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第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)

第43回目は、大池公園(愛知県東海市)で、市民と共に手入れや多種類のさくらの植栽を行い、シンボル的な景観を演出し、市民が誇れる大池公園のさくらを次世代に引き継いでいこうというプロジェクトに取り組んでいる、東海市役所 都市建設部 花と緑の推進課主事の小島 太一こじま たいちさんの「チャレンジ!」をお届けします。

東海市役所 都市建設部 花と緑の推進課<br/>小島 太一さん
東海市役所 都市建設部 花と緑の推進課
小島 太一さん

大池公園について
大池公園(2022年4月)

大池公園(2022年4月)

市のほぼ中央に位置する大池公園は、臨海部の産業ゾーンと内陸部の居住ゾーンを分離する緩衝緑地の一部として、1973年(昭和48年)に開園しました。大池公園は、その名前の通り、中央に大きな池(農業用ため池の大田大池)を有する都市公園で、池の周りには、自然あふれる散策路や野球場、テニスコート、小さな動物園に多目的広場など、多種多様な施設が整備されています。また、園内には、ソメイヨシノを始め8種類、約700本ものさくらが植えられており、東海市民の身近なさくらとして長年愛され続け、今年で50周年を迎えます。

毎年春に行っている「桜まつり」では、オープニングセレモニーからステージイベント、市文化協会合同発表会、模擬店、花と種苗の販売等子どもから大人まで楽しめるイベントや「光と音の夜桜カラフルライトアップ」も行われており、毎年多くのお客様にお越しいただき、賑わいをみせています。

 


危機的状況!「さくら」が枯れてきた?!
枯木化した大池公園の桜(2019年9月)

枯木化した大池公園の桜(2019年9月)

東海市を代表する大池公園のさくらは、10年ほど前から枯れ枝の増加や花の数の減少等、老木化による衰えが目立つようになり、このままでは次世代にさくらを残せないかもしれない危機的な状況に陥っています。

そこで私たちは、次世代にさくらを引継ぎ、大池公園をこの先も楽しんでいただけるように、「市民の手で、愛着をもってもらいながら、さくらの手入れを行い、樹勢を回復させる」、「新たにエリアごとにテーマを設定し、開花時期が異なる多種類のさくらの植栽を行い、シンボル的な景観を演出する」などの活動を行う、「大池公園さくら再生プロジェクト」を2019年(令和元年)にスタートました。


大池公園さくら再生プロジェクトのスタート!!
令和3年度第1回ワークショップ<br/>樹木診断(2021年10月)

令和3年度第1回ワークショップ
樹木診断(2021年10月)

本プロジェクトのこれまでの活動内容は、まず2019年(令和元年)に公園全域のさくらの現況調査を実施しました。調査の結果、約700本の内、約8割は健全と診断されたものの、樹木医からは「周辺の樹木との競合や、土壌の固結、腐朽菌の浸食などにより、生育環境が急速に悪化していることから、このまま手入れしないで放置すると20年後にはさくらが全部なくなってしまうことも懸念される」とアドバイスをいただき、当初から危惧していた次世代に残すための活動の必要性が明らかとなりました。

 

2020年(令和2年)には、大池公園のさくらに関する「市民アンケート」や「ワークショップ」を実施し、それらを基に「大池公園さくら再生基本計画」を策定し、「樹勢回復」、「植え替え」、「魅力アップ」の3つを基本方針としました。

 

2021年(令和3年)は、基本計画に基づき、樹木医の指導のもと、さくらについて学び、樹勢回復作業を体験するワークショップイベントを4回開催し、市民参加による、「樹木診断」、「支障木の伐採」、「剪定」、「施肥」、「樹名板及びさくら巡りマップの設置」などの作業を行いました。

 

当初、本プロジェクトのメンバーは、私たち市職員が主体でしたが、2022年(令和4年)から市広報などでボランティアの募集を始めたところ、市内だけでなく、市外からもボランティアメンバーが集まり、現在約20名のメンバーによって、さくら再生に向けての第一歩である「樹勢回復」を行っています。

 

 

大池公園の桜の診断結果(2019年9~10月)

大池公園の桜の診断結果(2019年9~10月)

 

大池公園さくら再生基本計画の3つの基本方針

大池公園さくら再生基本計画の3つの基本方針

 

 


安全を最優先!一歩ずつ、少しずつ前へ
令和4年度第1回ワークショップ<br/>剪定作業(2022年11月)

令和4年度第1回ワークショップ
剪定作業(2022年11月)

私たちの活動の大前提は、「楽しく、怪我なく、無理せず」を皆の共通認識として重要視しています。私たち市職員やボランティアのメンバーはもちろんのこと、公園利用者への安全の配慮は欠かせません。

 

現在はさくら自体の剪定ではなく、雑木に埋もれているさくらの日当りを改善させる作業や施肥を行っている状態です。作業は園路のそばで行うことが多いため、ボランティア参加者及び歩行者の安全を最優先に作業を行うことを徹底しており、作業箇所には、活動のPRと作業の周知を兼ねて、さくら再生ボランティアの「のぼり」を設置しています。

 

ボランティアの参加者の中には、初心者や高齢の方など、様々な方がいるため、どなたでも参加しやすいように、各自がバラバラに作業するのではなく、作業前には全員で集合し、作業前の状況確認と作業の目的を伝え、同じ方向を向いて作業ができるよう意識しています。ボランティア活動が始まってからはまだ日が浅いため、毎回集合した際に点呼も兼ねて自己紹介を行っていただき、同じ活動をする仲間としての一体感を感じてもらうことも意識しています。

 

 

ボランティア活動の様子(2023年2月)

ボランティア活動の様子(2023年2月)


本プロジェクトが始まってから、はや4年…。さくら再生の兆しはまだまだこれからですが、今後もボランティア参加者を募集し、樹勢回復作業を行いながら、樹勢回復が難しい樹木については、見どころ作りの視点を考え、植え替えも実施していく予定です。

今後の展開としては、ボランティア参加者が知識や技術を学べる場として、枝の剪定や樹木診断を学べる講習会などを行いたいと考えています。

これからボランティア参加者が増え、本プロジェクトで身に付けた知識や技術を大池公園だけでなく、市内の公園や緑地など市民の身近にあるさくらの整備に活かすことができれば、東海市全体の地域活性に繋げていくことができると期待しています。

大池公園の南側の堤防から見た池越しと水面に浮かぶさくらは大池公園を代表する風景です。また、3月下旬から開催する「桜まつり」では、東海市のふるさと大使で、イルミネーションデザイナーの芦木浩隆氏が手掛ける「光と音の夜桜カラフルライトアップ」を実施し、他では見ることができない壮大で鮮やかな演出を楽しむことができますので、皆さんもぜひ遊びにいらしてください。

大池公園さくら再生プロジェクトメンバー

大池公園さくら再生プロジェクトメンバー

 

池越しの桜(2018年3月)、右:光と音の夜桜カラフルライトアップ(2021年3月)

大池公園の桜 ベストショット!
池越しの桜(2018年3月)、右:光と音の夜桜カラフルライトアップ(2021年3月)

 

 

■関連ページ

大池公園

http://www.city.tokai.aichi.jp/3645.htm

大池公園さくら再生プロジェクト

http://www.city.tokai.aichi.jp/21697.htm

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2023年3月掲載)

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過去記事一覧
第48回 中学生の提案から始まった、ボール遊びができる公園の整理(船橋市)
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


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