進展と高齢社会の到来、生活スタイルの多様化などの社会の変化を背景に、公園では、ボール遊びをはじめとする様々な課題と、健康づくり、地域コミュニティの場など新しい時代のニーズが見られるようになったことから、改修が必要な公園・児童遊園が多くあります。

 

そのような状況を受け、足立区では、2011年(平成23年)6月に「あだち公園★いきいきプラン(以下、いきいきプラン)」を策定し、区民といっしょに公園をもっと楽しく魅力的なものとしていくため、これからの区の公園づくりのあるべき姿を定めました。2013年からは公園の配置状況が異なる3つのモデル地域において、地域の皆様や学識経験者といっしょになって「地域懇談会」を立ち上げ、それぞれの地域に合った公園の展開方針を検討してきました。モデル地域の一つである舎人駅周辺地域では、2013年からの公園の改修に並行して、2014年から2017年にかけて町会やまちづくり関係者など、公園利用者との地域懇談会で公園に対する意見を聞き、周辺の公園同士で役割分担をした特色のある公園整備を進めることや、公園トイレなどの公園施設の配置計画を作成し、区民の求める公園へと改修を行ってきました。

それらのモデル地域の検証結果を踏まえ、2018年4月に「足立区パークイノベーション推進計(以下、パークイノベーション計画)」を策定しました。


パークイノベーション推進計画
昭和の空き地をイメージし、「にぎわい公園」として改修した舎人十号公園

昭和の空き地をイメージし、「にぎわい公園」として改修した舎人十号公園

年齢層や目的によって利用したい公園が様々ある中、身近な区の小さな公園にたくさんの機能を詰め込みすぎると、公園を安全にご利用していただくことはできません。公園のスペースには限りがあるため、一つの公園ですべてのニーズにお応えするのは困難という課題に直面しました。

パークイノベーション推進計画では、大きさの異なる3つのエリアを設定しています。最も大きいのが自転車を利用していくことのできる範囲を設定した「お出かけエリア」、次が一般の方が歩いて行ける「お散歩エリア」、一番小さい「ご近所エリア」はお年寄りや小さい子供が歩いて行ける範囲で、近接する2~3公園を1つのグループとして設定したエリアです。このエリア設定の中で最も身近な「ご近所エリア」の中で子供が活発に遊んだり大人がスポーツ等をする「にぎわいの公園」と、乳幼児がゆっくり遊べ、みんながベンチでのんびり過ごせる「やすらぎの公園」の二つの役割を偏りの無いように配置していくことにしています。さらに「お散歩エリア」には、5~7つ程度の公園があり、それぞれの公園において「にぎわい」「やすらぎ」に応じた個々の公園の特色を明確にした整備(例えば、「児童の遊び」「健康づくり」「樹林・自然・散策」など8つに分類)を行っています。つまり、「お散歩エリア」の中に異なる特色を持つ公園が複数配置されていることにより、子供からお年寄りまで、だれもが自分が望む過ごし方によって公園を選択できるような魅力ある公園づくりを進めていくことにしました。

 

 

3つのエリアのイメージ図

3つのエリアのイメージ図


できる遊びを明示した看板を設置
イラストを入れたボール遊びルール看板

イラストを入れたボール遊びルール看板

公園を目的に合わせて整備するだけでなく、利用者にも公園のルールを伝えていくために、公園での禁止事項を列挙するだけではなく、「できるボール遊び」を具体的に表示した看板を設置しました。特に子供たちにも分かりやすいように、「ドリブルやトス」「キャッチボールはゴムボールまで」等の「できる遊び」をイラストで掲出しています。

 

足立区では、ボール遊びができる場所として、「野球場」「多目的広場」の他に「ボール遊びコーナー」があり、区民から人気が高い施設となっています。ボール遊びをしない人や周辺に住む区民からは、「ボールが飛んできて危ない」「ボールの音がうるさい」等の意見がある一方、最近では、「子供たちを公園でボール遊びをさせてあげることができないか」との声を多くいただくようになりました。そこで、足立区では、約20m×30mの広さで、約3~4mのフェンスで囲われている「ボール遊びコーナー」を、区内17分割した「お出かけエリア」に1エリアにつき一か所以上整備する取組みを始めました。また、昨年度、舎人町公園(足立区舎人六丁目)では、地域の皆様のご理解をいただき、フェンスの無い公園広場においても「軟式の野球ボールまで」できる地域ルールを作成するなど、区民と意見を交換しながら柔軟な対応を行っています。

2020年1月にボール遊びができる公園をMAPにまとめ、足立区のHPで公開した

2020年1月にボール遊びができる公園をMAPにまとめ、足立区のHPで公開した


区民からの意見を聞きながらの改修
好きな遊具ランキングでは6位だったが、遊んでみたい遊具で1位となり、総合で1位となった迷路

好きな遊具ランキングでは6位だったが、遊んでみたい遊具で1位となり、総合で1位となった迷路

舎人地区での地域懇談会に限らず、足立区では様々な形で区民の意見を聞く方法をとっています。2017年に実施した、足立区にある公園の遊具の人気投票「あだちの公園遊具総選挙」もその一つです。「あだちの公園遊具総選挙」では、2017年10月から12月にかけて、区民から好きな遊具と今後遊んでみたい遊具を46種類の中から投票してもらい、集計し、得票数の多かった遊具を「人気遊具」として公表しました。この結果、職員が予想していなかった「迷路」遊具が一位になりました。

その際、区民から「あの遊具で遊んでみたいけど、どこにあるか分からない。」という声も聞かれたため、総選挙の結果公表に合わせて、投票対象とした遊具の場所を足立区のホームページに掲載しました。

これまでの「区が考えた公園を使ってください」というやり方から、今後は、「区民の皆様からの意見を聞いて公園を整備する」方法に変え、双方向のやり取りをしながら、足立区全体でパークイノベーション計画を進め、より良い公園整備を行い、魅力ある地域の公園づくりをしていきます。

 

 

◆関連ページ

足立区ホームページ魅力ある地域の公園づくり ~パークイノベーション~ とは?https://www.city.adachi.tokyo.jp/midori/pi.html

 

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材時のものです。(2020年6月掲載)

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過去記事一覧
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
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